薬剤師国家試験出題項目

薬物の脳や胎児への移行

1 血液脳関門の構造と機能、薬物の脳への移行

脳には2つの関門(血液脳関門、血液脳脊髄液関門)が存在しており、これらの関門が循環血液中の薬物の中枢への移行を制御している。血液脳関門(脳毛細血管内皮細胞)は、循環血液と脳組織を隔てており、また、血液脳脊髄液関門(脈絡叢上皮細胞)は、循環血液と脳脊髄液を隔てている。

1)血液脳関門を介した薬物の脳への移行

脳毛細血管内皮細胞は、末梢組織の血管内皮細胞と異なり、密着結合により連結しており無窓性の被膜を構成するため、薬物は内皮細胞の間隙をほとんど通過できない。

このことから、脳に薬物が移行するためには、血液脳関門の実体である脳毛細血管内皮細胞を透過する必要がある。血液脳関門の薬物の透過機構には、受動拡散、担体介在輸送、能動的排出型輸送、トランスサイトーシスが関与している。
受動拡散により薬物が透過する場合、その透過速度は薬物の脂溶性と分子量に依存し、薬物の脂溶性が大きいほど、分子量が小さいほど、受動拡散による脳への移行速度は大きい。一方、担体介在輸送系で認識される物質は、水溶性が高くても脳へ移行する。
血液脳関門には、促進拡散輸送系であるGULT1が発現しており、GULT1はグルコースを脳へ輸送に関与している。また、血液脳関門にはアミノ酸輸送系も存在し、それにより中性アミノ酸が脳へ輸送されている。ドパミンは血液脳関門を通過できないが、その前駆体であるレボドパはアミノ酸輸送系に認識されて脳に移行することができる。
血液脳関門には、P糖タンパク質が発現しており、脳毛細血管上皮細胞にある薬物を循環血液中に排出する排出輸送系として働いている。ビンブラスチン、ビンクリスチン、シクロスポリン、フェキソフェナジン、ロラタジンなどは、脳毛細血管上皮細胞にあるP糖タンパク質により循環血液中に排出されるため、中枢移行性が小さい。
血液脳関門には、インスリンやトランスフェリンなどを認識する受容体が発現しており、トランスサイトーシス機構で循環血液中のインスリンや鉄を脳内に移行する。

2)血液脳脊髄液関門を介した薬物の脳脊髄液への移行

脈絡叢(脳脊髄液の産生を担っている場所)の上皮細胞は毛細血管を包み込むように存在しており、循環血液と脳脊髄液を隔てている。このことから、血液脳脊髄液関門は、血液脳関門と異なり、毛細血管内皮細胞が関門を形成しているのではなく、脈絡叢上皮細胞が関門を形成しているといえる。
血液脳脊髄液関門には、有機アニオン輸送系が発現しており、それにより脳脊髄液中のβ−ラクタム系抗生物質が循環血液中へ排出される。

2 胎盤関門の構造と機能、薬物の胎児への移行

胎児に対しての物質の供給は、胎盤を介して行われ、母体に投与された薬物は母体血から胎盤を経て胎児血液中に移行する。胎児に移行した薬物は毒性を発現する可能性があり、特に器官形成期に移行した場合、先天性異常や催奇形性を示すおそれがある。

1)胎盤の構造と機能、物質の透過

胎盤は血管の多い海綿状の組織で、その内部間腔には子宮内動脈から供給される母体血が流れ込んでいる。母体血と胎児血は、合胞体性栄養膜細胞によって隔てられ、両者は混合することはない。
胎盤関門の実体は、母体血と胎児血との間にある合胞体性栄養膜細胞であり、胎盤関門では、単純拡散、促進拡散、能動輸送、サイトーシスにより物質が輸送されている。
薬物の輸送に関しては、一般に単純拡散により行われると考えられ、非イオン形で脂溶性の物質の透過性は高く、また、分子量の小さい物質の透過性は高い。このことから、水溶性の高い薬物やタンパク結合しやすい薬物は胎盤を透過しにくい。胎児の生育に必要な栄養物質は、トランスポーターにより輸送される。グルコースはグルコーストランスポーターGULT1によって輸送され、アミノ酸はアミノ酸トランスポーターにより輸送される。また、胎盤関門刷子縁膜にはMDR1(P糖タンパク質)、BCRPが発現しており、薬物の胎児への輸送を抑制しているほか、基底膜側細胞膜には、OATP2B1やOAT4が発現しており、抱合型ステロイドホルモンや有機アニオン性薬物を輸送している。

)胎盤の代謝酵素

 胎盤には、薬物代謝酵素であるCYP1A1、CYP2E1、CYP3A4〜7、CYP11A1、CYP19などが発現しており、胎児の代謝を補っている。

関連問題
第97回問266、第98回問168、第99回問269、第100回問269

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