分子間相互作用

分子間に働く相互作用には、静電的相互作用、ファンデルワールス力、双極子間相互作用、分散力、水素結合、電荷移動、疎水性相互作用など多くのものが存在する。


静電的相互作用 

静電的相互作用とは、静電場における点電荷間(広がりが極めて小さい電荷)の相互作用のことであり、その力については、クーロン力と呼ばれる。静電的相互作用の典型例に電荷をもつ分子やイオン間のイオン結合がある。

1)クーロン力とポテンシャルエネルギー
 クーロン力Fについては、下記の式で表される。

(Q、Q’:電荷、ε:媒質の誘電率、r:2つの電荷間の距離)
また、クーロン力に基づくポテンシャルエネルギーEについては、下記の式で表される。

上記の式よりクーロン力及びクーロン力に基づくポテンシャルエネルギーと2つの電荷間の距離との関係については、下記に示す関係が成立する。

クーロン力:rの2乗と反比例
ポテンシャルエネルギー:rと反比例


ファンデルワールス力 

ファンデルワールス力(ファンデルワールス引力)とは、電荷をもたない中性分子や原子の間に働く相互作用(引力)のことであり、共有結合やイオン結合に比べて6000分の1とかなり弱い結合である。ファンデルワールス力は、大きい分子ほど強く、その傾向は希ガスやハロゲンの物性(融点、沸点など)に反映される。分子が大きいほど凝集力は強まり、沸点や融点は上昇する。

1)ファンデルワールス力と分子間の距離
 分子間の距離が近づくにつれてファンデルワールス力(引力)は強くなるが、さらに距離が近くなるとファンデルワールス反発力が働くようになる。反発力が働く理由については、中性分子の閉鎖電子殻に他の電子を挿入できない、また、原子核のもつ正電荷が反発するためである。


双極子間相互作用 

1)結合の極性と双極子モーメント
双極子モーメントµとは分子内の電荷の偏りを定量的に表したものである。双極子モーメントは、電荷×距離(µ=Q×r)により求めることができ、その単位はD(デバイ)である。以下に酸素O2と一酸化炭素COの結合の極性及び双極子モーメントについて考察してみる。

例)酸素O2
酸素O2のような等核二原子分子では、結合電子が両方の原子に等しく分布して2原子間で等しく共有されている。このような場合では、分子内で電荷の偏りは生じないため、双極子モーメントは「0」となる。

例)一酸化炭素CO
一酸化炭素COは、電気陰性度の大きい酸素に電子が偏るため、酸素はマイナス、炭素はプラスに分極する。そのため、一酸化炭素における化学結合は完全な共有結合ではなく、一部イオン結合性を帯びる。この場合の双極子モーメントについては、正の値を示す。原子がどれほど電子を引きつけるかについては、電気陰性度で決まっており、電気陰性度差が大きい結合ほど、双極子モーメントが大きくなる。なお、分極した化学結合がもつ電気双極子を永久双極子という。

2)双極子モーメントと分子の構造
化学結合に極性があっても、分子構造が対照的である場合、分子全体として双極子モーメントが「0」となる場合がある。
例)四フッ化炭素(CF4)、四塩素炭素(CCl4)、二酸化炭素(CO2

3)双極子間の相互作用
双極子間の相互作用には、「永久双極子−永久双極子相互作用」、「イオン−双極子相互作用」、「双極子−誘起双極子相互作用」がある。

(1)永久双極子−永久双極子相互作用
永久双極子間で働く相互作用のことであり、双極子の位置が固定されている場合と、双極子の位置が固定されていない場合では、ポテンシャルエネルギーは以下のように異なる。
結晶構造のように双極子の位置が固定されている場合
→距離rの3乗に反比例する
気体や液体のように双極子の位置が固定されていない場合
→距離rの6乗に反比例する。

(2)イオン−双極子相互作用
イオンと双極子の間で働く相互作用のことである。

(3)双極子−誘起双極子相互作用
双極子と誘起双極子に間で働く相互作用のことである。

<参考:誘起双極子について>
極性分子を中性分子に近づけると中性分子に電気的な偏りが生じ、双極子が誘起されることがあるこの現象により生成した双極子を誘起双極子という。


分散力

分散力とは、中性分子間で働く引力であり、ファンデルワールス引力の1つである。分散力は、別名ロンドン力、ロンドン分散力ともいわれる。

<分散力の概要>
無極性分子では、通常、電荷の偏りはないが、瞬間的に電子の偏りが生じることがある。この瞬間的に生じた電子の偏りにより双極子が誘発され、その双極子が他方の分子にも双極子を生み出す。こうしてできる二つの双極子間で働く引力が分散力に該当する。

1)分散力と分子間距離の関係
 分散力は、分子間の近傍で作用し、そのポテンシャルエネルギーは分子距離の6乗に反比例する。一方、分子同士が接近しすぎると反発力が作用し、そのポテンシャルエネルギーは分子距離の12乗に反比例する。


水素結合

酸素、窒素、硫黄、フッ素などは電気陰性度が大きく、これらに結合している水素原子は、正電荷を帯やすい。これら正電荷を帯びた水素原子は電気陰性度の高い原子(酸素、窒素、硫黄、フッ素など)と相互作用を起こしやすい。

上記の図のようにNHとCOの間に形成される結合を水素結合という。

1)水素結合と沸点
①水分子の沸点
 水分子は、分子量の割に沸点が高い。その理由として、水分子の間では、水素結合が形成されているからである。

②水分子とフッ化水素(HF)の沸点の比較
水分子は、フッ化水素(HF)に比べて沸点が高い。Fは電気陰性度が高いことから、HFのHは正電荷を帯やすく、HF間では水よりも強い水素結合が形成される。このことから、HFの方が沸点が高くなりそうだが、HFで形成される水素結合の数が2本であるのに対し、水分子間(液体)では、水素結合が3本形成されるため、水分子の方が沸点が高くなる。

2)水素結合と溶解性
 水素結合能のない炭化水素は水に溶けにくいが、アルコール(ヒドロキシ基を有する)やアミン(アミノ基を有する)は水分子と水素結合を形成するため水に溶けやすい。

3)生体高分子における水素結合
 生体高分子において水素結合は重要な役割を果たす。
例)DNA
DNAは、2重らせん構造をしており、2本の鎖をつなぐ力はアデニン−チミン及びグアニン−シトシンの間の水素結合である。

例)タンパク質
タンパク質はアミノ酸がペプチド結合(−CO−NH−)で繋がったポリペプチドであるが、離れているペプチド結合のNHとCOが水素結合し、二次構造を形成することがある。
①αヘリックス
NHとCOがN−H…O=C型の水素結合により空間的に結びついて螺旋構造を形成したもの
②βシート
2本のポリペプチド鎖が並行し、その間にN−H…O=C型の水素結合により架橋された構造を形成したもの


疎水性相互作用

水中の疎水性分子は水を避けて集まる性質がある。その要因として、疎水性相互作用が働いていると考えることができる。疎水性相互作用には、疎水性分子表面からの水和水排除効果(水分子のエントロピー増大効果)が関与している。

<疎水性相互作用について>
疎水性分子を水中に入れると疎水分子が集合する。この現象は、疎水分子間に相互作用が働き、疎水分子が集合しているように見えるが、実際は、疎水分子表面にある水分子が自由になること(水分子のエントロピーの増大)が関与している。

熱力学的には、一般にエントロピー(乱雑さ)が増大する方向に反応が進行するため、疎水性分子を水に入れると、水のエントロピー(乱雑さ)が増大する(疎水性分子が集合する)方向に反応が進行する。

1)疎水性相互作用の例
①:両親媒性物質(界面活性剤、脂肪酸など)を水に添加した場合
水に両親媒性物質を添加するとある濃度以上でミセルが形成される。また、界面活性剤のに分子膜が球状になったベシクルが形成されることもある。

ミセルが形成されると、炭化水素部分にはファンデルワールス力が働きミセル構造はより安定化する。


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