GLUT4(グルコース輸送体4, Glucose Transporter Type 4)は、糖輸送体ファミリー(GLUTファミリー)に属するタンパク質の一種で、細胞膜を介してグルコースを細胞内に取り込む役割を有する。特に、インスリン応答性のグルコース輸送に関与しており、エネルギー代謝の調節において重要な働きを担う。
1. 基本情報
- タンパク質名: グルコース輸送体4(GLUT4)
- 発現部位: 主に以下の組織や細胞で発現
- 骨格筋: 筋肉細胞でエネルギー供給に必須
- 脂肪組織: 脂肪細胞で脂肪合成に寄与
- 心筋: 心臓のエネルギー代謝に重要
2. 構造と特徴
- GLUT4は、細胞膜を膜貫通タンパク質で、細胞膜内外のグルコース輸送を可能にする。
- グルコース輸送は受動輸送(濃度勾配に基づく拡散)により行われる。
- 通常、GLUT4は細胞内の小胞に保持されており、刺激があると細胞膜に移動する。
3. インスリンとの関係
GLUT4は、インスリン依存性のグルコース輸送体であり、以下のように作用する
3.1 インスリン刺激による膜輸送
- インスリン分泌: 食事後、血糖値の上昇によって膵臓のβ細胞からインスリンが分泌される。
- 受容体の活性化: 細胞表面のインスリン受容体がインスリンを認識し、シグナル伝達経路を活性化する。
- GLUT4の細胞膜移行: シグナル伝達経路(PI3キナーゼ/AKT経路)を介して、GLUT4を含む小胞が細胞膜へ移動し融合する。
- グルコース輸送: GLUT4が細胞膜に組み込まれ、血液中のグルコースが細胞内に取り込まれる。
3.2 役割
- 血糖値の低下: GLUT4を介したグルコース取り込みにより、血糖値が下がる。
- エネルギー供給: 細胞内に取り込まれたグルコースは、解糖系やクエン酸回路でエネルギー(ATP)として利用される。
- グリコーゲン合成や脂肪蓄積: 肝臓や脂肪細胞では、余剰のグルコースがグリコーゲンや脂肪に変換される。
4. 調節と異常
4.1 運動による活性化
- インスリン以外にも、運動はGLUT4の膜移行を促進する。運動時に活性化されるAMPK(AMP依存性プロテインキナーゼ)がこの過程を媒介する。
4.2 GLUT4異常の影響
GLUT4の機能低下や異常は、インスリン抵抗性や糖尿病の発症に関与する。
- 2型糖尿病: インスリン応答性の低下により、GLUT4の膜移行が抑制され、血糖値が正常に下がらない。
- 肥満: GLUT4活性が低下すると脂肪細胞でのグルコース取り込みが減少し、代謝異常が進行。
5. まとめ
GLUT4は、インスリン依存的なグルコース輸送を担う重要なタンパク質で、血糖値調節やエネルギー代謝において中心的な役割を果たす。その機能や調節異常は、糖尿病や肥満などの代謝性疾患と密接に関連しており、健康維持や治療の分野で注目されている。
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