薬剤師国家試験出題項目

緩衝作用、緩衝液

弱酸とその共役塩基の塩、または弱塩基とその共役酸の塩の混合溶液は、少量な酸や塩基を加えても、pHをほぼ一定保つことができる緩衝作用を有する。このような混合溶液を緩衝液という。

1 代表的な緩衝液

 緩衝液を調節するには、目的とするpHに最も近いpKaをもつ弱酸または弱塩基を選択する。例えば、pH5の緩衝液を調整したい場合には、主に酢酸(pKa:4.76)が用いられる。
代表的な緩衝液には、「酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液」、「リン酸緩衝液」、「アンモニア−塩化アンモニウム緩衝液」があり、目標とするpHに合わせてそれらの緩衝液を使い分ける。

2 緩衝液のpHの求め方

 緩衝液のpHについては、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式より求めることができる。

例えば、酢酸を0.1mol/L、酢酸ナトリウムを0.1mol/Lを含む酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液について、確認していく。(酢酸のpKaは4.76とする。)
酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液中の酢酸および酢酸ナトリウムは以下の状態で存在している。
 <酢酸ナトリウムについて>

酢酸ナトリウムについては、塩であるため、溶液中で完全に解離して存在する。そのため、溶液中の酢酸イオンの濃度は、0.1 mol/Lとなる。

 <酢酸について>

酢酸については、弱酸であるため、水中で極わずか解離するが、酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液中では酢酸イオンが存在するため、解離反応はほとんど認められない。そのため、溶液中の酢酸の濃度は、0.1 mol/Lとなる。
上記のように緩衝液中には、酢酸(分子形)と酢酸イオン(イオン形)が存在することから、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式よりpHを求めることができる。

 

 


◇演習問題◇
問1
0.20 mol/Lの弱酸(HA)と0.10 mol/Lの弱酸ナトリウム(ANa)水溶液を容積比1:3の割合で混合したときに得られるpHの値に最も近いのは次のどれか。1つ選べ。ただし、弱酸のpKa=4.76、またlog2=0.30、log3=0.48 、log7=0.85とする。

1 4.32
2 4.58
3 4.76
4 4.94
5 5.28

 

解答・解説

解答
4
解説
<HA、ANaのモル数を計算する>
0.20mol/Lの弱酸(HA)と0.10mol/Lの弱酸ナトリウム(ANa)水溶液を1L:3Lで混合したとすると、HA、ANaのモル数は以下のように計算することができる。

HAのモル数:0.20mol/L×1L=0.20mol
ANaのモル数:0.10mol/L×3L=0.30mol

<混合液中のHA、ANaのモル濃度を計算する>
0.20 mol/Lの弱酸(HA)と0.10 mol/Lの弱酸ナトリウム(ANa)水溶液を1L:3Lで混合したとすると、その溶媒量は4Lとなることから、混合液中のHA、ANaのモル濃度は以下のようになる。

HAのモル濃度:0.20 mol/4L
ANaのモル濃度:0.30 mol/4L

<pHを求める>

酸性物質を用いて作成した緩衝液のpHは下記の式で求めることができる。

水中ではHAはほとんど解離しないため、分子形として存在し、ANaはほぼ完全に解離するため、イオン形として存在している。
このことから、pHは下記のように求めることができる。

問2
ある弱酸(Ka=8.0×10-5)の0.30 mol/L水溶液と0.30 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を2:1の割合で混合して調製した水溶液のpHはどれか。1つ選べ。

1 3.2
2 3.8
3 4.1
4 4.4
5 4.8

 

解答・解説

解答
3

解説
<混合直後の弱酸とNaOHのモル数を計算する>

弱酸と水酸化ナトリウム水溶液を2L:1Lで混合したとすると、混合した直後のHA、NaOHのモル数は以下のように計算することができる。

HAのモル数:0.30mol/L×2L=0.60mol
NaOHのモル数:0.30mol/L×1L=0.30mol

<反応後に残存する物質のモル濃度を計算する>
弱酸と水酸化ナトリウム(強塩基)を混合すると、下記の反応が進行する。

HA(弱酸)+NaOH → ANa + H2O

このことから、反応後のNaOH、HA、ANaのモル数は

NaOH:0.30mol→0mol
HA:0.60mol→0.30mol
ANa:0mol→0.30mol

となり、反応後には、3L中にHA 0.30 mol、ANa 0.30 molが残存する。

<pHを計算する>
反応後の溶液中には、HAとANa(弱酸とその塩)が存在することから、緩衝液が生成したと考えられる。このことから、この溶液のpHを下記のように求めることができる。

問3
下記の文章の「 」に当てはまる適切な数値を答えよ。
0.20 mol/Lの酢酸水溶液と0.10 mol/Lの酢酸ナトリウム水溶液を容積比2:3の割合で混合した緩衝液500 mLのpHは「 ア 」であり、そこに0.10 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を100 mL加えたときに得られるpHは「 イ 」となる。ただし、酢酸のpKa=4.76、またlog2=0.30、log3=0.48 、log4=0.60とする。

 

 

解答・解説

解答
ア:4.64 イ:4.88

解説

<緩衝液中における酢酸、酢酸ナトリウムの濃度を求める>
酢酸の物質量は0.20mol/L×200mL(0.2L)=0.04molであることから、酢酸の濃度は0.04mol /500mLとなり、また、酢酸ナトリウムの物質量は0.10mol/L×300mL(0.3L)=0.03molであることから、酢酸ナトリウムの濃度は0.03mol/500mLとなる。

<緩衝液のpHを求める>


<水酸化ナトリウムを加えた後の反応について考える>
水酸化ナトリウムは強塩基であることから、緩衝液中の酢酸と反応する。

CH3COOH+NaOH → CH3COONa + H2O

加えた水酸化ナトリウムの物質量は0.10 mol/L×100 mL(0.1L)=0.01molであることから、水酸化ナトリウムを加えたあとの酢酸、酢酸ナトリウムのモル濃度は

酢酸:0.04mol/600mL→0.03mol/600mL
酢酸ナトリウム:0.03mol/600mL→0.04mol/600mL

となる。

<緩衝液のpHを求める>

 

 

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