日別アーカイブ: 2019年6月16日

第104回薬剤師国家試験 問264〜267

58歳男性。糖尿病の診断を受け近医で薬物療法を継続していたが、定期的に受診せず、アドヒアランスも良好ではなかった。今回、吐き気、食欲不振、呼吸困難を訴え受診したところ、重症の尿毒症のため入院となった。血液検査の結果は以下のとおりであった。

検査値:体表面積未補正 eGFR14.6 mL/min、HbA1c 7.7%(NGSP値)、ALT14 IU/L、AST22 IU/L

お薬手帳を確認したところ、以下の薬剤が処方されていた。尿毒症の治療を開始するとともに、退院に向けて本剤を中止し、代替薬を検討することになった。


問264 (薬剤)
カンファレンスにおいて薬剤師は、体表面積未補正eGFRが異なる2つの群に対し、メトホルミン塩酸塩錠500 mgを経口単回投与した時の腎クリアランス及び 血中濃度時間曲線下面積(AUC)をまとめた表を示した。表に基づいた説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。ただし、いずれの群も、メトホルミンのバイオアベイラビリティは60%とし、血漿タンパク結合は無視できるものとする。

1 メトホルミンは、主に糸球体ろ過によって腎臓から排泄されます。
2 この患者におけるメトホルミンの全身クリアランスは、約170 mL/min と予想されます。
3 この患者におけるメトホルミンの尿中排泄率は、腎機能正常者の約1/3と予想されます。
4 処方どおりに服用し続けた場合、この患者におけるメトホルミンの平均血中濃度は腎機能正常者の約3倍になると予想されます。
5 この患者が処方どおりに服用し続けた場合、メトホルミンの平均血中濃度は約10 µg/mL と予想されます。

 

 

 

 

 

 


動画解説


解説
1 誤
問題文に「血漿タンパク結合は無視できるものとする」と記載されていることから、メトホルミンのろ過クリアランスは、体表面積未補正eGFRと等しいと考えることができる。メトホルミンのろ過クリアランスと腎クリアランスを比較すると、メトホルミンの腎クリアランスがろ過クリアランスより数倍大きいため、メトホルミンは主に分泌によって腎臓から排泄されると考えられる。

<参考:ろ過クリアランスと腎臓クリアランスから予測できること>
ろ過クリアランス<腎クリアランスの場合:尿細管分泌により排泄される薬物
ろ過クリアランス>腎クリアランスの場合:腎臓で再吸収される薬物

2 正

3 誤
この患者におけるメトホルミンの尿中排泄率は、腎機能正常者の約91%と予想される。

上記の結果より、この患者におけるメトホルミンの尿中排泄率は、腎機能正常者の約91%と予想される。

4 正
繰り返し投与における平均血中濃度は以下の式より求めることができる。

上記の式より平均血中濃度はAUCと比例するといえる。
腎機能正常群に比べ、腎機能低下群ではAUCが3倍であることから、この患者におけるメトホルミンの平均血中濃度は腎機能正常者の約3倍になると予想される。

5 誤
この患者が処方どおりに服用し続けた場合、メトホルミンの平均血中濃度は約2.5 µg/mLと予想される。
腎機能低下群のAUCが1800 mg・min/L、投与間隔τ=12 hr(1日2回)であることから、この患者における平均血中濃度を以下のように求めることができる。


解答
2、4


問265 (薬理)
この患者がメトホルミンを処方どおりに服用し続けた場合、起こり得る副作用とその機序の組合せとして、正しいのはどれか。1つ選べ。

 

 

 

 

 

 

 


解説
メトホルミンは、ビグアナイド系薬であり、AMP活性化キナーゼの活性化により肝臓での糖新生の抑制や末梢での糖の利用を促進することで血糖降下作用を示す。また、メトホルミンは重大な副作用として乳酸アシドーシスを起こすとの報告がある。


解答
5


問266 (実務)
代替薬を提案するにあたり、医薬品インタビューフォームから得られた情報を参考に、薬剤師は候補薬のリストを作成した。リストの内容に基づいて提案する薬剤として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 ピオグリタゾン錠
2 ナテグリニド錠
3 グリメピリド錠
4 シタグリプチン錠
5 リナグリプチン錠

 

 

 

 

 


解説
本患者は体表面積未補正eGFR が14.6 mL/minとかなり腎機能が低下していると考えられるため、尿中より未変化体や活性代謝物が排泄される薬物の使用を避けることが望ましい。このことから、本患者には、主に糞中排泄されるリナグリプチン錠を提案することが適切である。


解答
5


問267 (実務)
前問で選んだ薬剤について、薬剤師が患者に行う説明として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 尿に糖を出す薬です。
2 消化管からの糖の吸収を抑える薬です。
3 インスリンの分解を抑える薬です。
4 肝臓で糖ができるのを抑える薬です。
5 血糖値に応じてインスリンの分泌を促進する薬です。


解説
リナグリプチンは、インクレチンの分解の関わるDPP−4(ジペプチジルペプチダーゼ−4)を阻害することにより、血糖値に応じてインスリン分泌を促進する。

<他の選択肢の説明について>
選択肢1:SGLT−2阻害剤(イプラグリフロジンなど)が処方されたときの説明
選択肢2:α−グルコシダーゼ阻害薬(アカルボースなど)が処方されたときの説明
選択肢4:ビグアナイド系薬(メトホルミンなど)が処方されたときの説明


解答
5

第104回薬剤師国家試験 問117

図1は一般的なグラム染色の手順①〜④とそれによるA菌及びB菌の染色結果を示している。また、図2は別の2種類の菌のグラム染色の結果である。グラム染色及びその結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 グラム染色に用いる試薬は、①がルゴール液、②がクリスタルバイオレット溶液、③がエタノール、④がサフラニン溶液である。
2 ④では、A菌は濃いピンク色に、B菌は青紫色に染色される。
3 A菌はグラム陽性菌であり、B菌はグラム陰性菌である。
4 黄色ブドウ球菌のグラム染色の結果は、図2のアのようになる。
5 芽胞を形成している菌をグラム染色すると、図2のイのように内部の一部が染色されにくいことがある。

 

 

 

 


動画解説


解説

1 誤
上記の図よりグラム染色に用いる試薬は、①がクリスタルバイオレット溶液、②がルゴール液(ヨウ素−ヨウ化カリウム液)、③がエタノール、④がサフラニン溶液(又はフクシン溶液)である。
2 誤
④では、A菌は青紫色に、B菌は濃いピンク色に染色される。
3 正
4 誤
黄色ブドウ球菌はグラム陽性球菌であるため、形は「球形」、グラム染色の結果は「青紫色(この図では濃い灰色)」となる 。
5 正
芽胞とは、一部の細菌が増殖に適さない環境になった時に形成する耐久性の高い細胞構造のことである。芽胞形成部分は、染色されにくいため、芽胞を形成している菌をグラム染色すると、図2のイのように内部の一部が染色されにくいことがある。


解答
3、5

第104回薬剤師国家試験 問51

せん断応力の増加に伴い、みかけ粘度が増大するのはどれか。1つ選べ。

1 ビンガム流動
2 準塑性流動
3 ダイラタント流動
4 準粘性流動
5 ニュートン流動

 

 

 

 


解説
せん断応力に増加に伴い、みかけの粘度が増大するのは、「ダイラタント流動」である。

1 誤
ビンガム流動は、降伏値より小さいせん断応力では流動せず、降伏値より大きいせん断応力により流動する。ビンガム流動では、降伏値以上においてせん断応力を増加させても、流動率は変化しない(粘度は変化しない)。
2 誤
準塑性流動は、降伏値より小さいせん断応力では流動せず、降伏値より大きいせん断応力により流動する。準塑性流動では、降伏値以上においてせん断応力を増加させると、流動率は増加する(粘度は低下する)。
3 正
4 誤
準塑性流動では、せん断応力を増加させると、流動率は増加する(粘度は低下する)。
5 誤
ニュートン流動では、せん断応力を増加させても、流動率は変化しない(粘度は変化しない)。


解答
3

第104回薬剤師国家試験 問50

点眼剤の保存剤として利用される陽イオン性界面活性剤はどれか。1つ選べ。

1 ラウリル硫酸ナトリウム
2 レシチン
3 タウロコール酸
4 ベンザルコニウム塩化物
5 ラウロマクロゴール

 

 

 

 

 


解説
点眼剤の保存剤として利用される陽イオン性界面活性剤は、「ベンザルコニウム塩化物」である。
ラウリル硫酸ナトリウム:陰イオン性界面活性剤
レシチン:両性界面活性剤
タウロコール酸:胆汁酸
ラウロマクロゴール:非イオン性界面活性剤


解答
4

第104回薬剤師国家試験 問95

メタン(CH4)の燃焼反応の標準燃焼エンタルピー(kJ/mol)の値として正しいのはどれか。1つ選べ。ただし、CH4(気体)、CO2 (気体)、H2O (液体)の標準生成エンタルピー(ΔfH 0)は次のとおりである。

1 -998.0
2 -890.3
3 -754.1
4 -604.5
5 -468.3

 

 

 

 


動画解説


解説


解答
2

第104回薬剤師国家試験 問49

日本薬局方に基づき、溶液の濃度を(1→10)で表したときの意味として正しいのはどれか。1つ選べ。

1 固形の薬品1 gを溶媒10 mLに溶かす。
2 液状の薬品1 gを溶媒10 mLに溶かす。
3 固形の薬品1 gを溶媒に溶かして全量を10 gにする。
4 液状の薬品1 gを溶媒に溶かして全量を10 gにする。
5 固形の薬品1 gを溶媒に溶かして全量を10 mL にする。

 

 

 

 

 


解説
日本薬局方に基づき、「溶液の濃度を(1→10)」と表した場合は、「固形の薬品1 gを溶媒に溶かして全量を10 mL にする。」ことを表している。


解答
5

新規経口抗凝固薬(NOAC)のまとめ

NOACとは

NOACとは、(new)Novel Oral AntiCoagulants(新規経口抗凝固薬)又はnon−vitamin K antagonist oral anticoagulants(非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬)のことである。
また、最近ではDOAC(direct oral anticoagulants:直接経口抗凝固薬)とも言われる。

現在(2019年6月)では、プラザキサ(ダビガトラン エテキシラート)、リクシアナ(エドキサバン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、エリキュース(アピキサバン)がNOAC(DOAC)に該当し、ワルファリンに代わり経口抗凝固薬として用いられている。


ワルファリンの作用機序

ワルファリンは、ビタミンKに拮抗し、肝臓におけるビタミンK 依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第VII、第IX、及び第X因子)の生合成を抑制して抗凝固効果及び抗血栓効果を発揮する。

ワルファリンは、肝臓でのビタミンK代謝サイクルにおけるビタミンKキノンレダクターゼ及びビタミンKエポキシドレダクターゼの活性を非可逆的に阻害し、ビタミンK依存性凝固因子前駆体のカルボキシル化を阻害することにより抗凝固作用を示す。


NOACの作用機序

ダビガトランエテキシラートは、エステラーゼによりダビガトランとなり、トロンビンを直接阻害し、血液凝固抑制作用を示す。また、抗トロンビン作用により血小板凝集抑制作用も示す。

エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンは、活性化血液凝固第X因子(ファクターXa:FXa)を競合的かつ選択的に阻害することにより抗凝血作用を示す。

下田武

本剤のような抗凝血薬の作用を把握するためには、凝固系カスケード(下図)を把握しておく必要があります。

内因系:血液の異物面と接触することにより凝固が始まる。 必要な因子が全て血液内にある。
外因系:血液が血管外に漏出し、組織因子と混じると凝固が始まる。必要な因子が血液外にある。


ワルファリン、NOACの適応症、服用回数

下田武

深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び再発抑制に対して、アピキサバン、リバーロキサバンを用いる場合、初期の投与量を通常の2倍量とするため、出血のリスクに十分注意することとされています。

下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制に対して、エドキサバンを用いる場合、原則として、術後入院中に使用することとされています。


ワルファリン、NOACの用量設定について

ワルファリン
PT−INRにより投与量を調節する

アピキサバン
年齢、体重、腎機能、併用薬に応じて投与量を調節する

エドキサバン
体重、腎機能、併用薬に応じて投与量を調節する

リバーロキサバン
腎機能、併用薬に応じて投与量を調節する

ダビガトラン
年齢、腎機能、併用薬、消化管出血の既往歴に応じて投与量を調節する

下田武

ワルファリンについては、効果をモニタリングできる指標であるPT−INR(プロトロンビン時間国際比)があるため、PT−INRより投与量を設定することができますが、アピキサバン、エドキサバン、リバーロキサバン、ダビガトランについては、効果をモニタリングする指標がないため、腎機能や体重、併用薬より投与量を設定することとされています。


ワルファリンとNOACの相互作用

・ワルファリン
多くの薬物、食品と相互作用が認められている。

・エドキサバン、ダビガトラン
血小板凝集抑制薬、抗凝固薬、血栓溶解剤
P糖タンパク質阻害剤と相互作用が認められている。

・アピキサバン、リバーロキサバン
血小板凝集抑制薬、抗凝固薬、血栓溶解剤
P糖タンパク質阻害剤、CYP誘導剤、阻害剤と相互作用が認められている。

下田武

ワルファリンは、他の直接経口抗凝血薬に比べ相互作用を起こしやすいとされています。また、クロレラ含有食品やビタミンK含有食品とも相互作用を起こすことがあるため注意が必要です。相互作用を起こす可能性のある薬物については、おおまかに上記の表にまとめておきましたので、これらの内容を把握した上で、相互作用の有無について判断するようにしましょう。相互作用を起こす薬物の詳細については添付文書を確認するようにしましょう。


手術前の休薬期間について

・ワルファリン
3〜5日
・ダビガトランエテキシラート
24時間(大手術の場合:2日以上)
・アピキサバン
低リスク:24時間
中〜高リスク:48時間
・エドキサバン
24時間
・リバーロキサバン
24時間


ワルファリンからNOACへの切り替え

ワルファリンからNOACに切り替える際には、出血および血栓形成の危険性がないようにワルファリンの作用を考慮した上で、NOACの投与開始時期を決定する。
一般にPT−INRが2.0未満になった時点でワルファリンからNOACへの切り替えを行う。