日別アーカイブ: 2019年5月13日

4 偏光と旋光性

平面偏光

光はあらゆる方向に周期的に振動している電磁波である。偏光板に単色光を通すと、特定方向に振動面を有する透過光のみを取り出すことができる。この透過光は光の伝播方向と同一平面上にあるので、その光を平面偏光という。


円偏光

円偏光には、右円偏光と左円偏光がある。右円偏光とは、光の進行方向から光源を眺めて時計回りの光であり、左円偏光とは、光の進行方向から光源を眺めて反時計回りの光のことである。
例えば、右円偏光では、時間とともに1→2→3→4の順に偏光面が変化していく。

平面偏光は、下記のように右円偏光と左円偏光のベクトルの和で表される。


旋光

平面偏光の偏光面が物質と相互作用を起こすことにより右あるいは左に回転することがあるこの現象を旋光という。旋光を示す物質の性質を旋光性または光学活性という。原則、キラル炭素を有する物質が旋光性や光学活性を示すが、それ以外の物質で旋光性、光学活性を示す物質(アレン誘導体、ビフェニル誘導体)も存在する。また、キラル炭素を有していても旋光を起こさない物質(ラセミ体、メソ体)も存在する。


比旋光度

平面偏光が光学活性物質を透過する際の旋光度(α)は、溶液の濃度(c)、透過距離(l)に比例する。また、濃度(g /mL)及び透過距離l(mm)当たりの旋光度を比旋光度として下記のように表すことができる。

[ ]の20は測定温度が20度であることを示しており、Dは測定に用いた光源がナトリウムスペクトルD線であることを示している。
例えば、医薬品各条の旋光度の項目に、[ ]=-30.0°〜-36.0°(乾燥後、1 g、水20 mL、100 mm)と規定されている場合は、その医薬品を乾燥し、その約1 gを精密に量り、水に溶かして正確に20 mLとし、この液につき、20℃、層長100 mmで旋光度を測定するとき、[ ]の範囲が -30.0°〜-36.0°であることを示している。


旋光分散

光学活性物質は、波長に関わらず旋光性を示し、波長により旋光度は変化する。この現象を旋光分散といい、波長に対する旋光度をプロットして得られる曲線を旋光分散曲線(ORD曲線)という。

<単純曲線>

<異常分散曲線>


円二色性(CD)

平面偏光が光学活性物質を通過する際、その吸収波長領域における左右円偏光のモル吸光係数に差が認められることがある。この現象を円偏光二色性または円二色性(CD)という。
媒質中での左右円偏光の速度(屈折率)が異なることに加え、モル吸光係数が異なれば、左右円偏光の透過光の合成ベクトルの軌跡は軸の傾いた楕円(楕円偏光)となる。


円二色性曲線(CDスペクトル)は、タンパク質の二次構造、核酸の立体構造、金属錯体の構造、有機化合物の立体配置などを決定するのに有用とされている。


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3 スピンと磁気共鳴

核スピン、電子スピン

原子、分子中の電子や核は電荷を帯びた粒子であり、自動運動(核スピン、電子スピン)によって磁気を帯びている(磁気モーメントが生じている)。外部磁場がないときスピンによって生じる磁気モーメントは無秩序な方向を向いているが、外部磁場を加えると核および電子は一定方向にスピンするようになる。
外部磁場によりスピンの方向を一定にすることを利用して物質を分析する方法に、NMR(核磁気共鳴スペクトル法)とESR(電子スピン共鳴法)がある。

1)NMR(核磁気共鳴スペクトル法)
 核スピンを利用して、物質を分析する方法にNMR(核磁気共鳴スペクトル法)がある。核磁気共鳴スペクトルでは、核スピンを有する核種(下表)を観測することができるが、核スピンがない核種(核スピン量子数I=0:12C、16O)については、観測することができない。

2)ESR(電子スピン共鳴法)
 電子スピンを利用して、物質を分析する方法にESR(電子スピン共鳴法)がある。ESRでは不対電子をもつ原子・分子を観測することができる。


核磁気共鳴スペクトル法の原理

NMR(核磁気共鳴スペクトル法)は、静磁場に置かれた物質の構成原子核がその核に特有の周波数のラジオ波に共鳴して低エネルギーの核スピン状態から高エネルギーの核スピン状態に遷移することを利用したスペクトル測定法である。

1)ゼーマン分裂
核スピン量子数Iをもつ原子核に外部磁場を加えると(2I+1)個のエネルギー準位に分裂する。この現象をゼーマン分裂という。
例)核スピン(I)が1/2となる原子核に外部磁場を加える場合
外部磁場と磁気モーメントの相互作用によりエネルギー準位が(2×1/2+1=2)2つに分裂する。

核スピン(I)が1/2の原子核に外部磁場をかけると、磁気モーメントが外部磁場と同じ方向をもつものと反対の方向をもつものが現れる。磁気モーメントが外部磁場と同じ方向の場合は、低エネルギー状態となり、磁気モーメントが外部磁場と反対の方向の場合は、高エネルギー状態となる。

2)核磁気共鳴
核スピン(I)が1/2となる原子核に外部磁場を加えると、外部磁場と磁気モーメントの相互作用によりエネルギー準位が2つに分裂する。そこにラジオ波を照射すると、磁気モーメントが外部磁場と同じ方向をもつもの(低エネルギー状態)が磁気モーメントが外部磁場と反対の方向をもつもの(高エネルギー状態)に遷移する。この現象を核磁気共鳴という。


磁気共鳴画像(MRI)法

MRIは、生体内の水、脂肪の分布や存在状態を三次元的に画像化する方法であり、その測定原理は1H−NMRと基本的には同じである。

1)測定の流れと測定原理
① 外部磁場をかける。
 人体の各細胞に含まれる水素原子核(プロトン)に磁場をかけると、プロトンは、一定方向の歳差運動を行う。
② ラジオ波を(ラーモア周波数と同じ)照射する
プロトンがラジオ波のエネルギーを吸収し、励起状態となる。
③ ラジオ波の照射を中断する
励起状態にあったプロトンが基底状態へと戻る。この基底状態に戻るまでの時間を緩和時間といい、MRIは、緩和時間の長短を白黒のコントラストで表し画像化する。

2T1強調画像法、T2強調画像法
 シグナル強度だけでは、病床を判断することは難しいため、画像のコントラストをつけるために縦緩和時間T1の差を利用したT1強調画像法、横緩和時間T2の差を利用したT2強調画像法が利用されることがある。
T1強調画像法、T2強調画像法を利用することにより、MRIにより得られる画像の白黒がしっかり現れ病巣をより正確に確認することができる。

3)MRIの特徴
 MRIはエネルギーの低い電磁波であるラジオ波を用いるので、X線CTやPETのように放射線による被曝はない。また、骨などの影響をうけず画像化することができるので骨に囲まれた組織の断層撮影法として優れている。


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