薬剤師国家試験出題項目

蛍光光度法

蛍光光度法は、蛍光(りん光)発光する物質を用いて、生体成分や医薬品などを分析する方法であり、生体内の目的分子の分布や動態を可視化するイメージングにも有用である。

1 蛍光(りん光)

 物質が光を吸収し、励起状態に到達したあと、基底状態に戻る際、光を放出する現象を「ホトルミネセンス」という。ホトルミネセンスのうち、発光寿命の短い光を「蛍光」、発光寿命の長い光を「りん光」という。

S0:基底一重項状態、S1,2:励起一重項状態、T1,2:励起三重項状態
①:光の吸収、②:内部変換(無放射遷移)、③:項間交差、
④:蛍光、⑤:りん光、⑥:振動緩和

●蛍光について
 光の吸収が起こり、基底状態の電子対が電子遷移を起こす際、電子スピンの向きは変化せず、互いに逆向きの状態であることから、スピン量子数の総和は0となる(1/2-1/2=0)。このことから、この状態における多重度は1となり(2×スピン量子数の総和+1=1)、この状態を励起一重項状態(S1,2)という。高い励起状態(S2)にあるものは、振動緩和などの熱放出により最低励起状態(S1)となり、S1からS0になる際、発光寿命の短い蛍光が認められる。

●りん光について
励起一重項状態から、エネルギーが降下する際、稀に三重項状態への遷移が認められることがある。
この現象を項間交差という。三重項状態とは、電子スピンが互いに平行にある状態のことであり、スピン量子数の総和は1となる(1/2+1/2=1)ことから、この状態における多重度は3となる(2×スピン量子数の総和+1=3)。
T1とS0は多重度が異なることから、エネルギーの降下がゆっくり進行する。そのため、T1からS0になる際、発光寿命の長いりん光が認められる。

●励起光、蛍光、りん光のエネルギー、波長について
 蛍光(りん光)発光現象により放出されるエネルギーは、励起エネルギーとして与えられたものより発熱などにより失った分だけ小さくなるため、励起光と蛍光(りん光)のエネルギーの大小関係は、励起光>蛍光>りん光となる。
また、蛍光(りん光)のエネルギーは、励起光のエネルギーより小さいため、蛍光(りん光)の波長は、励起光の波長よりも長くなる(波長:りん光>蛍光>励起光)。このように、蛍光の波長は、励起光の波長よりも長くなることをストークスの法則といい、励起光の波長と蛍光の波長の差をストークスシフトという。

2 蛍光測定

 蛍光光度法による蛍光およびりん光の測定には、蛍光分光光度計が用いられる。蛍光分光光度計は、光源、励起側分光器、セル、蛍光側分光器により構成されている。

<注意>
試料セルを通過した励起光の影響を防ぐために、励起光の進行方向に対して直角方向に蛍光検出器を配置する。

<散乱光について>
試料に光を照射するとラマン散乱光やレイリー散乱光が認められることがある。そのため、蛍光測定の際にラマン散乱光およびレイリー散乱光が観測されることがある。

3 蛍光強度

希薄溶液において蛍光強度Fは、励起光の強さI0、蛍光量子収率φ、モル吸光係数ε、溶液の濃度c、セルの層長lに比例する。

<参考:蛍光量子収率φ>
蛍光量子収率φとは、吸収した励起光量子の数に対する発光した蛍光量子の数のことであり、下記の式で表される。

蛍光物質を多く含む試料については、濃度に比例して蛍光発光現象が認められなくなる。この現象を濃度消光という。温度が高い試料、異物(クエンチャー)を含む試料においては、蛍光強度が低下する。

4 励起スペクトル、蛍光スペクトル

蛍光光度計では、試料に照射する励起光の波長及び測定する蛍光の波長を選択することができるため、2種類のスペクトルを得ることができる。励起光の波長を変化させながら、ある波長での蛍光の強度を測定すると「励起スペクトル」が得られ、蛍光の波長を変化させながら、ある波長での蛍光の強度を測定すると「蛍光スペクトル」が得られる。

蛍光現象のメカニズムでは、理論的に励起スペクトルと蛍光スペクトルは鏡像関係にあるとされている。

◇関連問題◇
第97回問99、第101回問99

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