ベンザルコニウム塩化物(BAC)は、第4級アンモニウム化合物に分類される陽イオン界面活性剤であり、消毒・殺菌作用を持つ化合物である。 医療、衛生、食品、工業用途など幅広く使用される。
1. 化学的性質
- 化学式:C₆H₅CH₂N(CH₃)₂RCl(Rはアルキル鎖、一般にC₈~C₁₈)
- 分子量:可変(アルキル鎖の長さによる)
- 外観:無色~淡黄色の液体または白色固体
- 溶解性:水、アルコールに可溶
- pH:弱アルカリ性
2. 作用機序(殺菌・消毒メカニズム)
ベンザルコニウム塩化物は、第4級アンモニウム塩として、細菌やウイルスの細胞膜に作用し、膜構造を破壊することで殺菌効果を示す。
① 細胞膜への作用
- 陽イオン(+)を持つベンザルコニウム塩化物は、細菌やウイルスの陰イオン(-)を帯びた細胞膜やエンベロープと相互作用する。
- 膜のリン脂質やタンパク質と結合し、透過性を変化させる。
- 結果として細胞内容物が漏出し、微生物が死滅する。
② タンパク質の変性
- 細胞膜の破壊に加えて、細胞内の酵素やDNA・RNAとも相互作用し、代謝や増殖を阻害する。
- これにより細菌・真菌の増殖が抑制される。
3. 抗菌スペクトル
ベンザルコニウム塩化物は細菌・ウイルス・真菌に有効だが、芽胞や一部のウイルスには効果が限定的である。
✅ 効果がある微生物
- グラム陽性菌(ブドウ球菌、レンサ球菌 など)
- グラム陰性菌(大腸菌、緑膿菌 など)
- 真菌(カンジダ など)
- エンベロープウイルス(インフルエンザ、SARS-CoV-2 など)
⚠ 効果が限定的または低いもの
- 非エンベロープウイルス(ノロウイルス、アデノウイルス など)
- 芽胞形成菌
4. 用途・応用
ベンザルコニウム塩化物は、医療、衛生、食品、工業などの分野で使用される。
① 医療分野(消毒薬)
- 手指消毒剤
- 創傷・皮膚の消毒
- 粘膜の消毒(うがい薬、眼科洗浄液)
- 医療機器・器具の消毒
② 日用品・衛生用品
- 除菌シート、ウェットティッシュ
- 抗菌ハンドソープ・ボディソープ
- コンタクトレンズ洗浄液
5. 使用上の注意点・副作用
① 残留性と皮膚刺激
- アルコールや次亜塩素酸ナトリウムと比較すると、洗浄後に残留しやすい。
- 皮膚のバリア機能を損なう可能性があるため、頻回使用には注意が必要。
② アレルギー・過敏反応
- 長期間の使用により、皮膚炎や接触アレルギーを引き起こすことがある。
- 特に眼や粘膜に使用する際には低濃度にする必要がある。
6. ベンザルコニウム塩化物と他の消毒薬の比較
| 消毒薬 | 抗菌スペクトル | 皮膚刺激性 | 使用用途 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| ベンザルコニウム塩化物 | 細菌・ウイルス・真菌 | 低い | 手指・皮膚・粘膜消毒 | ノロウイルス・芽胞菌には効果が低い |
| エタノール(アルコール) | 細菌・ウイルス | 高い(乾燥作用) | 手指・環境消毒 | 粘膜不可、速乾性あり |
| 次亜塩素酸ナトリウム | 細菌・ウイルス・芽胞 | 高い(腐食性) | 環境・器具消毒 | 有機物に影響されやすい |
| ポビドンヨード | 細菌・ウイルス・真菌 | 低い | 皮膚・手術・口腔消毒 | 甲状腺への影響あり |




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