薬剤師国家試験出題項目

非経口投与された薬物の吸収

1 薬物の経鼻吸収

経鼻吸収とは、薬物を鼻粘膜を介して吸収させる方法である。鼻粘膜は、鼻前庭、呼吸部、嗅部より構成されており、薬物の吸収は主に鼻腔下部の大部分を占めている呼吸部で行われる。呼吸部の粘膜上皮は多列線毛上皮が密に接着しているが、薄く、バリア能が低いため、一般に薬物の吸収は良好である。
鼻粘膜に投与された薬物は、基本的に消化管吸収と同様に受動拡散により吸収され、pH分配仮説に従う。このことから、一般に脂溶性の高い薬物の吸収は水溶性薬物に比べ良好であり、また、分子形薬物が脂溶性薬物に比べ吸収されやすい。また、鼻粘膜に投与された薬物は、吸収後、直接循環血液に到達するため、肝初回通過効果を回避することができる。
現在、鼻粘膜を介して投与されている代表的な薬物として、デスモプレシン、ブセレリン、スマトリプタンなどがある。

2 薬物の口腔粘膜からの吸収

口腔粘膜の上皮は、重層扁平上皮で構成されており、消化管粘膜に比べ表皮に近い構造をしている。よって、口腔粘膜には皮膚と同様に角質層が存在する場所があり、この層が薬物透過速度の律速段階となることがある。
口腔粘膜からの薬物の吸収機構は一般に受動拡散であり、pH分配仮説に従う。また、口腔粘膜に投与された薬物は、鼻粘膜に投与された薬物と同様に吸収後、直接循環血液に到達するため、肝初回通過効果を回避することができる。
現在、口腔粘膜を介して投与されている代表的な薬物として、ニトログリセリン、ニコチン、フェンタニルなどがある。

3 薬物の経肺吸収

呼吸器への薬物投与は、従来、喘息治療薬などの局所作用発現を期待する投与経路として用いられてきたが、最近では、消化管から吸収されないような高分子物質に対しても経肺吸収が可能であることが明らかになってきている。
吸入された空気は、咽頭→気管→気管支→細気管支→終末細気管支→肺胞の順に末端部に到達する。肺胞は肺の最小基本単位であり、この部位では本来、空気中の酸素と血液中の二酸化炭素の交換が行われるが、肺に投与された薬物も肺胞より吸収される。
ヒトの肺胞の表面積は200m2と小腸の表面積に匹敵するほどの表面積を有しており、また、肺胞上皮層の厚さは消化管粘膜の厚さに比べ極めて薄いことから肺はガスの交換のみならず薬物の吸収部位としても極めて優れた組織学的特徴を有している。
一般に、肺からの薬物の吸収はⅠ型肺胞上皮細胞を介した単純拡散によるものであり、脂溶性のものが水溶性のものに比べ吸収されやすいとされている。また、経肺吸収される薬物は、用いる剤型の粒子径によっても左右され、0.5〜1µmのものが肺胞に到達し、効率よく吸収される。この粒子径よりも大きい薬物は、気管や気管支に捕捉され、この粒子径よりも小さい薬物は肺胞に到達できるが、呼気中に排泄される。

4 薬物の直腸からの吸収

直腸粘膜は、消化管粘膜と同様に単層円柱上皮細胞で覆われているが、小腸と異なりひだが少なく絨毛も発達していないことから、表面積が狭く、一般に薬物の吸収に適しているとはいいにくい。
直腸下部から吸収された薬物は、肝臓を経由せずに循環血液中に移行することから、肝初回通過効果を受けにくいため、肝臓で初回通過効果を受けやすい薬物の投与経路として適している。また、消化管から吸収されにくい水溶性の薬物の吸収性を改善するために吸収促進剤が用いられることがあり、こうした吸収促進剤(カプリン酸ナトリウムなど)の効果が小腸に比べ顕著に現れることがある。

<参考:カプリン酸ナトリウム>
カプリン酸ナトリウムは、坐剤などに添加される吸収促進剤であり、消化管粘膜に作用することによりその構造を変化させ、薬物の透過性を改善する。

5 薬物の経皮吸収

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織から構成されており、表皮の最も外側は角質層といわれる角質化した細胞により覆われている。その他、皮膚の表面には毛嚢、エクリン線(汗腺)などの付属器官が存在する。

薬物の経皮吸収は基本的には単純拡散により行われ、脂溶性の高い薬物や分子形の薬物の透過が良好である。薬物の経皮吸収は分子量に依存し、一般には分子量500以上の薬物の経皮吸収は不良である。また、角質層は角質化した細胞であり、バリア機能を有しており薬物の経皮吸収の律速部位となる。
薬物の皮膚透過経路は、角質層を透過する経路と毛穴などの付属器官を通る経路の二つに分けられる。一般に、付属器官からの吸収は速やかであるがその有効面積が角質層に比べ小さいため、ほとんどの薬物は角質層を経由して吸収される。
一般に薬物の経皮吸収は最外層に存在する角質層に大きく制御されていることから、水溶性薬物あ高分子薬物はほとんど皮膚から吸収されない。これら水溶性薬物や高分子薬物の経皮吸収を改善するためには経皮吸収改善法を利用する必要がある。

●経皮吸収改善法
経皮吸収改善法には、経皮吸収促進剤、プロドラッグ化、イオントフォレシス(皮膚外部から電流を流すことにより薬物吸収を促進する方法)、ソノフォレシス(皮膚表面に超音波を照射することにより薬物の経皮吸収性を改善する方法)、マイクロニードルなどがある。

◇関連問題◇
第94回問152、第97回問166、第98回問167、第100回問166、第103回問42

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