薬剤師国家試験出題項目

赤外吸収スペクトル測定法

赤外吸収スペクトル測定法は、赤外線(波長:2.5〜25 µm)の吸収により分子振動が変化することを利用し、有機化合物の構造に関する情報や生体高分子(タンパク質など)の構造に関する情報を得ることができる。

1 分子の振動

<水の振動>
 水分子は、2個の水素と1個の酸素で構成されていることから、原子核が3つ存在する。原子核はそれぞれ3つの座標(x、y、z座標)を自由に運動することができるため、水の空間運動は、9個の座標で表すことができる。ただ、この中には分子の構造が変化しない3つの並進運動と3つの回転運動が含まれているため、水の振動運動は3種類存在することとなる。

これらは、全対称伸縮振動、逆対称伸縮振動、変角振動とよばれ、この3つの振動のように、分子内の原子核の振動を互いに独立の振動様式で表したものを基準振動という。

2 赤外吸収(IR)の原理

分子に赤外線領域(波長:2.5〜25 µm)の電磁波を照射すると、その照射された電磁波のエネルギーが振動エネルギーに一致すると振動が励起される。分子振動の励起に必要なエネルギーは分子の化学構造に依存することから、吸収された電磁波のエネルギー量より、その結合の種類を知ることができる。赤外吸収現象はすべての物質によって認められることはなく、分子振動により双極子モーメントに変化が生じるものだけが赤外活性となり赤外線吸収が認められる。

全対称伸縮振動では、伸縮振動により双極子モーメントは変化しないため、赤外線の吸収が認められないが、逆対称伸縮振動、変角振動では双極子モーメントが変化するため、赤外線の吸収が認められる。

3 赤外吸収(IR)スペクトルの解析

分子の振動数については、フックの法則により考えることができる。

分子中の質量m1と質量m2の原子がバネ定数kのバネでつながっている場合、分子の振動数νは下記の式で表される。

化学結合の強度はバネ定数kに反映されることから、化学結合が強い場合、振動数が大きくなる傾向にある。例えば、炭素−炭素間の結合においては、エタン<エチレン<アセチレンの順に伸縮振動の波数が増加する。また、C、N、Oなどの原子は質量が近い値を示し、結合次数が同じであればバネ定数の値も近い値を示すため、波数も近くなる。このことから、原子の種類によらず、伸縮振動の波数から多重結合の存在を大まかに知ることができる。
一方、Hを含む結合については、Hは質量数が小さいため、バネ定数が同じ場合でも波数は大きくなる。

・グループ振動(特性振動)
 ある官能基特有の振動をグループ振動(特性振動)といい、その赤外吸収を特性吸収という。グループ振動は分子の種類によらず一定の範囲内にあることから、化合物の構造解析を行うにあたり、有用な情報を与える。

・指紋領域

分子内には、C-C、C-N、C-Oのように同じような質量をもつ原子同士が単結合でつながっている部分が多く存在し、それぞれの化学結合に由来する振動は互いに影響しあうため、振動ピークは個々の官能基に帰属できない。単結合の伸縮振動や変角振動が観測される1500〜600 cm-1の波数領域は、分子ごとで異なるパターンを示すため、指紋領域といわれ、物質の確認試験に用いられている。

◇関連問題◇
第101回問203、第101回問213

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