薬剤師国家試験出題項目

試料前処理

生体由来の試料には、様々な性質を示す物質が混合されており、その中から特定の物質の分析を行うには、前処理が必要である。

1 代表的な前処理法

)溶媒抽出法 

 溶媒抽出法とは、互いに混じり合わない2種類の液体を用いて、物質を分離する方法である。本法は、主に低分子有機化合物の分離に用いられる。本法の手順を以下に示す。

・手順1
互いに混じり合わない2種類の液体を混合する。本法では、水と極性の低い液体(ジエチルエーテル、クロロホルム、ブタノールなど)が用いられる。

・手順2
手順1で準備した混合液に試料溶液を加えて十分に振る。

・手順3
その後、静置して上層と下層に分離させ、目的とする物質をいずれかの層に濃縮する。

<抽出効率を上げる方法>
解離基を持つ物質の場合、水のpHを変化させ、分子形分率を増大させることにより抽出効率を上げることができる。例えば、弱酸性物質を分離する場合には、溶液のpHを低下させ、分子形分率を増大させておくと、効率よく有機溶媒層に濃縮することができる。

また、抽出効率を上げる方法に、塩析を利用する方法がある。塩析を利用する方法では、試料を含む水に飽和濃度まで無機塩類(塩化ナトリウムなど)を添加しておき、有機溶媒により抽出を行う。
水に飽和濃度まで無機塩類を添加することにより水和された対象物質分子から水分子が奪われ、対象物質の有機溶媒への移行率が向上するため、効率よく有機溶媒層に濃縮することができる。

2)固相抽出法 

 固相抽出法は、溶媒抽出法とは異なり、固相を用いて分析対象物質の濃縮、夾雑物質の除去などを行う方法の総称である。本法では、固相として、順相クロマトグラフィー用吸着剤(シリカゲル、アルミナなど)や逆相クロマトグラフィー用充填剤(オクタデシルシリル化シリカゲルなど)が用いられる。本法の手順を以下に示す。

・手順1
固相を有機溶媒で洗浄し、さらに同量の水で洗浄し、固相の状態を整える(コンディショニング)。
・手順2
試料水溶液を固相に通し、水または希薄な有機溶媒で洗浄し、夾雑物の除去を行う。
・手順3
固定相に保持された分析対象物を有機溶媒を用いて溶離させる。

<固相抽出法と溶媒抽出法の比較>
固相抽出法の方が操作が簡便であり、抽出効率がよい。また、使用する有機溶媒の量が少なく環境にやさしい。

3)除タンパク法 

 除タンパク法では、生体試料よりタンパク質を除去することができる。本法にはタンパク質の不溶化する方法(酸変性法、有機溶媒変性法)と分子の大きさを利用した物理的な方法(ゲル濾過法、限外濾過法)に分類される。

①:酸変性法
酸変性法は、試料をトリクロロ酢酸や過塩素酸などのかさ高い酸にさらし、タンパク質を変性させて不溶化させ、遠心分離により沈殿物としてタンパク質を除去する方法である。酸変性法で用いられる酸は、タンパク質の変性を効率よく行うことができるかさ高い酸であり、塩酸、硝酸、硫酸などは用いられない。

②:有機溶媒変性法
有機溶媒変性法は、試料水溶液に水になじむ有機溶媒(アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノールなど)を添加し、タンパク質を変性させて不溶化させる方法である。有機溶媒変性法で用いられる有機溶媒は、水になじむ有機溶媒であり、無極性の有機溶媒(ベンゼン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタンなど)は用いられない。

無極性の有機溶媒は水と均一に混合せず二相になり、タンパク質とほとんど接触することができないため有機溶媒変性法に適していない。

③:ゲル濾過法、限外濾過法
ゲル濾過法や限外濾過法では、低分子は通過するが、高分子が通過できないゲルや限外濾過膜を用いて低分子分析対象物と高分子のタンパク質を分離する方法である。

◇関連問題◇

第97回問98、第100回問23

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