2 電離放射線の種類、それらの物質との相互作用

電離放射線の種類

電離放射線は粒子放射線と電磁波放射線に分類される。粒子放射線については、原子核粒子線、電子線、中性子線などがある。


電離放射線と物質との相互作用

電離放射線が物質に衝突すると、電離現象及び励起現象に伴う発光現象(シンチレーション)が認められることがある。また、放射線ごとで物質との相互作用が異なる形で認められる。

1)電離作用
電離作用とは、軌道電子が軌道外に弾き出され、電子と陽イオンを生成させる作用のことである。なお、電離作用の大小関係は、α線>β線>γ線の順である。

2)励起作用
励起作用とは、軌道電子の配置を変化させ、高エネルギー状態にする作用のことである。励起状態にある原子は、時間が経過すると基底状態に戻る際に蛍光発光現象を起こすことがある(この現象をシンチレーションという)。

3)α線と物質の相互作用
 α線は物質を通過するときに分子や原子を電離、励起することによりエネルギーを失う。物質中を通過するときの飛跡は、直線状となる。なお、α線の飛程については、外部磁場により変化することがある。

4)β線と物質の相互作用
 β線の物質との相互作用には、弾性散乱、非弾性散乱、制動放射がある。

(1)弾性散乱
 β線が原子核のそばを通過するとき、原子核の正電荷により進行方向のみが変化する現象のことであり、運動エネルギーの減少はない。弾性散乱を起こしたβ線は、飛跡がジグザグ状となる。また、弾性散乱のうち、β線の進行方向が入射方向へ変化する現象を後方散乱という。

(2)非弾性散乱
 β線が軌道電子などと相互作用を起こし、電離、励起を繰り返すことにより進行方向が変化する現象のことであり、運動エネルギーの減少が認められる。

(3)制動放射
 β線が原子核のそばを通過するとき、原子核の正電荷により進行方向が変化するとともにX線が放出される現象のことである。この現象により放出されるX線を制動X線という。

5)β線と物質の相互作用

β線は励起、電離によりエネルギーを失うが、運動エネルギーを失って静止するとすぐに周囲の陰電子と結合して互いに正反対の方向に出る2本のγ線(消滅放射線)に変化する。

β線の本体は陽電子であり、陰電子を引き合い消滅するという特徴を有している。この原理を利用した、画像診断法にPET(ポジトロンCT)があり、PETでは、陽電子放出核種を体内に入れ、標的組織と反応させた後、発生するγ線を測定することにより、体内の状態を調べることが可能である。

6)γ線と物質の相互作用

γ線が物質を通過するとき、次の3つの形式(光電効果、コンプトン効果、電子対生成)で相互作用を起こし、エネルギーを消失する。γ線については、透過力が非常に大きいが、電離作用、励起作用はα線、β線に比べ非常に小さい。

(1)光電効果
 γ線が軌道電子の1つに全エネルギーを与えて、原子から軌道電子を光電子として放出させる現象

(2)コンプトン効果
 電磁波のエネルギーの一部を軌道電子に与え、自身は長波長へとエネルギー減少した光子となって散乱し、弾かれた電子は電子線として振る舞う現象。

(3)電子対生成
 高エネルギーのγ線が原子核の近くを通過すると、電子対(陽電子、陰電子)を生成し、γ線が消滅する現象。


放射線の外部被曝に対する防衛

体外からの放射線による被曝を外部被曝といい、外部被曝に対する防衛には、外部被曝防護の三原則がある。

<外部被曝防護の三原則>
・距離:放射線源からはできるだけ離れる
・時間:線源に触れる時間を短くする
・遮蔽:線源との間に適切な遮蔽物を設ける
外部被曝を考える上で重要なのが、放射線の透過力である。放射線の透過力についてはα線<β線<γ線となっている。

<放射線の遮蔽について>
α線、β線、γ線の遮断については以下のようになっている。
α線:厚紙が遮蔽剤として用いられる。
β線:アクリル板が遮蔽剤として用いられる。
γ線:鉛、タングステン、コンクリート、鉄が遮蔽剤として用いられる。遮蔽剤で完全に遮蔽することができず、一部のγ線は透過してくる。

<参考:γ線と遮蔽体の厚さの関係>
γ線は遮蔽物の厚さに応じて指数関数的に低減する。そのため、γ線の遮断と遮蔽体の厚さについては、半価層(入射したγ線を半分にすることができる遮蔽体の厚さ)を用いて表すことができる。


放射線の単位

放射線を表す単位には様々なものがある。以下のそれらの概要を示す。
1)放射線量
 放射線が物質を通過する際、その物質中のある位置における放射線の量のことであり、単位はベクレル(Bq)で表される。Bqは1秒間の壊変数を表している。

2)吸収線量
 放射線を照射された物質が放射線のエネルギーをどれだけ吸収したかを表したものであり、単位はグレイ(Gy)である。

3)等価線量
 ヒトに対する生物学的効果を表す線量のことであり、単位はシーベルト(Sv)である。等価線量については以下の式より表される。
等価線量=放射線荷重係数×組織・臓器の平均吸収線量
・放射線荷重係数
放射線の種類による人体への影響を数値化したもの

4)実効線量
 各組織・臓器における等価線量に組織荷重係数を乗じ、これを全身について換算した総和の線量のことであり、単位はシーベルト(Sv)である。
各臓器・組織の等価線量にそれぞれの組織荷重係数を乗じ、それらの総和として算出される。
実効線量=Σ(各臓器の等価線量×組織荷重係数)
・組織荷重係数
組織ごとで放射線による影響を数値化したもの


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