6 結晶構造と回折現象

結晶構造

結晶とは、固体のうち、それを構成する原子、分子、イオンなどが規則正しく三次元的に配置されている物質のことであり、同一の化学組成を有するものでも結晶構造が異なることがある。同一の化学組成をもつもので結晶構造が異なることを結晶多形といい、結晶多形間では、溶解性や安定性が異なる。このことから、結晶多形間ではバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が異なるなど、医薬品を開発する上で結晶多形は重要視されている。

結晶中では原子や分子が秩序よく三次元的に配列して結晶格子を形成している。結晶格子の最小単位を単位格子といい、単位格子の形は、3つの軸長さとそれらを挟む角度で表される。この単位格子の形を表す3つの軸長さとそれらを挟む角度を格子定数という。


ブラッグの式

結晶面にX線を照射すると各原子の核外電子が強制振動させられ、その振動により同波長の散乱X線が発生する。この現象をトムソン散乱という。トムソン散乱により発生したX線(散乱X線)は位相が保たれており、互いに干渉し、強め合い、あたかも入射X線が反射したようになる(この現象を回折という)。下記の式において、nが整数の場合に、回折強度が最も強く現れる。

2dsinθ=nλ

d:結晶格子面の面間隔 θ:X線の入射角及び反射角、λ:入射するX線の波長 n:回折の次数
 この式をブラッグの式といい、この式より回折角や面間隔を知ることができ、結晶構造を解析することができる。


 結晶構造解析

結晶構造にX線を照射することにより結晶構造を解析することができる。その方法として、単結晶X線回折、粉末X線回折法がある。

1)X線の発生
X線回折法では、封入式X線管球より発生させた固有X線を用いる。
封入式X線管球
 陰極(フィラメント)から放出された熱電子を対陰極に衝突させ、X線を発生させる装置を封入式X線管球という。封入式X線管球より、連続X線と特性(固有)X線が発生する。特性(固有)Xとは、固有の波長を持ったX線であり、その波長は対陰極に用いる金属に依存する。X線回折法では、X線源の対陰極にモリブデン(Mo)、銅(Cu)が用いられる。

2)単結晶X線回折
 単結晶X線回折とは、試料の単結晶を作成し、単結晶と単色X線を用いてX線回折を観測する方法のことである。単結晶X線回折により得られた回折斑点の間隔より、原子や分子の配列(単位格子の形を表す3つの軸長さとそれらを挟む角度:格子定数)がわかり、回折強度より、電子密度がわかる。

3)粉末X線回折法
 粉末の多結晶試料にX線を照射し、各回折角について回折強度を測定することにより結晶、結晶多形の同定、定量、結晶化度の測定などを行う方法である。この方法では、既知化合物のスペクトルと測定によって得られたスペクトルを見比べて結晶構造を同定するため、既知の化合物の構造を同定することはできるが、未知化合物の構造は解析できない。

この方法により得られる回折図については以下の特徴を示す。
・同じ結晶構造を有するものは、同じ回折角の部分に回折強度が強く現れる。
・異なる結晶構造を有するものは、異なる回折角の部分に回折強度が強く現れる。
・結晶構造を有していないもの(非晶質)は、明確な回折強度は現れない。

下記の粉末X線回折パターンより化合物aとbの関係について確認する。

化合物aおよび化合物bでは回折強度が明確に現れていることから、両者は結晶構造を有している(結晶構造を有していない場合は、回折強度が明確に現れない。)。
また、化合物aと化合物bでは異なる回折角2θにおいて回折強度が現れていることから、両者は結晶多形の関係にあると考えられる。


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