薬剤師国家試験出題項目

鎮痛薬

鎮痛薬

痛みは、危険信号を伝えるための機能を有しているが、過度に痛みが発生すると、生活の質の低下や体力の消耗が伴う。この痛みを取り除くために用いられるのが鎮痛薬である。鎮痛薬には、中枢性鎮痛薬(麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬)、非オピオイド鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬などがある。

1 痛覚伝導路と鎮痛薬

1)痛みの種類

痛みは発生の機序により、器質的疼痛と非器質的疼痛(心因性の痛みなど)に分類される。器質的疼痛には、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛がある。

●侵害受容性疼痛
侵害受容性疼痛には、組織の障害による痛みである体性痛、臓器の炎症や閉塞、圧迫、臓器被膜の急激な伸展による痛みである内臓痛がある。
例)
ブラジキニンによる刺激で発生する痛み
冷たいもの、熱いものによる刺激で発生する痛み
鋭利なものによる刺激で発生する痛み

●神経障害性疼痛
神経が障害されることによる痛み、一説では、痛みの伝達に関与するカルシウムチャネルが過剰に発現することが関与しているとされている。

例)
帯状疱疹後の痛み
糖尿病による末梢神経障害により発生する痛み

2)痛みの伝達

2次ニューロンの軸索には、新脊髄視床路と旧脊髄視床路がある。

●新脊髄視床路(即時痛を伝える経路)
脊髄後角→視床→大脳皮質知覚領

●旧脊髄視床路(遅延痛を伝える経路)
脊髄後角→延髄網様体→視床→大脳皮質知覚領

<オピオイド鎮痛薬の作用点>
オピオイド鎮痛薬は中脳、延髄に存在するオピオイド受容体に結合し、脊髄後角への下降性抑制系を賦活化して、鎮痛作用を示す。また、1次ニューロンに抑制的に作用するとともに視床や大脳辺縁系にも作用して鎮痛作用を示す。

2 オピオイド受容体

 モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬およびオピオイドが結合する受容体を一括してオピオイド受容体という。オピオイド受容体には、β–エンドルフィンに高親和性を示すμ受容体、ロイシン・エンケファリンに高親和性を示すδ受容体、ダイノルフィンに高親和性を示すκ受容体が存在する。

3 オピオイドの薬理作用

オピオイド受容体は、中枢以外にも多くの場所に存在することから、オピオイドは鎮痛作用のみならず多くの薬理作用を有する。

4 麻薬性鎮痛薬

1)アヘンアルカロイド

① モルヒネ

<作用>
・オピオイドμ受容体に結合することにより、中枢抑制作用、中枢興奮作用、末梢作用を示す。

<適用>
・術後疼痛、がん性疼痛、心筋梗塞による疼痛などの激しい疼痛時における鎮痛、鎮静
・激しい咳嗽発作における鎮咳
・激しい下痢の改善

<主な副作用>
 便秘、悪心、嘔吐、眠気、縮瞳など

<補足>
・ヒスタミン遊離作用があり、気管支喘息を悪化させることがあるため、気管支喘息には投与禁忌とされている。脊髄反射亢進作用により痙攣を助長させるため、痙れん性疾患には投与禁忌とされている。
・鎮痛、鎮咳作用に耐性を生じることがあるが、縮瞳作用、止瀉作用には耐性を生じない。
・急性中毒として、呼吸抑制が現れることがある。急性中毒による呼吸抑制の解毒薬として、レバロルファンやナロキソンが用いられる。また、急性中毒として、せん妄が現れることがある。
・連用により精神的依存や身体的依存が認められることがある。ただ、がん患者においては健常人に比べ、精神的依存が現れにくいとされている(がん患者において、精神的依存が臨床上問題とならない)。
・慢性中毒患者に麻薬拮抗作用を有する薬物(ナロキソンなど)を用いると、禁断症状を呈することがある。
・肝臓でグルクロン酸抱合を受け、モルヒネ–3–グルクロニド(M–3–G)とモルヒネ–6–グルクロニド(M–6–G)などを生成する。M–3–Gは鎮痛作用が弱いが、M–6–Gはモルヒネよりも強力な鎮痛作用を示す。

② コデイン

・モルヒネの3位のフェノール性水酸基がメチル化されたものであり、モルヒネに比べグルクロン酸抱合を受けにくい(モルヒネに比べ水酸基が少ないため、グルクロン酸抱合を受けにくい)。
・モルヒネより鎮痛作用、鎮咳作用、呼吸抑制作用が弱く、依存を生じにくい。
・主に鎮咳薬として用いられる。

③ ジヒドロコデイン

・コデインと同様に主に鎮咳薬として用いられる。

  ④ オキシコドン
・オピオイドμ、κ受容体刺激作用を有する。
・経口投与で用いる場合、モルヒネよりも鎮痛作用が強い。

2)合成麻薬性鎮痛薬

① フェンタニル

・オピオイドμ受容体刺激作用を有する。
・作用時間が短く、モルヒネに比べ極めて強力な鎮痛作用を示す(モルヒネの約50〜100倍)。
・モルヒネに比べ、便秘を生じにくい。
・フェンタニルクエン酸塩の貼付剤は、1日(24時間)ごとに貼り替えるものや3日(72時間)ごとに貼り替えるものがある。
・フェンタニルクエン酸塩の舌下錠、バッカル錠は強オピオイド鎮痛剤を定時投与中のがん患者における突出痛の鎮痛に用いられる。

② レミフェンタニル

・オピオイドμ受容体を選択的に刺激する。
・非特異的エステラーゼにより速やかに代謝されるため、血中半減期が短い。
・超短時間型の鎮痛薬であり、全身麻酔の導入および維持における鎮痛に用いられる。

③ ペチジン

・オピオイドμ受容体刺激作用を有する。
・鎮痛作用はモルヒネよりも弱く、作用時間も短い。
・末梢作用としてアトロピン様、パパベリン様の鎮痙作用を有する。

④ メサドン

・オピオイドμ受容体刺激作用、NMDA受容体拮抗作用を有する。
・鎮痛作用はモルヒネと同程度である。
・他の強オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度のがん性疼痛に用いられる。

5 非麻薬性鎮痛薬

1)麻薬拮抗性鎮痛薬

① ペンタゾシン

・オピオイドκ受容体刺激による弱い鎮痛作用を示す(モルヒネの1/4〜1/2程度)。
・オピオイドμ受容体に対して弱い拮抗作用を示すため、モルヒネ依存者に用いると禁断症状が現れることがある。
・錠剤には乱用を防止する目的でナロキソンが含有されている。
・単独投与時は鎮痛作用を示すが、モルヒネと併用するとモルヒネの効果が弱くなる。

② ブプレノルフィン

・オピオイドμ受容体に対して部分刺激薬として作用する。
・オピオイドμ受容体刺激作用が強く、モルヒネよりも強力な鎮痛作用を示す(モルヒネの約20〜50倍)。
・麻薬拮抗性を示すため、モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬の鎮痛作用と拮抗する。

2)その他の鎮痛薬

① トラマドール
・非麻薬性オピオイド鎮痛薬である。
・モルヒネに比べ鎮痛作用が弱く、依存性が現れにくい。
・オピオイドμ受容体を刺激することにより上行性痛覚伝導路を抑制する。また、ノルアドレナリン、セロトニンの再取り込みを阻害し、下降性疼痛抑制系を賦活化する。
・セロトニン再取り込み阻害作用により、セロトニン症候群を誘発することがある。

6 麻薬拮抗薬

 麻薬拮抗薬であるナロキソンやレバロルファンはオピオイドによる急性中毒である呼吸抑制を解除したい場合に用いられる。なお、モルヒネ依存を形成している慢性中毒患者に麻薬拮抗薬を用いると、禁断症状を誘発する。このことから、モルヒネ依存を形成している慢性中毒患者に対して、麻薬拮抗薬は使用されない。

ナロキソンは、オピオイドμ受容体親和性が高いが、鎮痛作用を全く示さないオピオイド受容体に対する完全拮抗薬として作用する。

 非オピオイド鎮痛薬

1)非ステロイド性抗炎症薬

① アスピリン ② インドメタシン ③ ジクロフェナク ④イブプロフェン ⑤ ロキソプロフェン ⑥ メロキシカム ⑦ セレコキシブ

<作用>
・シクロオキシゲナーゼを阻害し、プロスタグランジンの生成を抑制することによりブラジキニンの感受性を低下させ鎮痛作用を示すと共に抗炎症作用も示す。
・視床下部の体温調節中枢に作用し、解熱作用を示す。

<主な副作用>

胃腸障害、腎障害など

2)アセトアミノフェン

<作用>
・視床下部の体温調節中枢に作用し解熱作用を示す。
・視床と大脳皮質の痛覚閾値を上昇させることにより鎮痛作用を示す。

<主な副作用>
 肝障害、顆粒球減少症、喘息発作など

8 神経障害性疼痛治療薬

① プレガバリン ② ミロガバリン 

<作用>
・カルシウムチャネルのα2βサブユニットに結合し、カルシウムチャネルの細胞表面での発現量およびカルシウムの流入を抑制することにより、興奮性伝達物質(グルタミン酸)の遊離を抑制する。

<主な副作用>
眠気、浮動性めまい、頭痛、浮腫、体重増加、視覚障害など

<補足>
・高頻度にめまい、眠気が認められるため、自動車の運転等に従事させないように注意する必要がある。
・体重増加をきたすことがあるため、肥満に注意する必要がある。
・急激な投与中止により離脱症状が現れることがあるため、減量する際には徐々に投与量を減らす必要がある。

 ◇関連問題◇
第90回問126、第91回問126、第96回問127、第97回問30、第99回問155、第100問29、第101回問156、第103回問160、第104回問30

◇テキスト◇
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