薬剤師国家試験出題項目

薬物代謝酵素と反応様式

1 代謝

代謝とは、代謝酵素により薬物の化学構造が変化することであり、一般に脂溶性の高い薬物は、代謝酵素により水溶性が高くなり、排泄されやすくなる。

2 代謝反応が起こる組織

薬物代謝酵素は、多くの臓器(肝臓、腎臓、肺、小腸など)に存在しており、その中でも、代謝酵素の多様性、存在量、 臓器の大きさから最も重要な薬物代謝臓器は肝臓であるといえる。肝臓には第I相反応(酸化、還元、加水分解)、第Ⅱ相反応(抱合反応)に関わる代謝酵素が存在しているとともに多くのトランスポーターが発現しており、薬物を胆汁中に排泄している。
また、肝臓以外では、小腸が重要な代謝臓器となっている。小腸には、CYP3A4が存在しており、グレープフルーツジュースにより小腸のCYP3A4が阻害されると、CYP3A4の基質となる薬物の体内移行率が増大する。

3 代表的な薬物代謝酵素と反応様式

生体内における薬物代謝は第Ⅰ相反応と第Ⅱ相反応の2段階で行われており、この2段階反応により、脂溶性薬物の化学構造が変化し、水溶性が高くなり排泄されやすくなる。

1)第I相反応

第I相反応では、酸化、還元、加水分解により、官能基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基など)を形成させ、極性を増大させる。極性基が形成されることにより、多くの場合、薬物の作用部位への結合活性が失われ、薬効が消失する。ただ、薬物によっては、代謝により作用部位への親和性が高まり薬効が増大する場合がある(この現象を代謝活性化という)。

2)第Ⅱ相反応

第Ⅱ相反応では、第I相反応で形成された官能基に生体内の水溶性物質(グルクロン酸、活性硫酸など)を転移することにより脂溶性薬物の極性を増大させ、排泄しやすくしている。ただ、第Ⅱ相反応の中でもアセチル抱合については、脂溶性が増大する。

4 第Ⅰ相反応に関与する薬物代謝酵素

第Ⅰ相反応では、酸化、還元、加水分解により官能基が形成され、排泄されやすくなったり、第Ⅱ相反応の基質になりやすい構造に変化する。
酸化、還元、加水分解反応に関与する代表的な代謝酵素を以下に示す。

5 第Ⅱ相反応に関与する薬物代謝酵素、反応様式

第Ⅱ相反応は、第Ⅰ相反応の酸化、還元、加水分解で導入または形成された官能基に生体成分を抱合する反応である。この抱合反応により、一般に薬物の極性は増大し、排泄されやすくなる。抱合反応に関与する代表的な代謝酵素及び抱合反応の基質となる官能基、補酵素、細胞内局在性を以下に示す。

UGT:UDPグルクロン酸転移酵素(グルクロノシルトランスフェラーゼ)ST:硫酸転移酵素(スルホトランスフェラーゼ)
NAT:N−アセチル転移酵素(N−アセチルトランスフェラーゼ)
GST:グルタチオンS−転移酵素(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)

1)グルクロン酸抱合

グルクロン酸抱合は、UGT によって触媒される抱合反応であり、最も多くの官能基を基質とする。グルクロン酸抱合体は、肝胆管側膜に発現している薬物トランスポーターであるMRP2、ABCC2の基質となるため、胆汁中排泄されやすい。
グルクロン酸抱合では、エーテルグルクロニドとエステルグルクロニドの2種類の抱合体が形成される。その中でもエステル型は胆汁中排泄された後、腸内細菌のβグルクロニダーゼにより加水分解され、再び脂溶性に戻り、再吸収されることがある(この現象を腸肝循環という)。

2)硫酸抱合

硫酸抱合は、STによって触媒される抱合反応であり、グルクロン酸抱合に次いで多くの官能基を基質とするため、グルクロン酸抱合と競合することがある。

3)アセチル抱合

アセチル抱合は、NATによって触媒される抱合反応であり、他の抱合反応と異なり、抱合体が形成されることにより、脂溶性が増大する。

4)グルタチオン抱合

グルタチオン抱合は、GSTによって触媒される抱合反応であり、電子吸引性を有する薬物を基質とする。グルタチオン抱合された薬物はそのまま排泄されず、腎臓で修飾されて最終的にメルカプツール酸抱合体となり尿中に排泄される。

6 薬物代謝酵素の細胞内局在性

肝臓における薬物代謝酵素の存在部位を調べる方法として、遠心分離法がある。

テフロン−ガラスホモジナイザーで破砕した細胞を遠心分離により調製すると、大まかに細胞小器官を分離することができる。薬物代謝酵素のほとんどは、ミクロソーム画分か可溶性画分に存在している。

関連問題
第97回問44、第100回問43、第101回問43、第102回問43

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