触媒反応

触媒反応

1 触媒

反応中にある物質を加えることで、反応が早くなることがある。例えば、N2とH2を混合し、加熱してもほとんどアンモニアNH3は生成されないが、酸化鉄を加えることにより、アンモニア生成されやすくなる。酸化鉄のようにそれ自身は化学変化を受けないが、反応を促進させる物質を触媒という。触媒が反応を促進させる理由については、触媒が活性化エネルギーを低下させるためである。

なお、触媒は活性化エネルギーを低下させ、反応を促進させるが、反応熱を変化させないため、反応による熱の出入り(吸熱、発熱)には影響を与えない。


2 特殊酸塩基触媒(pH)

 反応によっては、[H]や[OH]が触媒となり、反応のしやすさ(反応性)に影響を与える場合がある。このように[H]や[OH]が触媒作用を示す場合、[H]を特殊酸触媒、[OH]を特殊塩基触媒という。

k=kH[H]+kOH[OH

kHは水素イオンの触媒定数、kOH:水酸化物イオンの触媒定数

<特殊酸触媒[H]が反応性に影響を与える場合>
[H] により反応性が変化する場合、速度定数の式はk=kH[H]で表される。pHと[H]の関係については、[H]=10pHであることから、pHが1低下するごとに[H]が10倍になる。これらのことから、[H] により反応性が変化する場合については、pHが1低下するごとに速度定数が10倍になる(速度定数の常用対数は1ずつ増加する)。

<特殊塩基触媒[OH]が反応性に影響を与える場合>
 [OH] により反応性が変化する場合、速度定数の式は、k=kOH[OH]で表される。pHの増加に伴って、[OH]が増加し、それによりkも増加する。

<[H]、[OH]が反応性に影響を与える場合>
速度定数の式については、k=kH[H]+kOH[OH]で表される。
酸性(pHが低い)側では、[H]≫[OH]であることから、速度定数kは主に[H]の影響を受け変化し、アルカリ性(pHが高い)側では、[H]≪[OH]であることから、速度定数kは主に[OH]の影響を受け変化する。

なお、[H]、[OH]の両方に反応性が影響を受ける場合については、一般に中性付近でkの値が最小値を示すことから、中性付近のpHで最も安定である。


3 一般酸塩基触媒

酸や塩基として加えた化合物が反応性に影響を与える場合がある。この場合における酸や塩基については、特殊酸触媒、特殊塩基触媒と区別するために一般酸触媒、一般塩基触媒といわれる。
例えば、ある反応に酢酸を加えると、速度定数が大きくなることがある。この場合、酢酸は一般酸触媒として作用している。


4 酵素反応

 酵素とは、触媒作用を有するタンパク質のことであり、生体内の反応を加速させる。酵素は、以下に示す特徴を有していることから、優れた触媒作用を示す。
①:基質特異性を有する(ある特定の物質のみに作用する)。
②:反応特異性を有する(ある特定の生成物を与える)。
③:温和な条件で高い活性を示す。

酵素反応の速さについては、ミカエリス−メンテン機構より詳細を知ることができる。ミカエリス−メンテン機構では、第一段階で酵素Eと基質Sが結合した酵素−基質複合体ESが生成し、その後、第二段階で複合体から生成物Pができ、酵素Eが遊離する。

上記のように酵素反応は2段階反応であり、その反応速度はミカエリス−メンテン式により表される。

ただし、Vmaxを最大消失速度、Kmをミカエリス定数とする。ミカエリス定数Kmは、酵素と基質の親和性を示しており、ミカエリス定数Kmが大きい場合は、酵素と基質の親和性が低く、ミカエリス定数Kmが小さい場合は酵素と基質の親和性が高い。
ミカエリス−メンテン式をもとに反応速度vと基質の濃度[S]の関係をプロットすると、下記のようなグラフが得られる。

グラフからわかるようにミカエリス定数に比べ基質の濃度が低い([S]≪Km)場合、反応速度は基質の濃度に比例して大きくなっていることから、1次反応速度式に従って反応が進行している。一方、ミカエリス定数に比べ基質の濃度が高い([S]≫Km)場合、反応速度は基質の濃度に無関係であることから、0次反応速度式に従って反応が進行している。また、[S]=Kmのとき、v=Vmax/2となることから、ミカエリス定数Kmは、最大速度の半分の反応速度になる基質濃度と同じ値を示す。

) ミカエリス定数、最大速度の測定

 ミカエリス定数Km、最大速度Vmaxは、ミカエリス−メンテン式により酵素反応を評価するにあたって重要なパラメータである。
ミカエリス定数Km、最大速度Vmaxについては、ラインウィーバー・バーグプロットを用いることで正確に求めることができる。ミカエリス−メンテン式の両辺に逆数をとると、下記の式(ラインウィーバー・バーグ式)が得られる。

この式をもとにグラフを作成すると、ラインウィーバー・バーグプロットが得られ、縦軸切片が1/Vmax、横軸切片が-1/Kmとなり、縦軸切片よりVmaxが得られ、横軸切片からKmが得られる。また、傾きがKm /Vmaxであることから、傾きよりKm とVmaxの比を求めることができる。

2) 酵素阻害反応(競合的阻害、非競合的阻害)

酵素反応が非可逆的に抑制される現象を失活といい、酵素反応が可逆的に抑制される現象を阻害という。阻害には、競合(拮抗)阻害、非競合(非拮抗)阻害があり、阻害現象を引きこす物質を阻害剤という。

①:競合(拮抗)阻害
基質と同一の部位に結合する阻害剤により認められる現象。
阻害剤が基質と同一の部位に結合することにより、基質が酵素に結合しにくくなり、反応が抑制される。

競合(拮抗)阻害では、阻害剤を添加することで、Vmax/2に到達する基質の濃度(Km)は増加するが、基質の濃度の増加と共に阻害剤の影響が小さくなる(ほぼ無視できる状態になる)ため、Vmaxは変化しない。

②:非競合(拮抗)阻害
基質と異なる部位に結合する阻害剤により認められる現象。
酵素及び基質−酵素複合体において、阻害剤が基質と異なる部位に結合し、酵素の活性が低下することにより、反応が抑制される。

非競合(拮抗)阻害では、阻害剤を添加することで酵素活性が低下するため、Vmaxが変化するが、Vmax/2に到達する基質の濃度(Km)は変化しない。

Vmaxは低下するため、1/Vmaxは増加し、Km変化しないため、-1/Kmも変化しない。