覚えること
- 痛みはまず侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛を区別する。
- オピオイド鎮痛薬はオピオイド受容体に作用し、上行性痛覚伝導路を抑制するとともに、下行性疼痛抑制系を賦活化する。
- オピオイド受容体では、特にμ受容体が強い鎮痛作用に関与する。
- NSAIDsはCOXを阻害し、プロスタグランジン生成を抑制することで鎮痛・抗炎症作用を示す。
- アセトアミノフェンは解熱・鎮痛作用を示すが、抗炎症作用は弱い。
- プレガバリン・ミロガバリンはCa2+チャネルα2δサブユニットに結合し、神経障害性疼痛を改善する。
- 鎮痛薬は薬物名だけでなく、「どの痛みに、どこで作用する薬か」で整理する。
痛みを理解する
痛みは身体に危険を知らせる重要な感覚であるが、過度に持続すると生活の質を低下させ、身体的・精神的な負担となる。
鎮痛薬を理解するためには、最初に「どのような原因で痛みが起こっているのか」を整理することが重要である。
侵害受容性疼痛
侵害受容性疼痛は、組織の損傷や炎症などによって侵害受容器が刺激されることで起こる痛みである。
大きく、体性痛と内臓痛に分けられる。
- 体性痛:皮膚、筋肉、関節などの組織損傷による痛み
- 内臓痛:臓器の炎症、閉塞、圧迫、急激な伸展などによる痛み
ブラジキニンなどの発痛物質や、炎症によって生成されるプロスタグランジンなどが痛みに関与する。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛は、神経そのものが障害されることで生じる痛みである。
代表例として、帯状疱疹後神経痛や糖尿病性末梢神経障害による疼痛などがある。
神経障害性疼痛では、痛覚伝達に関与するCa2+チャネルの異常などによって、神経が過剰に興奮していることが関与すると考えられている。
しもっち侵害受容性疼痛 → NSAIDsやオピオイド
神経障害性疼痛 → プレガバリンなど
痛みの種類が分かれば、治療薬もかなり絞れるよ。
痛みはどのように伝わる?
末梢で発生した痛みの情報は、一次ニューロンから脊髄後角へ伝えられる。
脊髄後角では、グルタミン酸やサブスタンスPなどの興奮性神経伝達物質が放出され、二次ニューロンへ刺激が伝達される。
その後、刺激は視床などを経由して大脳皮質知覚領へ到達し、「痛い」と認識される。
痛みを伝える神経線維
- Aδ線維 → 即時痛
- C線維 → 遅延痛
Aδ線維は鋭く速い痛み、C線維は鈍く持続する痛みを伝える。
上行性痛覚伝導路
痛覚情報を末梢から大脳へ伝える経路を上行性痛覚伝導路という。
二次ニューロンには、新脊髄視床路と旧脊髄視床路がある。
- 新脊髄視床路:脊髄後角 → 視床 → 大脳皮質知覚領
- 旧脊髄視床路:脊髄後角 → 延髄網様体 → 視床 → 大脳皮質知覚領
下行性疼痛抑制系
身体には痛みを伝える経路だけでなく、痛みの伝達を抑える仕組みも存在する。
中脳や延髄などから脊髄後角へ下行する神経系が活性化されると、ノルアドレナリンやセロトニンなどを介して痛覚伝達が抑制される。
この仕組みを下行性疼痛抑制系という。



「痛みを上に伝えない」だけでなく、
「上から痛みを抑える」仕組みもあることを覚えておこう。
上行性痛覚伝導路を抑える+下行性疼痛抑制系を強める
オピオイドやトラマドールを理解するときに重要だよ。
オピオイド鎮痛薬
オピオイド受容体
オピオイド受容体には、μ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)などがある。これらはGiタンパク質共役型受容体である。
特にμ受容体は、モルヒネなどによる強力な鎮痛作用に重要である。
- μ受容体:β-エンドルフィンなど、強い鎮痛作用
- δ受容体:エンケファリンなど
- κ受容体:ダイノルフィンなど
オピオイド受容体刺激後の変化
オピオイド受容体が刺激されると、Giタンパク質を介して神経細胞の興奮が抑えられる。
→Giタンパク質活性化→K+チャネル開口+Ca2+流入抑制
→神経膜の過分極+神経伝達物質の遊離↓
→痛覚伝達を抑制
オピオイドの鎮痛作用
オピオイド鎮痛薬は、主に2つの方向から痛覚伝達を抑制する。
① 上行性痛覚伝導路を抑える
脊髄後角などのオピオイド受容体に作用し、痛覚情報が上位中枢へ伝わるのを抑制する。
② 下行性疼痛抑制系を賦活化する
中脳・延髄などのオピオイド受容体に作用することで、下降性の疼痛抑制系を活性化し、脊髄後角での痛覚伝達を間接的に抑える。



国試では、その先の「上行性痛覚伝導路↓ + 下行性疼痛抑制系↑」まで考えられると強いよ。
モルヒネ
モルヒネは代表的な麻薬性オピオイド鎮痛薬であり、主にμオピオイド受容体を刺激して強力な鎮痛作用を示す。
術後疼痛、がん性疼痛などの強い疼痛に用いられる。
⚫️薬理作用
- 鎮痛:上行性痛覚伝導路抑制+下行性疼痛抑制系賦活化
- 鎮咳:延髄の咳中枢を抑制
- 呼吸抑制:延髄の呼吸中枢を抑制
- 悪心・嘔吐:CTZを刺激
- 縮瞳:動眼神経核を刺激
- 便秘:腸管でACh遊離を抑制
- そう痒感:ヒスタミン遊離などが関与
⚫️中毒
モルヒネの急性中毒では、呼吸抑制が特に重要である。
症例で、呼吸抑制+縮瞳+意識障害などがみられた場合は、オピオイド中毒を疑う。
ナロキソンはオピオイド受容体拮抗薬であり、オピオイドによる急性中毒時の呼吸抑制を改善する。
症例でセット
モルヒネなどのオピオイド+呼吸抑制・縮瞳→ナロキソン
一方、オピオイド依存が形成されている患者にナロキソンを投与すると、離脱症状を誘発することがある。
⚫️代謝
モルヒネは肝臓でグルクロン酸抱合を受け、M-3-GやM-6-Gなどの代謝物を生成する。
- M-3-G:鎮痛作用は弱い
- M-6-G:強い鎮痛作用を有する
腎機能低下患者では代謝物が蓄積しやすいため、モルヒネによる副作用が問題となることがある。
実践問題でも、腎機能低下患者でモルヒネによる副作用が現れた場合に、フェンタニルやオキシコドンへの変更を検討する問題が扱われている。



症例問題では、薬の作用だけでなく患者背景まで見られるよ。
その他の麻薬性オピオイド鎮痛薬
コデイン・ジヒドロコデイン
コデイン、ジヒドロコデインはモルヒネより作用が弱く、主に鎮咳薬として用いられる。
コデインはモルヒネと比較して、鎮痛作用・鎮咳作用・呼吸抑制作用が弱いことが特徴である。
オキシコドン
オキシコドンは主にオピオイド受容体に作用し、強い鎮痛作用を示す。
がん性疼痛などに用いられる。
フェンタニル
フェンタニルはμオピオイド受容体を選択的に刺激する。
モルヒネより非常に強力な鎮痛作用を示し、貼付剤や舌下錠、バッカル錠などさまざまな剤形がある。
フェンタニルはμ受容体に高い親和性を示し、強力な鎮痛作用を示す薬物として整理されている。
レミフェンタニル
レミフェンタニルはμオピオイド受容体を刺激する超短時間作用型オピオイドである。
非特異的エステラーゼによって速やかに代謝されるため、血中半減期が短い。
主に全身麻酔時の鎮痛などに用いられる。
メサドン
メサドンはμオピオイド受容体刺激作用に加えて、NMDA受容体拮抗作用を有する。
他の強オピオイドで十分な効果が得られないがん性疼痛などに用いられる。
タペンタドール
タペンタドールは、μオピオイド受容体刺激作用に加えて、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有する。
この2つの作用によって鎮痛作用を示す。
麻薬拮抗性鎮痛薬
ペンタゾシン
ペンタゾシンは、主にκオピオイド受容体を刺激することで鎮痛作用を示す。
一方で、μ受容体に対して拮抗的に作用する性質を有する。
そのため、モルヒネ依存患者に投与すると、離脱症状を誘発することがある。
また、モルヒネと併用すると、モルヒネの鎮痛作用を弱めることがある。
ブプレノルフィン
ブプレノルフィンはμオピオイド受容体部分刺激薬として作用する。
完全刺激薬であるモルヒネなどと併用すると、その作用に拮抗する方向に働くことがある。



ペンタゾシン → κ刺激+μ拮抗的
ブプレノルフィン → μ部分刺激
モルヒネとの併用や依存患者への投与まで考えよう。
その他の鎮痛薬
トラマドール
トラマドールは、μオピオイド受容体刺激作用に加えて、ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害作用を有する。
μ受容体刺激によって上行性痛覚伝導路を抑制し、NA・5-HT再取り込み阻害によって下行性疼痛抑制系を賦活化する。
セロトニン再取り込み阻害作用を有するため、セロトニン症候群にも注意する。



作用機序からセロトニン症候群までつなげておこう。
非オピオイド鎮痛薬
NSAIDs
NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、プロスタグランジンの生成を抑制する。
プロスタグランジンは、ブラジキニンなどに対する侵害受容器の感受性を高めるため、その生成を抑えることで鎮痛作用を示す。
→プロスタグランジン生成↓
→ブラジキニンなどに対する感受性↓→鎮痛作用
代表薬には、アスピリン、インドメタシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ロキソプロフェン、メロキシカム、セレコキシブなどがある。
主な副作用として、胃腸障害や腎障害などに注意する。
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは、解熱作用と鎮痛作用を示す薬物である。
視床下部の体温調節中枢に作用して解熱作用を示し、中枢における痛覚閾値を上昇させることで鎮痛作用を示す。
一方、抗炎症作用は弱いことが特徴である。
過量投与などでは肝障害に注意する。



NSAIDs → 鎮痛+解熱+抗炎症
アセトアミノフェン → 鎮痛+解熱、抗炎症は弱い
ここは選択肢で入れ替えられやすいよ。
神経障害性疼痛治療薬
プレガバリン・ミロガバリン
プレガバリン、ミロガバリンは、電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニットに結合する。
これによりCa2+流入が抑制され、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離が抑制されることで、神経障害性疼痛を改善する。
→Ca2+流入↓→グルタミン酸などの遊離↓
→神経の過剰な興奮を抑制→神経障害性疼痛を改善
主な副作用として、眠気、浮動性めまい、浮腫、体重増加、視覚障害などに注意する。
特に眠気やめまいが現れることがあるため、自動車運転などには注意が必要である。
また、急激な中止によって離脱症状が現れることがあるため、中止時には徐々に減量する。



作用点はCa2+チャネルのα2δサブユニットです。
ガバペンチンと同じところなので、抗てんかん薬の知識ともつなげよう。
国家試験での狙い目
- Aδ線維 → 即時痛、C線維 → 遅延痛を区別する。
- 脊髄後角 → グルタミン酸・サブスタンスPを押さえる。
- オピオイド受容体=Giタンパク質共役型を押さえる。
- μ受容体 → 強い鎮痛作用を押さえる。
- モルヒネ → μ受容体刺激 → 上行性痛覚伝導路↓+下行性疼痛抑制系↑。
- 呼吸抑制+縮瞳 → オピオイド中毒 → ナロキソン。
- フェンタニル → μ受容体選択的刺激。
- ペンタゾシン → κ刺激+μ拮抗的作用。
- ブプレノルフィン → μ部分刺激薬。
- トラマドール → μ刺激+NA・5-HT再取り込み阻害。
- NSAIDs → COX阻害 → PG生成↓。
- プレガバリン・ミロガバリン → Ca2+チャネルα2δ。



末梢の炎症を抑える → NSAIDs
中枢で痛覚伝達を抑える → オピオイド
下行性疼痛抑制系を強める → トラマドールなど
異常に興奮した神経を抑える → プレガバリン
薬物名を覚える前に、この位置関係を作っておくと問題がかなり解きやすくなるよ。
1問1答で確認しよう
Q1.即時痛を伝える神経線維は?
→ Aδ線維。
Q2.遅延痛を伝える神経線維は?
→ C線維。
Q3.モルヒネが主に刺激するオピオイド受容体は?
→ μ受容体。
Q4.オピオイド受容体に共役するGタンパク質は?
→ Giタンパク質。
Q5.モルヒネ急性中毒による呼吸抑制に用いる薬は?
→ ナロキソン。
Q6.ペンタゾシンが主に刺激する受容体は?
→ κオピオイド受容体。
Q7.トラマドールの2つの主な作用は?
→ μ受容体刺激、NA・5-HT再取り込み阻害。
Q8.NSAIDsの作用点は?
→ シクロオキシゲナーゼ(COX)。
Q9.プレガバリンが結合する部位は?
→ 電位依存性Ca2+チャネルα2δサブユニット。
Q10.帯状疱疹後神経痛は、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛のどちら?
→ 神経障害性疼痛。



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