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MERS-CoV(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)

MERS-CoV(Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus)は、中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすコロナウイルスで、コロナウイルス科(Coronaviridae)ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)に属する一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。

特徴

  1. ウイルスの構造
    • RNAゲノム: MERS-CoVの遺伝情報は一本鎖プラス鎖RNAで構成されている。
    • エンベロープ: 脂質膜(エンベロープ)に覆われ、その表面に突起したスパイクタンパク質(Sタンパク質)を有する。
    • 感染メカニズム: スパイクタンパク質がヒト細胞表面の受容体に結合し、細胞内に侵入する。
  2. 宿主
    • 自然宿主: コウモリ。
    • 中間宿主: ヒトコブラクダが主要な中間宿主として知られています。
    • ヒトへの感染: ヒトは主にヒトコブラクダとの接触や、感染したヒトとの濃厚接触を通じて感染する。
  3. 分類
    • MERS-CoVは、ベータコロナウイルスのC系統(Merbecovirus)に分類される。

感染経路

MERS-CoVは以下の経路で感染する:

  • 動物からヒトへの感染: ヒトコブラクダとの密接な接触。
  • ヒトからヒトへの感染: 飛沫感染や接触感染が主な経路。
    特に医療機関での感染(院内感染)が多い。

症状

潜伏期間は2~14日で、感染後に以下の症状が現れます。

  1. 初期症状
    • 発熱
    • 咳、喉の痛み
    • 筋肉痛、倦怠感
  2. 進行症状
    • 呼吸困難
    • 重症肺炎
  3. 重症化
    • 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
    • 腎不全、敗血症
    • 臓器不全(特に免疫力が低下している人や高齢者で重症化リスクが高い)
  4. 致死率
    • 致死率は約35%と非常に高く、特に基礎疾患を持つ人でリスクが増加する。

診断と治療

  1. 診断
    • PCR検査:ウイルスRNAを検出するための標準的な方法。
    • 血清学的検査:過去の感染を調べるために使用。
  2. 治療
    • 現在、MERS-CoVに特化した抗ウイルス薬やワクチンは存在しない。
    • 主に対症療法が行われます(酸素療法、人工呼吸器など)。

予防方法

  1. 動物との接触を避ける
    • 特にヒトコブラクダと直接触れ合わないようにする。
    • 加熱処理されていないラクダ乳や未調理の肉を避ける。
  2. 感染予防策
    • 手洗いやアルコール消毒の徹底。
    • 咳エチケットの遵守。
    • 医療機関では感染防護具(PPE)の適切な使用。
  3. 旅行者への注意
    • 中東地域への渡航者は、感染リスクを考慮した行動が推奨される。

    MERS-CoVとCOVID-19の比較

    • 両者は同じベータコロナウイルス属に属しますが、感染力や致死率が異なる。
      • MERS-CoVは致死率が高い(約35%)ものの感染力は低い。
      • 一方、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)は感染力が非常に高いが、致死率は低い傾向にある。

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