薬剤師国家試験出題項目

薬物の吸収に影響する因子

薬物の消化管からの吸収は、様々な因子の影響を受け変化する。薬物の消化管からの吸収に影響を与える因子は、薬物、製剤側の要因と生体側の要因に分類できる。
●薬物、製剤側の要因
分子量、脂溶性、解離度、溶解速度、複合体形成など
●生体側の要因
消化管の構造、pH、胃内容排泄速度、P糖タンパク質など

1 薬物、製剤側の要因

1)分子量

薬物が消化管から吸収されるためには、小腸粘膜を通過する必要がある。分子量が増大するとともに、小腸粘膜透過性は低くなる傾向にある。経口製剤の中で、分子量が大きいものとしてシクロスポリン(分子量:約1,200)があり、それ以上の分子量を有するものは消化管からほとんど吸収されない。

2)脂溶性

一般に薬物の吸収は単純拡散により行われるため、脂溶性の高いものは消化管吸収されやすく、水溶性の高いものは消化管吸収されにくい。このことから、水溶性の高いアミノグリコシド系抗生物質やバンコマイシンなどは消化管からほとんど吸収されない。また、脂溶性があまりにも大きい薬物は、消化管粘膜に強く結合し、全身循環への移行性が悪くなる場合もある。

3)解離度

薬物のほとんどは弱電解質であり、水溶液中では分子形とイオン形として存在している。弱酸性および弱塩基性薬物の分子形とイオン形の割合は、Henderson–Hasselbalch(ヘンダーソン・ハッセルバルヒ)式により表される。

下図は弱酸性薬物と弱塩基性薬物の分子形分率とpHの関係を示す。

<弱酸性薬物の場合>

<弱塩基性薬物の場合>

弱酸性薬物の場合、pHが低い環境では、分子形分率が高く消化管から吸収されやすい。一方、塩基性薬物の場合、pHが高い環境では、分子形分率が高く消化管から吸収されやすい。

4)溶解速度

経口投与された各種製剤は消化管中で崩壊、分散、溶解の過程を経て、最終的に溶解状態となり吸収される。

溶解していない状態では、薬物は吸収されないことから、溶解過程が律速段階である薬物の吸収性はその薬物の溶解速度の大きく左右される。溶解速度は、ノイエス−ホイットニー式により表される。

C:時間tにおける溶液中の薬物濃度、D:薬物の拡散係数、S:固形薬物の有効面積、V:溶液の容積、h:拡散層の厚さ、Cs:薬物の溶解度、D/V・h=k:見かけの溶解速度定数とする。

ノイエス−ホイットニー式より、dC /dt(溶解速度)は、固体の表面積、溶解度、拡散係数などの影響を受け変化する。

(1)粒子径
 固体製剤中の医薬品の粒子径を小さくすることにより、表面積が増大し、吸収性も増大する。例)グリセオフルビンの微細化
グリセオフルビンを微細化すると、比表面積が増大し、吸収性が改善する。

(2)塩の形成
 酸性薬物の場合、ナトリウム塩やカリウム塩にすることにより溶解性が改善し、吸収性が改善する。一方、塩基性薬物の場合、塩酸塩や硫酸塩にすることにより溶解性が改善し、吸収性が改善する。

(3)結晶多形
 同一の化学組成であっても結晶構造が異なるものを結晶多形という。結晶には、準安定形と安定形があり、準安定形の方が安定形に比べ、溶解度が高く、吸収性が良いとされている。

(4)無晶形
 無晶形は、結晶に比べ、溶解性が高いことから、製剤調製の際、薬物を無晶形にすることにより吸収性が改善する。

(5)溶媒和物
 溶媒和物とは、溶液中で薬物が溶媒を強く引きつけることにより、形成されるものであり、その代表的なものとして、水和物がある。無水物は水和物に比べ、溶解性が高いことから、製剤調製の際、薬物を無水物にすることにより吸収性が改善する。

5)複合体形成

包接化合物であるシクロデキストリン(下図:α−シクロデキストリン)は、薬物を環状構造中に包み込むため、薬物の安定性、溶解性、吸収性を改善する。

2 生体側の要因

1)消化管の構造

小腸には、輪状ひだや絨毛とよばれる突起が存在し、さらに絨毛を覆う上皮細胞の表面には微絨毛が存在する。そのため、小腸の表面積は、胃や大腸に比べ著しく大きく、吸収に対して優れた機能を有する。一方、胃や大腸には、突起した構造がなく、その表面積は小さいため、小腸に比べ吸収性は劣る。

2)消化管内のpH

消化管内のpHは消化管各部位で異なるため、消化管の場所により薬物の解離度及び吸収性が異なる。消化管各部位のpHは、胃:pH1〜3、十二指腸:pH約5〜6、空腸および回腸:pH約7〜8となっている。
胃内pHは1〜3とかなり低いため、弱酸性薬物はほとんど分子形として存在している。このことから弱酸性薬物は、小腸に比べ胃での吸収性が良くなることがある。

3)分泌液

胆汁中に含まれる胆汁酸塩は、生体膜を溶解したり、薬物の溶解度を増大させることにより、薬物の吸収性を改善する。
難溶性薬物は、高脂肪食の摂取により吸収性が増大する。その理由として、高脂肪食を摂取することにより、胆汁酸が分泌され、それにより難溶性薬物の溶解性が改善するためである。

)胃内容排泄速度

胃内容排泄速度(GER)とは、胃から小腸に胃の内容物が移行する速度のことであり、小腸における薬物の吸収に影響を与える。

GERが大きいほど、小腸に薬物が速やかに移行するため、一般的な薬物は、速やかに吸収されるようになる。

(1)GERの変化因子
 GERは薬物や食事の影響を受け変化する。GERを変化させる要因について、以下にまとめる。

(2)GERと一般的な薬物の吸収
 一般的な薬物は、GERの増大により速やかに吸収されるようになり、GERの低下によりゆっくり吸収されるようになる。次にアセトアミノフェンとプロパンテリンを併用した場合とアセトアミノフェンとメトクロプラミドを併用した場合について確認していく。アセトアミノフェンとプロパンテリンを併用した場合、プロパンテリンによりGERが低下し、それによりアセトアミノフェンはゆっくり吸収されるようになる。また、アセトアミノフェンとメトクロプラミドを併用した場合、メトクロプラミドによりGERが増大し、それによりアセトアミノフェンは速やかに吸収されるようになる。

(3)GERとリボフラビンの吸収
 リボフラビンのように十二指腸の上部で能動輸送により吸収される薬物は、絶食時などのGERが大きい場合、一度に高濃度の薬物が吸収部位に到達し、トランスポーターの飽和が起こり吸収性が低下する。これに対して、GERが小さい場合、徐々に薬物が吸収部位に到達するため、飽和現象が認められず、吸収は良好となる。

5)薬物排出型トランスポーター(P糖タンパク質)

腸管上皮細胞には、管腔側から吸収され上皮細胞に取り込まれた薬物を管腔側に排出するトランスポーター(薬物排出型トランスポーター)が存在する。P糖タンパク質は、ATPの加水分解エネルギーを用いて薬物を輸送する一次能動輸送型のトランスポーターであり、消化管における代表的な薬物排出型トランスポーターである。

P糖タンパク質は小腸上皮細胞に一度取り込まれた薬物を消化管管腔へ排泄するため、薬物吸収を妨げることに関与している。P糖タンパク質の基質となる薬物には、ベラパミル、シクロスポリン、タクロリムス、ジゴキシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、キニジン、ダビガトランエテキシラート、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、アリスキレンなどがある。

◇関連問題◇
第95回問151、第99回 問167、第102回問165、第103回問41

 

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