ヒヨスチアミンは、トロパンアルカロイドに分類される天然化合物で、主にナス科(Solanaceae)の植物に含まれます。化学的および薬理的にはアトロピンの一部であり、アトロピンはヒヨスチアミンのラセミ体(右旋性と左旋性の混合体)です。ヒヨスチアミンは右旋性異性体で、アトロピンよりも強い薬理作用を示します。
1. 化学構造と特性
- 化学式:
- 構造:
- トロパン骨格にエステル基(トロパン酸とトロパノールから構成)を持つ。
- アトロピンとほぼ同じ構造で、光学異性体にあたる。
- 物理特性:
- 白色または無色の結晶性粉末。
- 水に溶けにくいが、アルコールやエタノールに可溶。
2. 含有植物
ヒヨスチアミンは以下のナス科植物に豊富に含まれます。
- ヒヨス (Hyoscyamus niger)(英名: Henbane)
- チョウセンアサガオ (Datura stramonium)(英名: Jimsonweed)
- ベラドンナ (Atropa belladonna)(英名: Deadly Nightshade)
3. 主な作用
ヒヨスチアミンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体の拮抗薬として作用し、副交感神経を遮断します。その結果、以下の作用を引き起こします。
- 消化管への作用:
- 平滑筋を弛緩させ、消化管の痙攣や運動を抑制。
- 過剰な胃酸分泌を抑え、消化性潰瘍の治療に有効。
- 瞳孔散大:
- 瞳孔を拡張させる(散瞳作用)。眼科で診断目的に使用される。
- 分泌抑制:
- 唾液、汗、気道分泌物の抑制。
- 心血管系への作用:
- 心拍数を増加させる(心臓の迷走神経活動を抑制)。
- 中枢神経作用:
- 鎮静効果や酔い止め作用(スコポラミンほどではない)。
4. 副作用
ヒヨスチアミンの使用に伴う副作用には以下があります。
一般的な副作用:
- 口渇
- 便秘
- 排尿困難
- 視覚障害(散瞳によるぼやけ)
重度の副作用:
- 頭痛、めまい
- 動悸
- 中枢神経の混乱や興奮
- 大量投与による幻覚やせん妄
5. 注意点
- 禁忌:
- 緑内障、前立腺肥大症、重度の心疾患の患者には使用を避ける。
- 過量投与のリスク:
- ヒヨスチアミンは毒性があるため、過剰摂取は中毒症状を引き起こし、致命的になる可能性がある。
- 解毒剤としてフィゾスチグミンが用いられる。




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