70歳女性。腰痛を訴え来院した。骨密度が低下していることが明らかになり骨粗しょう症と診断され、以下の薬剤が処方された。
1年経過後の腰椎骨密度測定値は、若年成人平均値の65%で、半年前の値より3%下がっていた。さらに椎体骨折が1か所認められ、腰痛症状も改善されていなかった。そこで、以下の処方に変更となった。
問215 (実務)
処方1のアレンドロン酸錠の服薬指導で誤っているのはどれか。2つ選べ。
- 胃腸障害を起こしやすいので、服用後なるべく早く食事をとってください。
- カルシウム、マグネシウム等の含量の高いミネラルウォーターでは飲まないようにしてください。
- この錠剤は溶け易いので、少量の水で飲んでも構いません。
- 服用後少なくとも30分は横にならないでください。
- 服用を忘れて、朝食をとってしまった時は、翌朝の起床時に飲んでください。
解答・解説
解答
1、3
解説
1 誤っている
本剤は、2価以上の金属カチオン(カルシウム、マグネシウム等)とキレートを形成し、吸収低下を起こす。よって、服用後30分間は水以外の飲食を避ける必要がある。
2 正しい
本剤をカルシウム、マグネシウム等の含量の高いミネラルウォーターで服用すると、吸収低下を起こすことがある。そのため、本剤をカルシウム、マグネシウム等の含量の高いミネラルウォーターで服用することを避ける必要がある。
3 誤っている
本剤は胃腸障害を起こしやすいため、コップ一杯(約180 mL)程度の十分な量の水で服用する必要がある。
4 正しい
本剤を服用後すぐに横になると、副作用として食道潰瘍を起こすことがあるため、本剤服用後少なくとも30分は横にならないようにする必要がある。
5 正しい
本剤は週1回服用する製剤であり、服用を忘れて朝食をとってしまった時は、その日の服用は中止して翌朝の起床時に服用する。
問216 (実務)
処方3のテリパラチド製剤に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 使用開始後も冷蔵庫に入れて保存する。
- 注射は腹部又は大腿部に行う。
- 本剤はカルシトニン製剤である。
- 骨粗しょう症以外の代謝性骨疾患の患者にも使用できる。
解答・解説
解答
1、2
解説
1 正
本剤は使用開始後も冷蔵庫に入れ、凍結を避け、2〜8℃で遮光保存する。
2 正
本剤は、腹部又は大腿部に皮下注射として用いる。
3 誤
本剤は、ヒトパラトルモン(副甲状腺ホルモン)製剤である。
4 誤
本剤は、骨粗しょう症以外の代謝性骨疾患に用いることはできない。なお、本剤は骨折の危険性の高い骨粗しょう症の治療に用いられる。
問217 (物理・化学・生物)
骨粗しょう症は、体内のカルシウム代謝と深く関わっている。生体のカルシウムイオン(Ca2+)濃度の調節に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 細胞膜にはATPの加水分解エネルギーを用いて細胞外にCa2+を排出するCa2+ポンプが存在する。
- 腸管からのCa2+の吸収は、カルシトリオール(活性型ビタミンD3)により促進される。
- カルシトニンは骨吸収を促進し、血漿中へのCa2+遊離を増加させる。
- 腎臓におけるCa2+の再吸収は、副甲状腺(上皮小体)ホルモンによって抑制される。
解答・解説
解答
1、2
解説
1 正
細胞膜にはATPの加水分解エネルギーを用いるCa2+ポンプが存在し、それにより、Ca2+は細胞内(Ca2+が低い)から細胞外(Ca2+が高い)へ排出されている。
2 正
カルシトリオール(活性型ビタミンD3)は小腸上皮細胞に存在する核内受容体に結合し、Ca2+結合タンパク質の産生を促進することにより、腸管からのCa2+の吸収を促進する。
3 誤
カルシトニンは、甲状腺ろ胞細胞から分泌されるホルモンであり、骨吸収抑制や腎尿細管からのCa2+再吸収抑制を介して血漿中Ca2+濃度を低下させる。
4 誤
副甲状腺(上皮小体)ホルモン(パラトルモン)は、骨吸収促進作用や腎臓に置けるCa2+の再吸収促進を介して血漿中Ca2+濃度を増加させる。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 第99回 問215〜217 […]