表皮は、皮膚の最外層を構成する組織であり、体を外界から保護する重要なバリアとして機能する。主に角化細胞(ケラチノサイト)から成り、物理的、化学的、微生物的な侵入から体を守るほか、水分の蒸発を防ぐ役割も果たしている。

表皮の構造
表皮は、基底層から角質層までの層状構造を持ち、それぞれ異なる役割を果たしている。以下の5つの層(内側から外側)で構成される:
- 基底層(Stratum Basale)
- 表皮の最下層で、真皮と接している。
- 基底細胞が存在し、活発に分裂して新しい角化細胞を生み出す。
- メラノサイト(メラニン色素を産生する細胞)やメルケル細胞(触覚を担う感覚細胞)もここに存在する。
- 有棘層(Stratum Spinosum)
- 複数層の多角形の細胞から成る。
- 角化細胞同士がデスモソームによって密接に結合しており、強度を与える。
- ランゲルハンス細胞(免疫応答に関与)も存在する。
- 顆粒層(Stratum Granulosum)
- 淡明層(Stratum Lucidum)(※主に手のひらや足の裏などの厚い皮膚に存在)
- 透明な層で、死んだ角化細胞が詰まっている。
- 強い物理的ストレスに耐えるための役割を持つ。
- 角質層(Stratum Corneum)
- 最外層で、完全に角化した死細胞(角質細胞)が積層している。
- 細胞間脂質がバリア機能を高め、水分の蒸発を防ぐ。
- 最終的に垢(剥がれ落ちた角質細胞)となり、常に更新される。
表皮の特徴
- 血管が存在しない
- 表皮には血管が存在せず、真皮からの拡散によって栄養や酸素を得る。
- 細胞の分化とターンオーバー
- 表皮の細胞は基底層で生成され、有棘層、顆粒層、角質層へと移動しながら分化し、最終的に剥がれ落ちる。
- 健康な皮膚では、ターンオーバー(約28日周期)が維持される。
- 特殊細胞の存在
- メラノサイト: 紫外線からDNAを保護するためにメラニンを産生。
- ランゲルハンス細胞: 異物を認識し、免疫系を活性化する。
- メルケル細胞: 触覚の受容体として機能。
表皮の機能
- バリア機能
- 物理的バリア: 外部からの機械的損傷を防ぐ。
- 化学的バリア: 酸性の皮脂膜や細胞間脂質が、病原体や有害物質の侵入を防ぐ。
- 微生物的バリア: 表皮に生息する常在菌が、病原菌の繁殖を抑制。
- 水分保持
- 角質層と細胞間脂質により、体内の水分の蒸発を防ぎ、乾燥を防ぐ。
- 免疫機能
- ランゲルハンス細胞が外来の抗原を認識し、免疫応答を活性化する。
- 紫外線防御
- メラノサイトが産生するメラニンが、紫外線を吸収・分散させてDNA損傷を防ぐ。
- 感覚機能
- メルケル細胞や真皮との連携により、触覚や圧覚を感知する。
関連疾患や異常
- アトピー性皮膚炎
- 表皮のバリア機能の低下により、外部刺激やアレルゲンが侵入しやすくなる。
- 乾癬(かんせん)
- 表皮のターンオーバーが異常に早くなることで、角質層が厚くなる疾患。
- 白斑(はくはん)
- メラノサイトの減少や機能低下によってメラニンが生成されず、皮膚が部分的に白くなる。
- 表皮剥離症
- 表皮が真皮から剥離しやすくなる遺伝性疾患。
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