薬剤師国家試験出題項目

血液生理化学検査

1 血清タンパク質

1)総タンパク質

総タンパク質とは、血清に含まれているタンパク質の総量を表したものであり、その内の60〜70%はアルブミン、20%が免疫グロブリン(IgA、IgM、IgG)である。血清タンパク質のほとんどが肝臓で合成されるため、肝障害がある時、総タンパク質が減少する。

2)アルブミン

アルブミン(分子量:約67,000)は、肝臓で生合成されるタンパク質であり、血漿浸透圧を維持や血中のさまざまな物質の運搬を行う。

3)アルブミン/グロブリン比(A/G比)

血清総タンパク質の組成を表す指標としてアルブミン/グロブリン比(A/G比)が用いられる。A /G比を用いることで、血清総タンパク質が正常範囲である場合(アルブミンが低下し、グロブリンが増加している場合)の肝障害などの診断が可能となる。

4)プレアルブミン(トランスサイレチン)

プレアルブミン(トランスサイレチン)は、肝臓で生合成されるタンパク質で、血液中においてチロキシンとレチノールの運搬に関与している。半減期が短いため、栄養状態の変動が速やかに反映されることから、手術後の患者や乳幼児の栄養管理に利用される。

5)フィッシャー比

フィッシャー比とは、分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)と芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン)の比である。分岐鎖アミノ酸は筋肉、脳、肝臓で代謝され、芳香族アミノ酸は、主に肝臓で代謝されることから、肝機能が低下した状態ではフィッシャー比は低下する。

2 血清酵素

1)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)

 AST、ALTは共に細胞質の可溶性画分に存在しており、組織障害により血中に漏出する。ASTは、心筋>肝>骨格筋に多く存在するため、心筋梗塞、肝障害に診断に有用であり、ALTは、主に肝臓に存在するため、肝・胆道系疾患の診断に有用である。また、これらは病態が異なるとその上昇の度合いも異なるため、AST/ALT比も重要視されている。肝疾患において急性期ではAST>ALTとなるが、極期以降ではAST<ALTとなる。また、心筋梗塞では主にASTが増加傾向を示す。

2)アルカリホスファターゼ(ALP)

 アルカリホスファターゼは、リン酸エステルを加水分解する酵素で、多くの臓器に存在しているが、その中でも骨、胎盤、肝臓、小腸上皮に多く存在している。骨から流出するため、骨疾患で高値を示すことがあり、また、肝臓で生合成されるため、肝・胆道系疾患で高値を示すことがある。

3)γ–グルタミルトランスペプチダーゼ(γ–GTP)

γ–グルタミルトランスペプチダーゼは、グルタチオンのγ–グルタミル基をアミノ酸やペプチドに転移する酵素であり、腎臓≫膵臓>肝臓>脾臓の順に多く存在する。γ–GTPは閉塞性黄疸や肝細胞障害、肝癌やアルコール性肝障害で上昇しやすい。γ–GTPは肝・胆道系疾患においてALPやLAPに先行して異常値を示す傾向がある。

4)乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)

 乳酸デヒドロゲナーゼは、ピルビン酸とNADHからL–乳酸とNADを生成する反応に関わる酵素であり、全身の組織に分布している。LDHには5つのアイソザイムがあり、組織ごとで分布に違いがあるため、異常アイソザイムのパターンにより病変部位を推定することが可能である。

5)コリンエステラーゼ(ChE)

 コリンエステラーゼは、コリンエステル類を加水分解する酵素であり、アセチルコリンを分解する酵素とアセチルコリンのみでなくアシルコリンも幅広く分解する酵素の2種類がある。前者をアセチルコリンエステラーゼ(AChE)といい、後者を偽性コリンエステラーゼ(偽性ChE)という。赤血球、骨格筋、神経組織には、AChEが多く、肝臓や肺にはAChEと偽性ChEが含まれている。

6)アミラーゼ

 アミラーゼは、主に膵臓と唾液腺に含まれているデンプンを加水分解する酵素である。高アミラーゼ血症の場合は、膵型(P型)、唾液腺型(S型)のいずれによる増加であるかを明らかにすることで膵臓疾患と他の疾患を鑑別することができる。

7)クレアチンキナーゼ

クレアチンキナーゼ(CK)は、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)とも言われ、CK–MM、CK–MB、CK−BBの3種類にアイソザイムが存在する。

3 代謝

1)脂質代謝

(1)トリグリセリド(TG、中性脂肪)
 TGは、3価のアルコールにグリセロール分子の脂肪酸がエステル結合したもので、食事から得られる脂質の大部分を占める。脂肪組織や肝臓に蓄えられ、必要に応じて分解され生体内で利用される。

(2)総コレステロール(TC、T-Cho)
 TCとは、血中に含まれるコレステロールの濃度を表したものであり、下記の式より算出することができる。

TC=LDL+HDL+(TG÷5)

(3)HDLコレステロール(HDL–C)
 HDL–Cは、コレステロール逆転送経路(末梢からコレステロールを取り出し、肝臓を介して腸管に排泄させる経路)に関わるコレステロールである。HDL–Cが40mg /dL未満になると、動脈硬化が発症しやすくなる。

(4)LDLコレステロール(LDL–C)
 LDL−Cは、肝臓で生合成されたVLDLから代謝され生成されるコレステロールであり、血液中で生成されたLDL−Cは最終的に末梢でLDL受容体を介して細胞内に取り込まれる。基準値は、65〜139mg/dLであり、140mg /dL以上を高LDLコレステロール血症という。

2)糖代謝

(1)血糖
 血糖とは、血液中に含まれるブドウ糖のことである。血糖は、膵臓から分泌されるインスリンやグルカゴン、甲状腺ホルモンなどにより一定に保たれている。

(2)グリコヘモグロビン(HbA1c)
 グリコヘモグロビンは、ヘモグロビンにブドウ糖が非酵素的に結合したものであり、糖化ヘモグロビンとも呼ばれる。基準値は、4.6〜6.2%(NGSP値)であり、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映するため、糖尿病における血糖コントロールの判定に用いられる。

 (3)C–ペプチド(CPR)
 C−ペプチドは、膵臓のβ細胞においてプロインスリンからインスリンが生成する際にできるタンパク質のことである。プロインスリンからインスリンが生成される際にインスリンとC−ペプチドは1:1で産生されることから、インスリンの分泌能を測定する際に用いられる。

3)尿酸

 尿酸は、プリン体の最終代謝物であり、主として尿中に排泄される。pH7.4における尿酸の溶解度は6.4mg/dLであることから、血中の尿酸値が6.4mg/dL以上になると組織沈着を起こしやすくなる。尿酸が過飽和状態となり組織沈着すると、激しい痛みを伴う痛風発作や腎障害、尿路結石を誘発することがある。

4)ビリルビン

 総ビリルビンとは、直接ビリルビンと間接ビリルビンの総和である。直接ビリルビンは、肝臓でグルクロン抱合を受けたビリルビンであり、間接ビリルビンは網内系で赤血球が破壊されて血液中に放出されたビリルビンである。溶血性貧血などによりビリルビンの生成が亢進したり、肝臓での抱合以前の処理過程に異常がある場合には、間接型ビリルビンが上昇し、直接型に変換後、毛細胆管への輸送が障害されたり、肝外胆道における通過障害がある場合には、直接型ビリルビンが優位に上昇する。

4 鉄代謝

1)血清フェリチン(FRTN、ft)

 フェリチンとは、血液から供給されたFe3とアポフェリチンが結合した可溶性の鉄貯蔵タンパク質のことである。フェリチンの機能は、鉄の貯蔵と細胞内鉄の毒性軽減であり、血清中に微量に存在することから、血清フェリチンとして測定することが可能である。血清フェリチンは、体内貯蔵鉄量を反映するため、鉄欠乏、鉄過剰の診断に用いられる。基準値は、男性20〜280ng/mL、女性5〜157ng/mLである。

2)血清鉄(Fe)

 鉄は酸素の運搬や代謝反応に利用される。生体内には約4gの鉄が存在しており、その3分の2がヘモグロビンに、残り3分の1がフェリチン、ヘモシデリンの形で貯蔵されている。

3)トランスフェリン(Tf)

 トランスフェリンとは、血液中における鉄の輸送体のことである。トランスフェリンが関わるものとして、総鉄結合能(TIBC:全てのトランスフェリンに結合できる鉄の量)、不飽和鉄結合能(UIBC:TIBCと血清鉄の差)がある。総鉄結合能は、鉄代謝に異常をきたす疾患や病態の変化を反映するため、その測定は、血清鉄の測定と合わせて血液疾患、肝臓疾患、腫瘍性疾患、炎症などの診断、治療方針の決定や予後判定に有用である。

5 電解質

1)血清ナトリウム(Na)

ナトリウムは血清電解質の1つであり、細胞外液に豊富に存在する。血清ナトリウムは、血漿浸透圧の調節に関与しており、血清ナトリウム値の異常は、浮腫、嘔吐、下痢を引き起こす。

2)血清カリウム(K)

カリウムはナトリウムと同様に血清電解質の1つであり、細胞内液に豊富に存在する。血清カリウムは、細胞の機能や神経、筋肉の興奮に関与している。重度の高K血症では、心毒性による心肺停止が生じることがある。

3)血清マグネシウム(Mg)

4)血清カルシウム(Ca)

 カルシウムは、生体内に最も多く存在する無機質で、99%が骨、歯に存在し、残り1%が細胞内に存在する。カルシウムは、リン酸とともにヒドロキシアパタイトを形成して骨格を維持することに加え、血液凝固や酵素の活性化、筋収縮に重要な役割を果たす。血清カルシウム濃度が高値を示す時、神経・筋症状(筋力低下など)、精神症状(傾眠)、消化器症状(悪心・嘔吐、便秘など)、腎・尿路障害が出現する。また、血清カルシウム濃度が低値を示す時、神経・筋症状(しびれ、痙攣など)、精神症状(抑うつ、不眠など)が出現する。

5)血清リン(P)

 リンは、カルシウムについで生体内に多く存在する無機質で、ほとんどが骨に存在し、細胞外液に比べ細胞内液に多く存在する。リンは腎臓で排泄されるため、腎不全で高値を示す。

6)陰イオンギャップ

 細胞外液中の陽イオンと陰イオンの合計量は等しく、電気的に中性に保たれている。酸・塩基平衡は、Na、Cl、HCO3によって調節されており、体液中の陽イオンと陰イオンの総電荷は常に同数であることから、以下の式が成立する。
[Na]+[未測定陽イオン]=([Cl]+[HCO3])+[未測定陰イオン]
上記の式を既知イオンと未測定イオンに分け、未測定イオンを陰イオンギャップ(AG)とすると、下記の式が成立する。
[Na]-([Cl]+[HCO3])=[未測定陰イオン]-[未測定陽イオン]
AG=[Na]-([Cl]+[HCO3])

6 窒素化合物

1)血清クレアチニン(SCr)

クレアチニンは、筋肉の収縮に必要なクレアチンの最終産物であり、筋細胞内で産生される。クレアチニンは、代謝を受けることなく、糸球体から濾過されることで体内から消失するため、そのクリアランスは糸球体濾過量の指標(腎機能の指標)として用いられている。クレアチニンクリアランスは、血清クレアチニン濃度よりCockcroft−Gault式を用いて算出することが可能である。

2)血中尿素窒素(BUN)

 尿素は摂取したタンパク質や組織が分解される際に生じる最終代謝産物であり、糸球体濾過を受けたあと、その半分が尿細管で再吸収され、残りの半分が尿中に排泄される。血中尿素窒素は、血液中に含まれる窒素を測定したものである。

3)アンモニア(NH3

 アンモニアは、アミノ酸の代謝産物であり、食物中のタンパク質や消化液中に含まれる尿素が腸内細菌によって分解されて生じる。肝機能の低下によりアンモニアが分解されないと、肝性脳症を誘発することがある。

7 内分泌検査

1)下垂体機能検査

 成長ホルモン(GH)は、下垂体前葉ホルモンであり、その分泌は視床下部ホルモンである成長ホルモン放出ホルモン(GRH)、成長ホルモン放出抑制ホルモン(ソマトスタチン)によって分泌調節されている。GH過剰、欠乏による疾患の診断には、GH分泌刺激試験(インスリン負荷試験、アルギニン負荷試験、グルカゴン負荷試験、GRH負荷試験など)、GH分泌抑制試験(経口糖負荷試験、ブロモクリプチン負荷試験など)が行われる。

2)甲状腺機能検査

 甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、下垂体前葉ホルモンであり、その分泌は視床下部ホルモンである甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)により調節されている。視床下部−下垂体−甲状腺系における機能障害の部位を推定する目的で、TRH負荷試験を行う。では、TRH負荷の結果、TSHが無〜低反応である場合には、下垂体性甲状腺機能低下症と診断される。

3)副甲状腺機能検査

 副甲状腺ホルモンであるパラトルモンの測定だけでは、副甲状腺の機能を評価することができないため、副甲状腺の機能を評価する際には、血中カルシウム・リン、尿中カルシウム・リン、血中パラトルモンの量、尿細管リン再吸収率など様々な機能検査が行われる。

4)GnRH負荷試験

黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌は、GnRHにより制御されている。GnRH負荷試験は、性腺機能低下症の原因を調べるために行われる検査で、GnRHを静注後、LHとFSHの濃度を測定する。LH、FSHが高値を示す疾患として、原発性性腺機能低下症、ターナー症候群、閉経、真性性早熟症などがあり、低値を示す疾患として、下垂体機能低下症や高プロラクチン血症がある。 

5)BNP

 ナトリウム利尿ペプチドには、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)、CNP(C-タイプナトリウム利尿ペプチド)の3種類が同定されている。ヒトでは、ANPは心房で生合成・分泌され、BNPは、心室で生合成・分泌されることから、心房負荷を起こす心疾患では、ANPが増加し、心室負荷を起こす疾患ではBNPが増加する。BNPが増加する疾患に心不全や急性心筋梗塞、原発性肺高血圧症がある。

 

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