薬剤師国家試験出題項目

腎クリアランス

腎クリアランスとは、腎臓の薬物処理能力であり、その単位は容量/時間(mL/min)で表される。腎クリアランスは単位時間当り尿中に排泄された薬物量(mg/min)を血漿中薬物濃度(mg/mL)で除することにより求められ、その大きさは、薬物の糸球体濾過および尿細管分泌・再吸収の程度により決定される。

 1 腎クリアランスの算出法 

尿中排泄速度とは、単位時間当たりに排泄される薬物量(単位:mg/min)のことであり、尿中の薬物濃度U(単位:mg/mL)と単位時間あたりの尿量V(単位:mL/min)の積より求めることができる。また、尿中排泄速度は、糸球体濾過量、尿細管分泌量、再吸収率より決定されることから下記の式が成立する。

尿中排泄速度(mg/min)=U(単位:mg/mL)×V(単位:mL/min)

尿中排泄速度=(糸球体濾過量+尿細管分泌量)×(1-再吸収率)

糸球体濾過量は、単位時間当たりに濾過される血漿の量(糸球体濾過速度:GFR)とタンパク非結合率f、血漿中薬物濃度Cpに依存するため、GFRとfとCpの積で表される。

糸球体濾過量=GFR×f×Cp

これらのことから、尿中排泄速度は、以下の式で表すことできる。

尿中排泄速度=U・V=(GFR×f×Cp+尿細管分泌量)×(1-再吸収率)

また、腎クリアランスCLは、単位時間当り尿中に排泄された薬物量(mg/min)を血漿中薬物濃度Cp(mg/mL)で除することにより求めることができるため、下記の式が成立する。

このことから、腎クリアランスは、以下の式で表すことできる。

CL=(GFR×f+CL分泌)×(1-再吸収率)

例題)
ある薬物を投与後の薬物体内動態パラメータについて次のデータが得られている。
・血漿中薬物濃度P:10 µg/mL
・尿中薬物濃度U:200 µg/mL
・毎分の尿量V:2.0 mL/min
・尿細管での薬物の再吸収率R:20%
・血漿タンパク結合率:60%

なお、この患者の糸球体濾過速度GFRを50mL/minとする。
この時の腎クリアランス、濾過クリアランス、尿細管分泌量を求めよ。

<腎クリアランスを求める。>

<濾過クリアランスを求める。>

CL濾過=GFR×f=50 mL/min×(1-0.6)=20 mL/min

<尿細管分泌量を求める。>

CL=(GFR×f+CL分泌)×(1-再吸収率)より、CL分泌は以下のように求めることができる。
40 mL/min=(20 mL/min+CL分泌)×(1-0.2)
CL分泌=30 mL/min

尿細管分泌量は、CL分泌とP積より求めることができるため、下記のように求めることができる。
尿細管分泌量=30 mL/min×10 µg/mL=300 µg /min

2 腎クリアランスと糸球体濾過、尿細管分泌、尿細管再吸収の関係 

腎クリアランスと糸球体濾過、尿細管分泌、尿細管再吸収の関係を把握するにあたり、典型的な腎排泄を示す物質の血漿中濃度と腎クリアランスの関係を確認する。

イヌリンの腎クリアランスは、血漿中濃度が変化しても、ほぼ一定の値を保っている。これはイヌリンが血漿タンパク質にほとんど結合せず、糸球体濾過のみで尿中に排泄されるからである。

CL腎臓(イヌリン)=GFR

p−アミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って低下している。これはp−アミノ馬尿酸が尿細管分泌されるためである。なお、尿細管分泌は、担体介在輸送により行われ、濃度の増加に伴って飽和現象が認められる。そのため、分泌クリアランスは濃度の増加に伴って低下する。
グルコースの腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って増加している。これはグルコースが尿細管再吸収(近位尿細管での担体介在輸送)されるためである。なお、近位尿細管で認められる再吸収は、担体介在輸送により行われ、濃度の増加に伴って飽和現象が認められる。そのため、再吸収率は濃度の増加に伴って低下する。

3 糸球体濾過速度(GFR)の求め方 

糸球体濾過速度(GFR)とは、単位時間当たりに糸球体で濾過された血漿の量(単位:mL/min)のことであり、腎機能の指標として用いられている。糸球体の濾過は加圧濾過により行われており、有効濾過圧は以下の式より求めることができる。

有効濾過圧=(毛細血管内圧)-(毛細血管内膠質浸透圧+ボーマン嚢内圧)

GFRの測定には、イヌリンが用いられる。イヌリンは血漿タンパク質にほとんど結合せず、糸球体濾過のみで消失することから、イヌリンの腎クリアランスは、

CL腎臓(イヌリン)=GFR×f=GFR

となる。このことから、イヌリンの腎クリアランスよりGFRを求めることができる。
GFRは通常の成人で100〜130 mL/minであり、腎血漿流量を約600 mL/minとすると、血液が腎臓を通過すると血漿の約20%が糸球体で濾過されていることになる。イヌリンはGFRの正確な評価を行う上で最良の化合物であり、腎機能検査用薬として用いられているが、使用方法が煩雑であるため、臨床の場では日常的に用いられていない。
臨床の場では、GFRの指標として、内因性物質であるクレアチニンのクリアランスが用いられている。クレアチニンは、骨格筋中でクレアチンの代謝により生じる物質であり、糸球体で自由に濾過されて尿中に排泄されるため、イヌリンと同様にクレアチニンクリアランスよりGFRを求めることができる。なお、クレアチニンはイヌリンと異なり、少し尿細管分泌されているため、その腎クリアランスは、GFRの値より少し大きくなる。
クレアチニンクリアランスについては、血漿中のクレアチニンの濃度、年齢、体重より近似的に求めることができる式(Cockcroft-Gauit式:コッククロフト−ゴールト式)が存在する。

4 尿細管分泌の特徴

尿細管分泌とは、血管側から尿細管側への薬物移行過程のことであり、尿細管上皮細胞を介した細胞膜輸送過程である。近位尿細管における尿細管分泌には、有機アニオン、有機カチオンを輸送するトランスポーターが関与している。尿細管分泌されるためには、血管側の側底膜、尿細管側の刷子縁膜を透過する必要がある。

OAT1,3:有機アニオン/ジカルボン酸交換輸送系
OCT2:膜電位依存性有機カチオン輸送系
MATE1,2:プロトン/有機カチオン交換輸送系
P−gp:P糖タンパク質

尿細管分泌は担体介在輸送により行われるため、薬物濃度が高い場合、飽和現象が認められることがある。また、同じ担体により輸送される薬物を併用した場合、競合的に分泌阻害が起こり、血中濃度が上昇する可能性がある。

5 尿細管再吸収の特徴

尿細管再吸収は、単純拡散により行われる場合と担体介在輸送により行われる場合がある。単純拡散により再吸収される場合には、脂溶性が高く、分子量の小さいものが再吸収されやすい。また、pH分配仮説が成立することから、弱酸性薬物の場合、尿のpHが低下すると再吸収されやすくなる。
グルコースやアミノ酸、ペプチドなどについては、担体介在輸送により再吸収されることから、濃度が高くなると、飽和現象が認められることがある。

<参考:グルコースの再吸収について>
グルコースは糸球体で濾過され、近位尿細管で再吸収されることから、健常人の場合、ほとんど尿中に排泄されない。それに対し、糖尿病に罹患している場合、糸球体で多量のグルコースが濾過されるため、全て再吸収できず尿中にグルコースが排泄される。

◇関連問題◇
第99回問170、第101回問44、第101回問169、第102回問44、第102回問47、第103回問46、第103回問170

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