SARS-CoV(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus)**は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となるウイルスで、コロナウイルス科(Coronaviridae)ベータコロナウイルス属に属する一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。2002年に中国南部で初めて報告され、世界的に流行した。SARS-CoVはヒトを含む多くの哺乳類に感染し、特に呼吸器系に深刻な影響を与えることで知られている。
特徴
- ウイルスの構造
- RNAゲノム: SARS-CoVの遺伝情報は約30kbの一本鎖プラス鎖RNAで構成される。
- エンベロープ: 脂質膜(エンベロープ)に覆われており、その表面に突起したスパイクタンパク質(Sタンパク質)が存在する。
- 感染機構: スパイクタンパク質がヒト細胞表面のACE2受容体に結合することで感染を引き起こす。
- 感染源と宿主
- 動物由来ウイルス: SARS-CoVは、コウモリを自然宿主とし、ハクビシンなどの中間宿主を介してヒトに感染したと考えられている。
- 分類
- SARS-CoVは、ベータコロナウイルスの中でもB系統(Sarbecovirus)に属します。
感染経路
SARS-CoVは、主に以下の経路で感染します:
- 飛沫感染: 感染者の咳やくしゃみから放出される飛沫を吸い込むことで感染。
- 接触感染: ウイルスが付着した物体(ドアノブなど)を触った手で口や鼻を触ることで感染。
- エアロゾル感染: 小さな飛沫粒子が空気中を漂い感染する場合もある。
症状
SARS-CoVに感染した場合、以下のような症状が見られます。潜伏期間は2~10日程度です。
- 初期症状
- 発熱(38℃以上)
- 倦怠感
- 筋肉痛
- 頭痛
- 喉の痛み
- 進行症状
- 咳(乾性)
- 呼吸困難
- 胸痛
- 重症化
- 肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
- 臓器不全(特に高齢者や基礎疾患のある人でリスクが高い)
感染者のうち、約10%が致命的な経過をたどるとされています。
診断と治療
- 診断
- PCR検査:ウイルスRNAの検出。
- 抗体検査:過去の感染を調べるために使用。
- 治療
- 現在、SARS-CoVに特化した治療薬はない。
- 症状に応じた対症療法が行われる(酸素療法、人工呼吸器など)。
予防方法
- 感染者との接触を避ける。
- 手洗いの徹底。
- マスクの着用。
- SARS-CoVはエンベロープを持つため、アルコール消毒が有効。
SARS-CoVとCOVID-19との関係
SARS-CoVと新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は同じベータコロナウイルス属に属し、遺伝子配列の約80%が一致します。しかし、SARS-CoVは感染性や流行の規模が新型コロナウイルスと異なる。COVID-19はSARSに比べて感染力が高い一方、致死率は低いとされている。
まとめ
SARS-CoVは、2002年~2003年に世界的な流行を引き起こした危険なウイルスである。感染の主な原因は動物由来であり、パンデミックを引き起こす可能性のあるコロナウイルスの1つとして警戒されている。




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