3 スピンと磁気共鳴

核スピン、電子スピン

原子、分子中の電子や核は電荷を帯びた粒子であり、自動運動(核スピン、電子スピン)によって磁気を帯びている(磁気モーメントが生じている)。外部磁場がないときスピンによって生じる磁気モーメントは無秩序な方向を向いているが、外部磁場を加えると核および電子は一定方向にスピンするようになる。
外部磁場によりスピンの方向を一定にすることを利用して物質を分析する方法に、NMR(核磁気共鳴スペクトル法)とESR(電子スピン共鳴法)がある。

1)NMR(核磁気共鳴スペクトル法)
 核スピンを利用して、物質を分析する方法にNMR(核磁気共鳴スペクトル法)がある。核磁気共鳴スペクトルでは、核スピンを有する核種(下表)を観測することができるが、核スピンがない核種(核スピン量子数I=0:12C、16O)については、観測することができない。

2)ESR(電子スピン共鳴法)
 電子スピンを利用して、物質を分析する方法にESR(電子スピン共鳴法)がある。ESRでは不対電子をもつ原子・分子を観測することができる。


核磁気共鳴スペクトル法の原理

NMR(核磁気共鳴スペクトル法)は、静磁場に置かれた物質の構成原子核がその核に特有の周波数のラジオ波に共鳴して低エネルギーの核スピン状態から高エネルギーの核スピン状態に遷移することを利用したスペクトル測定法である。

1)ゼーマン分裂
核スピン量子数Iをもつ原子核に外部磁場を加えると(2I+1)個のエネルギー準位に分裂する。この現象をゼーマン分裂という。
例)核スピン(I)が1/2となる原子核に外部磁場を加える場合
外部磁場と磁気モーメントの相互作用によりエネルギー準位が(2×1/2+1=2)2つに分裂する。

核スピン(I)が1/2の原子核に外部磁場をかけると、磁気モーメントが外部磁場と同じ方向をもつものと反対の方向をもつものが現れる。磁気モーメントが外部磁場と同じ方向の場合は、低エネルギー状態となり、磁気モーメントが外部磁場と反対の方向の場合は、高エネルギー状態となる。

2)核磁気共鳴
核スピン(I)が1/2となる原子核に外部磁場を加えると、外部磁場と磁気モーメントの相互作用によりエネルギー準位が2つに分裂する。そこにラジオ波を照射すると、磁気モーメントが外部磁場と同じ方向をもつもの(低エネルギー状態)が磁気モーメントが外部磁場と反対の方向をもつもの(高エネルギー状態)に遷移する。この現象を核磁気共鳴という。


磁気共鳴画像(MRI)法

MRIは、生体内の水、脂肪の分布や存在状態を三次元的に画像化する方法であり、その測定原理は1H−NMRと基本的には同じである。

1)測定の流れと測定原理
① 外部磁場をかける。
 人体の各細胞に含まれる水素原子核(プロトン)に磁場をかけると、プロトンは、一定方向の歳差運動を行う。
② ラジオ波を(ラーモア周波数と同じ)照射する
プロトンがラジオ波のエネルギーを吸収し、励起状態となる。
③ ラジオ波の照射を中断する
励起状態にあったプロトンが基底状態へと戻る。この基底状態に戻るまでの時間を緩和時間といい、MRIは、緩和時間の長短を白黒のコントラストで表し画像化する。

2T1強調画像法、T2強調画像法
 シグナル強度だけでは、病床を判断することは難しいため、画像のコントラストをつけるために縦緩和時間T1の差を利用したT1強調画像法、横緩和時間T2の差を利用したT2強調画像法が利用されることがある。
T1強調画像法、T2強調画像法を利用することにより、MRIにより得られる画像の白黒がしっかり現れ病巣をより正確に確認することができる。

3)MRIの特徴
 MRIはエネルギーの低い電磁波であるラジオ波を用いるので、X線CTやPETのように放射線による被曝はない。また、骨などの影響をうけず画像化することができるので骨に囲まれた組織の断層撮影法として優れている。


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