1 胃がん
【概念】
胃がんは、胃の粘膜上皮に発生する悪性腫瘍で、腺がんの発生が多い。
Helicobacter pylori(H. pylori)感染により慢性胃炎や萎縮性胃炎を引き起こし、それが胃がんの発がん母地となることが知られている。
特に胃の幽門部や胃体部の粘膜が腸上皮化生をきたすと、がん化しやすいとされている。
【分類】
病理学的には、がんの深達度により分類される。
粘膜または粘膜下層までにとどまるもの:早期胃がん
筋層以深まで進展するもの:進行胃がん
また、肉眼的な分類法としては、ボルマン分類が用いられる。
【検査】
胃がんの診断には以下の検査が行われる
・X線検査
・内視鏡検査(胃カメラ)
・組織生検
・腫瘍マーカー測定(CEA、CA19-9など)
2 食道がん
【概念】
食道がんは、食道の粘膜上皮から発生する悪性腫瘍であり、その多くは扁平上皮がんに分類される。特に、胸部中部食道に好発することが知られている。
発症には、喫煙、飲酒、熱い飲食物の摂取といった慢性的な物理的・化学的刺激が関与する。特に、喫煙と飲酒の併用は相乗的にリスクを高めることが明らかとなっている。
初期には自覚症状に乏しいが、進行とともに嚥下困難、胸痛、嗄声(声のかすれ)などの症状が現れる。嗄声は、腫瘍が反回神経に浸潤・圧迫することで生じるものであり、局所進行の兆候となる。
【検査】
内視鏡検査(食道鏡)
病変部を直接観察し、組織生検によって確定診断を行う。
X線造影検査(バリウム検査)
食道の狭窄や不整像を把握する目的で行われる。内視鏡と併用することで精度が高まる。
腫瘍マーカー検査
SCC(扁平上皮がん関連抗原:Squamous Cell Carcinoma Antigen)は、扁平上皮がんに特異性を示し、治療効果や再発モニタリングに用いられる。
CT、MRI、超音波内視鏡(EUS)など
病変の深達度、リンパ節転移、遠隔転移の有無を評価するために行う。
3 肝臓がん
【概念】
肝臓がんは、肝臓そのものに発生する原発性肝がんと、他臓器から転移してきた転移性肝がんに大別される。
原発性肝がんの大半を占める肝細胞がんは、その発生に肝炎ウイルスの持続感染が深く関与しており、とりわけC型肝炎ウイルス(HCV)感染者では約60%に発症がみられる。
一方、B型肝炎ウイルス(HBV)感染者でも、約15%で慢性炎症から肝細胞がんへ進行するとされている。
【検査】
肝細胞がんの検査では、血液検査においてAST>ALTというパターンの肝機能異常がみられることがある。
腫瘍マーカーとしては以下の2つが代表的である
PIVKA-II(Protein Induced by Vitamin K Absence or Antagonist-II)
ビタミンK欠乏状態で産生される異常プロトロンビンであり、肝細胞がん特異的に上昇する。
AFP(α-フェトプロテイン)
胎児期に肝臓や卵黄嚢で産生されるタンパク質で、成人での上昇は肝がんを強く示唆する。
また、血液検査に加えて、腹部超音波検査やCTスキャンなどの画像診断が、病変の同定と病期評価に用いられる。
【治療】
治療法の選択は、腫瘍の大きさ、数、血管浸潤の有無、肝機能(Child-Pugh分類)などをもとに決定される。
代表的な治療法には以下がある。

4 膵臓がん
【概念】
膵臓がんは、膵管上皮細胞あるいは膵実質細胞に由来する悪性腫瘍であり、その大部分は膵管がん(膵管腺がん)である。がんの発生部位によって症状は異なり、膵頭部に発生した場合には総胆管を圧迫することで閉塞性黄疸を呈しやすい。
一方、膵体部や膵尾部に発生した場合には、インスリン分泌障害による二次性糖尿病を引き起こすことがある。
【検査】
膵臓がんの診断には、腹部超音波検査やCTスキャンなどの画像診断が用いられる。
加えて、腫瘍マーカーとしては、CA19-9やSpan-1の上昇が認められることがある。
これらのマーカーは早期診断には感度が低いが、治療効果や再発のモニタリングに有用である。
【治療】
膵臓がんの治療は、外科手術、放射線療法、化学療法が中心であり、切除可能か否かが治療方針を左右する。
【予後】
膵臓がんは、早期発見が困難であり、発見時点での遠隔転移や局所進行の割合が高く、根治切除が困難なことが多い。そのため、予後は極めて不良であり、5年生存率は全体で10%未満と報告されている。
5 胆のうがん
【概念】
胆のうがんは、胆のうまたは胆管に発生する悪性腫瘍であり、60〜70歳代に多く、男女比では女性にやや多いとされる。その大部分は腺がんである。
胆のうがん患者において胆石症の合併率は50〜70%と高く、胆石による慢性的な胆のう粘膜への刺激や炎症、さらに胆石に含まれる胆汁酸や胆色素などの成分が発がんに関与していると考えられている。
また、これ以外の危険因子としては、肥満、胆のうがんの家族歴、胆のう炎の既往、脂肪分の多い食事などが挙げられる。さらに、胆道奇形(先天性胆道拡張症)や膵・胆管合流異常の存在も、胆管がんのリスクを高める要因となる。
早期の段階では自覚症状に乏しいため発見が難しい。進行例では胆管への浸潤により閉塞性黄疸が出現し、体重減少や腹痛を伴うこともある。
【検査】
診断には以下の画像診断法が用いられる
・腹部超音波検査
・造影CT
・MRI
これらは腫瘍の大きさや胆道への浸潤、転移の有無などの評価に有用である。
また、CEA(癌胎児性抗原)やCA19-9などの腫瘍マーカーが進行例で上昇することがある。ただし、早期例では感度が低く、補助的指標にとどまる。
【治療】
胆のうがんの根治的治療の基本は外科的切除である。
ただし、多くの症例は進行してから発見されるため、切除不能例が多数を占めるのが現状である。
転移例や切除不能例では、化学療法、放射線療法が行われる。
ただし、根治を期待できるケースは少なく、症状緩和や延命を目的とした治療となる。
標準的な化学療法としては、以下の併用療法が用いられる
ゲムシタビン+シスプラチン併用療法
近年では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の臨床応用も進められている。
6 胆管がん
【概念】
胆管がんは、胆管の上皮に発生する悪性腫瘍であり、その発生部位に応じて以下の2つに大別される。

組織型としては、腺がんが最多であり、胆管上皮由来の腺管様構造を形成する。
危険因子としては、以下の疾患・状態が挙げられる。
- 膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症などの先天性疾患
- 原発性硬化性胆管炎(PSC)といった慢性胆道炎症
- 印刷業などで使用されるジクロロメタンや1,2-ジクロロプロパンなどの有機溶剤への長期かつ高濃度の職業性曝露
これらは、胆管上皮に対する慢性的な刺激・炎症を惹起し、発がんに寄与するとされている。
進行例では、胆管の閉塞に伴い、閉塞性黄疸(皮膚や眼球結膜の黄染)や褐色尿、掻痒感(皮膚のかゆみ)が出現する。
【検査】
診断には以下の画像検査が有用である。
・腹部超音波検査
・造影CT
・MRI
これらにより、腫瘍の部位・大きさ・周囲血管への浸潤・転移の有無などを把握できる。
腫瘍マーカーとしては、以下が用いられる
・CA19-9(糖鎖抗原)
・CEA(癌胎児性抗原)
ただし、いずれも感度・特異度には限界があり、診断の補助として用いられるにすぎない。
また、胆汁うっ滞に伴い、以下の胆道系酵素が血中で上昇する
・ALP(アルカリホスファターゼ)
・γ-GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)
【治療】
根治が期待される唯一の治療法は外科的切除である。
ただし、発見時にはすでに局所進行または遠隔転移を認める例が多く、切除可能な症例は限られている。そのため、手術不能例や再発例に対しては化学療法や放射線療法が選択される。
標準的な化学療法としては、以下の併用レジメンが推奨される
・ゲムシタビン+シスプラチン併用療法
・テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)
高度黄疸例では、手術や全身療法の前に胆道ドレナージが必要となる。
これにより、胆汁の排出を確保し、肝機能の改善を図ることで、その後の治療導入を可能にする。








コメント