シトクロムP450(CYP)は、薬物や内因性物質の代謝を担う酸化酵素群であり、特に肝臓の薬物代謝において重要な役割を果たしている。CYPはヘムタンパク質の一種であり、酸素とNADPHを利用して基質を酸化する酸化還元酵素である。
1. シトクロムP450の主な働き
1.1. 薬物代謝
CYPは薬物代謝の第一相反応(酸化・還元)に関与し、親油性の化合物をより極性の高い形に変換することで、腎臓や胆汁を介した排泄を促進する。
1.2. 内因性物質の代謝
CYPは、薬物だけでなくホルモン、脂質、胆汁酸、ビタミンDなどの代謝にも関与している。
2. シトクロムP450の分布
CYPは主に肝臓の小胞体(滑面小胞体)に存在するが、腸、肺、腎臓、脳などにも発現している。
| 臓器 | 役割 |
|---|---|
| 肝臓 | 薬物・毒物の代謝(主要なCYP発現部位) |
| 小腸 | 経口摂取した薬物の代謝(初回通過効果) |
| 肺 | 吸入薬や環境毒素の代謝 |
| 腎臓 | 薬物の排泄調節 |
| 脳 | 神経伝達物質の代謝 |
3. 主なシトクロムP450アイソザイム
シトクロムP450は、多くのアイソザイム(異なる酵素の種類)に分類され、それぞれ異なる薬物や基質の代謝を担う。
| アイソザイム | 基質となる薬物 | 特徴 |
|---|---|---|
| CYP1A2 | カフェイン、テオフィリン | 喫煙により誘導される |
| CYP2C9 | ワルファリン、フェニトイン | 代謝酵素の個人差が大きい |
| CYP2C19 | オメプラゾール、クロピドグレル | 日本人の約20%が低活性型 |
| CYP2D6 | コデイン、抗精神病薬 | 遺伝的多型が多い |
| CYP3A4 | シクロスポリン、カルシウム拮抗薬 | 肝臓・腸管に多く、最も発現量が多い |
4. シトクロムP450の誘導と阻害
4.1. CYPの誘導
CYPを誘導する薬物や食品は、CYPの発現量を増加させ、代謝を促進する。その結果、基質薬物の血中濃度が低下し、効果が減弱する。
- 主なCYP誘導薬
- CYP3A4:リファンピシン、フェノバルビタール、セントジョーンズワート
- CYP1A2:喫煙、炭火焼き肉
- CYP2E1:アルコール
4.2. CYPの阻害
CYPを阻害する薬物は、代謝を遅延させることで基質薬物の血中濃度を上昇させ、副作用のリスクが増大する。
- 主なCYP阻害薬
- CYP3A4:エリスロマイシン、ケトコナゾール、グレープフルーツジュース
- CYP2D6:キニジン、パロキセチン
- CYP2C9:フルコナゾール
- CYP1A2:フルボキサミン




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