薬剤師国家試験出題項目

組織クリアランスと固有クリアランス

生理学的モデルは、コンパートメントモデルとは異なり、各組織の間を流れる血液により薬物が移動すると考えるモデルのことである。

1 組織クリアランス

組織クリアランスは、単位時間当たりに流入する血液量と抽出率の積により算出することが可能である。なお、抽出率とは、臓器を一回通過したときに減少する薬物濃度の割合のことである。

例)肝クリアランス

上記の例では、肝臓に流入する薬物濃度が12、肝臓から流出している薬物濃度が6であることから、肝抽出率については、(12-6)÷12=0.5となる。健常人では肝血流速度Qが90L/hであることから、この場合の肝クリアランスCLは45L/h(CL=0.5×90L/h=45L/h)となる。
組織クリアランスは、抽出率と血流量の積により表される。また、抽出率は0〜1の間の値となるため、組織クリアランスは、血流量よりも大きな値にはならない。このことは、組織に流入した血液よりも多くの血液から薬物を除去することができないことを表している。肝臓には1時間当たり90 Lの血液が流入しているが、1時間当たりに100 Lの血液を肝臓では処理できないことを表している。

2 組織クリアランスと全身クリアランス

肝臓、腎臓などの組織による薬物の処理能力を表すパラメータに組織クリアランス(肝クリアランスCL、腎クリアランスCLなど)があり、それらの総和が全身クリアランスとなる。例えば、肝臓での代謝と腎臓からの未変化体の排泄によって消失する薬物の全身クリアランスは、肝クリアランスと腎クリアランスの和として表すことできる。

3 肝固有クリアランスCLintとwell-stirredモデル

肝固有クリアランスCLintは、肝臓における真の処理能力を表すパラメータであり、肝臓に流入する液体から薬物を除去することができる最大容積量を示している。(単位:容積/時間)

なお、肝固有クリアランスCLintは、薬物ごとで異なる値を示す。
肝固有クリアランスCLintが大きい薬物A:肝臓に薬物Aを代謝する酵素が多い
肝固有クリアランスCLintが小さい薬物B:肝臓に薬物Bを代謝する酵素が少ない
上記のことから、CLintよりその薬物の代謝酵素活性がわかる。

1)well-stirredモデル

well−stirredモデルでは、肝クリアランスCLには、肝血流量Q、血漿タンパク非結合率f、肝固有クリアランスCLintが関与すると考えられている。そのため、well−stirredモデルでは、肝クリアランスCLを以下のように表すことができる。

また、CL=E・Qが成立するため、Eを以下のように表すことができる。

2)血流律速と代謝律速

肝消失型薬物は、肝血流量、肝固有クリアランスとタンパク非結合率の積の大小関係より肝血流律速型薬物と肝代謝律速型薬物に分類できる。

(1)肝血流律速型薬物
Qに比べf・CLintがすごく大きい(Q≪f・CLint)場合、Q+f・CLintをf・CLintと近似することができる(Q+f・CLint≒f・CLint)ため、肝クリアランスCLは以下のようになる。

この場合、肝クリアランスCLは肝血流量Qとほぼ等しくなることから、このような薬物を肝血流律速型薬物という。

(2)肝代謝律速型薬物

Qに比べf・CLintがすごく小さい(Q≫f・CLint)場合、Q+f・CLintをQと近似することができる(Q+f・CLint≒Q)ため、肝クリアランスCLは以下のようになる。

この場合、肝クリアランスCLはf・CLintとほぼ等しくなることから、このような薬物を肝固有クリアランス律速薬物(肝代謝律速薬物)という。また、肝固有クリアランス律速薬物については血漿タンパク質との結合性により、タンパク結合感受性型とタンパク結合非感受性型に分類することができる。

<参考:肝抽出率と血漿タンパク結合率からみる血流律速薬物、代謝律速薬物>

◇関連問題◇
第97回問173、第102回問48、第103回問47、第103回問172

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