日別アーカイブ: 2019年5月7日

軌道の混成

軌道の混成

分子を形成する結合について考える際、単純な原子軌道を用いて説明できないことが多い。こうした問題を解決する目的で、軌道の混成という概念が導入された。軌道の混成を考えるにあたっては、エネルギー準位の異なる複数の原子軌道を混ぜ合わせて、同じエネルギー準位の軌道を形成する混成モデルを用いる。

1)sp混成軌道
例)ベリリウム水素化物(BeH2
ベリリウム水素化物は、下記のような直線構造をしている。

ベリリウムは2s軌道に2個の電子を有しており、不対電子を有していない。上記のように2つの結合を形成するためには、不対電子を持つ原子軌道を2つ用意する必要がある。
そこで下記のように、2s軌道の電子を1つp軌道に移行させてみる。

上記のように2s軌道の電子を1つp軌道に移行させてみると、不対電子を持つ原子軌道を2つ準備することができ、ベリリウムは2つの結合を形成できるようになる。このとき、s軌道とp軌道を混ぜ合わせた同じエネルギー準位の軌道であるsp混成軌道が形成される。
形成されたsp混成軌道は、互いに反対方向を向いていることから、ベリリウムと2つの水素間で形成されるσ結合の角度は180°になる(直線構造となる。)。

2)sp2混成軌道
例)三塩化ホウ素(BCl3
三塩化ホウ素(BCl3)は、下記のような平面三角形をしている。

ホウ素は2s軌道に2個、2p軌道に1個の電子を有しており、不対電子を1個有している。上記のように3つの結合を形成するためには、不対電子を持つ原子軌道を3つ用意する必要がある。
そこで下記のように、2s軌道の電子を1つp軌道に移行させてみる。

上記のように2s軌道の電子を1つ2p軌道に移行させてみると、不対電子を持つ原子軌道を3つ準備することができ、ホウ素は3つの結合を形成できるようになる。このとき、s軌道とp軌道2つを混ぜ合わせた同じエネルギー準位の軌道であるsp2混成軌道が形成される。
形成されたsp2混成軌道は、互いに120°の角度をなしているため、三塩化ホウ素(BCl3)は平面三角形構造をしている。

例)エテン(エチレン:C2H4
エテン(エチレン:C2H4)は、下記のような形をしている。

炭素は2s軌道に2個、2p軌道に2個の電子を有しており、不対電子を2個有している。炭素−水素間で2本の結合、炭素−炭素間で2重結合を形成するためには、不対電子を持つ原子軌道を3つ用意する必要がある。
そこで下記のように、2s軌道の電子を1つ2p軌道に移行させてみる。

上記のように2s軌道の電子を1つp軌道に移行させてみると、不対電子を持つ原子軌道を4つ準備することができ、炭素は3つのσ結合を形成できるようになり、p軌道の電子により2重結合を形成できるようになる。

このとき、s軌道とp軌道2つを混ぜ合わせた同じエネルギー準位の軌道であるsp2混成軌道が形成される。

・芳香族性を示す分子を構成する原子の混成軌道
芳香族性を示す分子を構成する原子の混成軌道は、sp2混成軌道となる。

<参考:芳香族性>
芳香属性を示す化合物は、ヒュッケル則を満たす。
<ヒュッケル則>
・環全体が平面構造で、環を構成しているすべての原子がp軌道をもつ(環を構成しているすべての原子がsp2混成軌道をとる)
・4n+2個のπ電子を有する(n=0、1、2、…)

 

3)sp3混成軌道
例)メタン(CH4
メタン(CH4)は、下記のような正四面体構造をしている。

炭素は2s軌道に2個、2p軌道に2個の電子を有しており、不対電子を2個有している。上記のように4つのσ結合を形成するためには、不対電子を持つ原子軌道を4つ用意する必要がある。
そこで下記のように、2s軌道の電子を1つ2p軌道に移行させてみる。

上記のように2s軌道の電子を1つ2p軌道に移行させてみると、不対電子を持つ原子軌道を4つ準備することができ、炭素は4つの結合を形成できるようになる。このとき、s軌道とp軌道3つを混ぜ合わせた同じエネルギー準位の軌道であるsp3混成軌道が形成される。

<アンモニアについて>
アンモニア中の窒素については、下記のようにsp3混成軌道を形成し、水素と3本のσ結合を形成する。

<参考:混成軌道の見極め方>
国家試験では、分子内の原子における混成軌道について問われることがあります。
混成軌道に関する問題については次のように答えを導くようにしましょう。
①脂肪族であるか、芳香族であるか確認する。

②脂肪族の場合、結合している原子の数及びローンペアを数える。
2つ→sp混成軌道
3つ→sp2混成軌道
4つ→sp3混成軌道

③芳香族の場合、芳香属性に関与している原子はsp2混成軌道


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化学結合の成り立ち

化学結合の概要

化学結合とは、複数個の原子が集まって物質を構成する際、互いの原子間を結びつけるもののことである。化学結合を形成するためには、安定化(エネルギーの低下)が不可欠であるとされている。化学結合を形成する際、原子は電子を失ったり、得たり、共有することが認められる。
化学結合は、イオン結合共有結合金属結合に大別される。
また、化学結合には、電気陰性度が密接に関係しており、簡易的には次のように表すことができる。

イオン結合
電気陰性度が小さい原子と電気陰性度が大きい原子間で形成される

共有結合
電気陰性度が大きい原子間で形成される

金属結合
電気陰性度が小さい原子間で形成される

実際の物質中の化学結合は、いずれかの純粋な形ではなく、混じり合っていることが多い。


イオン結合

イオン結合については、塩化ナトリウムを例に考える。ナトリウムはNaとなり、安定な状態となる。また、塩素はハロゲンでありClとなり、安定な状態となる。これらは互いに逆の符号の電荷をもつため、両者間にはクーロン力(静電相互作用)が働いて、エネルギーが低下し、イオン結合が形成される。


共有結合

陰性元素同士の場合、イオン結合のように片方が陽イオン、もう片方が陰イオンとなり結合するのは、陰性元素が陽イオンとなる必要があるため、エネルギー的に不安定である。そのため、陰性元素同士の場合には、電子を共有することで、結合を形成し、分子となる。共有結合を考える方法には、主に2つの量子力学的方法である原子価結合法と分子軌道法がある。

1)原子価結合法
 原子間の結合は、不対電子(スピンが対になっていない電子)をもつ原子軌道が不対電子をもつ別の原子軌道と重なり合ってできると考える。

例)H2(水素分子)の場合
2つの水素原子A、Bは互いに1s軌道に1つの電子を有している(不対電子を1個有している)。
これらが近づくと互いに電子を共有し、結合を形成する(下図参照)。

2)分子軌道法
分子軌道法については、「分子軌道の基本概念」にて詳細を確認


配位結合

配位結合は、共有結合の1種である。通常の共有結合と異なり、一方の原子が結合を形成するために電子対を提供する。

例)アンモニウムイオン(NH4

丸で囲われた電子対は、窒素より提供されたものであり、プロトンから電子は提供されていない。配位結合は、ローンペアを提供するもの(ルイス塩基)とローンペアを受け取るもの(ルイス酸)の間で形成される。配位結合は一度形成されてしまうと、共有結合と見分けることができないため、配位結合については、共有結合の一種と考えることもできる。


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