薬剤師国家試験出題項目

粉体

Section1 粉体

粉体は固体の集合体であり、粉体の性質を考えるにあたっては、個々の粒子の特徴だけでなく、粒子の集合体としての性質を考慮する必要がある。粉体は固体粒子の集合体であるが、液体と同様に変形や流動性という特性を有している。また、粉体を構成する粒子は、その大きさ及び形状にばらつきを有することから、組成から一義的に特性を予測することは困難である。

1 粒子径および粒子径測定法

粒子径を測定する方法には、顕微鏡法、ふるい分け法、コールターカウンター法(電気抵抗法)、沈降法、レーザー回折法など様々な方法がある。

1.1 顕微鏡法

顕微鏡法とは、顕微鏡を用いて肉眼または顕微鏡写真によって直接個々の粒子の外観および形状を観察し、その大きさを測定する方法である。顕微鏡法では、粒子径に関する様々な定義が存在する。

顕微鏡法では、粒子1つ1つの粒子径を確認することができるため、個数基準の粒度分布図を得ることができる。また、顕微鏡法では、粒子の形状に関する情報を得ることができる。

粒度分布図

粉体は様々な大きさを持った粒子より構成されている。この粒子径の分布の仕方を粒子径分布といい、その粒子径の分布を図にしたものを粒度分布図という。粒度分布図を得るためには、粉体に含まれる粒子の粒子径(もしくは粒子径に相当する粒子の長さ、面積、質量など)を測定する必要がある。

1.2 ふるい分け法

ふるい分け法はふるいを用いて粒子径を測定する方法である。本法では、測定対象となる粉体を一定量(25g以上)ふるいに入れ、ふるいに残った粉体の重量より粒度分布を求めることができる。

1.3 コールターカウンター法(電気抵抗法)

 コールターカウンター法は、粒子が細孔を通過した際の電気抵抗値が変化することを利用した粒子径の測定法である。

コールターカウンター法では、粒子の個数、体積を調べることができるため、個数基準、体積基準の粒度分布が得られるが、粒子の形状に関する情報を得ることはできない。

1.4 沈降法

 沈降法とは、重力及び遠心力による沈降速度から粒子径を測定する方法である。沈降法では、粒子を液体(粒子を溶かさない液体)に添加し、沈降速度を測定する。測定した沈降速度よりストークス式を用いて、粉体が球形であると仮定した場合の粒子径を算出する。

粒子径の算出に用いられるストークス式を以下に示す。

ここでρは粒子密度、ρ0は流体(液体)の密度、Dは粒子径、ηは流体の粘度、gは重力加速度である。
ストークス式は、粒子が等速運動している時に成立するとされており、その速度と粒子径の2乗が比例することから、沈降速度より粒子径を算出することが可能である。
沈降法による粒度分布測定では、ふるい分け法と同様に質量基準の粒度分布が得られる。

沈降法による粒子径分布の測定には、一斉沈降法と分散沈降法がある。分散沈降法による粒子径分布について次に示す。

<例題>第99回問176
大小2種類の粒子径を有する同一物質の混合粒子の質量を、分散沈降法により沈降天秤を用いて測定したところ、図に示す結果を得た。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、粒子の沈降はストークスの式に従うものとする。

1 大粒子と小粒子の粒子径比は2:1である
2 大粒子と小粒子の粒子径比は4:1である。
3 大粒子と小粒子の質量比は1:2である。
4 大粒子と小粒子の質量比は2:3である。
5 大粒子と小粒子の質量比は1:4である。

 


解説
<大粒子と小粒子の質量比>
沈降初期(0〜10分の間)では大粒子と小粒子が同時に沈降していると考えられ、それ以降(10〜40分の間)では、小粒子のみが沈降していると考えられる。
10〜40分累積沈降量の推移より、小粒子が10分間で0.1 g沈降している。
このことより、小粒子の質量は次のように求めることができる。
小粒子の質量=0.1 g/10分×40分=0.4 g
また、累積質量の全量が0.5 gであることから、大粒子の質量を以下のように求めることができる。
大粒子の質量=0.5 g-0.4 g=0.1 g
これらのことから、大粒子と小粒子の質量比は1:4である。

<大粒子と小粒子の粒子形比>
大粒子の沈降時間は10分、小粒子の沈降時間は40分であることから、大粒子と小粒子の沈降速度の比は4:1である。沈降速度は粒子径の2乗に比例するため、大粒子と小粒子の粒子径の比は、2:1となる。

1.5 レーザー回折法

本法では、粒子を液体または気体にある一定の濃度で分散させ、レーザー光を照射し、その際、生じる回折パターンを測定する。得られたデータから体積基準の粒子径の分布が得られる。

2 比表面積測定法

 比表面積測定法は、粒子径と比表面積が反比例することから比表面積より粒子径を求める方法である。比表面積測定法では、個々の粒子に関する情報を得ることができないため、粒度分布を得ることはできない。

ただし、dは平均粒子径、kは形状係数(球形の場合:6)、ρは試料の密度、Sw:粉体の単位重量当たりの表面積(比表面積)とする。

 2.1 透過法

流体が粉体層(粉体が敷き詰まった層)を流れる際の抵抗の大きさからコゼニーカーマン式を用いて、比表面積を求める方法である。

2.2 吸着法

吸着法は、試料に気体分子(窒素、クリプトンガス)を吸着させ、吸着した気体の量より試料の比表面積を求める方法である。粒子の比表面積を求めるためには、粒子表面に吸着したガスの量(単分子飽和吸着量vm)を求める必要があり、その算出には、ガスが単分子吸着する場合、ラングミュア式が用いられ、ガスが多分子吸着する場合にはBET式が用いられる。

単分子飽和吸着量を求めることができれば、下記の式より比表面積を求めることができる。

3 粉体の性質

3.1 粒子径分布

粉体を構成している粒子の大きさの分布を粒子径分布という。粒子径分布には、頻度分布曲線(粒子径と粒子の頻度との関係を表したもの)と積算分布曲線(粒子径とその粒子より小さい粒子の頻度の累積値との関係を表したもの)がある。

1)頻度分布曲線
頻度分布曲線では、最も相対頻度の大きい粒子径である最頻径(モード径)が得られる。同じ粉体でも、個数基準の粒度分布図と質量基準の粒度分布図ではずれが生じる。一般に「個数基準のモード径<質量基準のモード径」の関係が成立する。

2)累積分布曲線
累積分布曲線では、中央値(メジアン径:50%累積値に相当する粒子径)が得られる。同じ粉体でも、個数基準の粒度分布図と質量基準の粒度分布図ではずれが生じる。一般に個数基準の「メジアン径<質量基準のメジアン径」の関係が成立する。

3.2 流動性

粉体は固形粒子の集合体であり、液体や気体と同様に流動性を示す。粉体の流動性を評価には安息角やオリフィスからの流出速度が用いられている。

1)安息角、オリフィスからの流出速度
 安息角とは、静止した粉体層の表面が水平面となす角度のことであり、この値より粒子間摩擦または粒子間の運動性に関する情報を得ることができる。また、オリフィス(流出口)からの速度より粉体の運動性に関する情報を得ることができる。

2)流動性を改善する方法
 流動性は、散剤や顆粒剤の分包、錠剤の製造、粉体のカプセルへの充填に影響するため、粉体を製造する際には、ある程度流動性があるように製造する必要がある。粉体の流動性を改善する方法には、造粒による粒子径の増大、乾燥、滑沢剤の添加などがある。なお、滑沢剤の添加については、添加量に比例して流動性は改善しないとされていることから、流動性を改善する目的で滑沢剤を添加する場合は、適量添加する必要がある。

3.3 充填性

粉体の充填性の評価には、かさ密度や空隙率が用いられている。かさ密度とは、粒子間の空隙を含んだ密度のことであり、同一の真密度を有する粉体間では、かさ密度が大きい粉体の方が充填性が高いとされる。

また、空隙率とは、空隙の体積を見かけの体積で除した値であり、空隙率が小さいほど充填性が高いとされる。

粉体の充填性に影響する因子には、粒子の形状、粒子径、粒度分布、付着・凝集性などがある。一般に粒子径が大きく、球形のものは充填性が良い。形状が球形から離れるにつれて充填性は悪くなり、また、粒子径が小さくなると自重が小さくなるため、充填性が悪くなる。

3.4 混合性

粉体の混合均一性は、製剤の品質を保証するために必要不可欠である。混合性に影響する因子には、粒子径、粒子の形状、密度、粉体の混合比、混合速度などがある。粒子の大きさが著しく異なるものや密度差が大きい粉体の混合では、偏りが生じやすい(混合性は悪い)。

3.5 ぬれ

ぬれとは、固体表面が気体から液体に置き換わる現象のことであり、固形製剤の崩壊や溶解に関する重要な性質である。ぬれやすさの測定には、液滴法や毛細上昇法が用いられる。

 1)液滴法
 圧縮形成した粉体に液体を滴下し、液滴表面と固体表面のなす角度(接触角度)を測定する。

ぬれの形式は接触角により以下のように分類されている。
θ=0°の場合:拡張ぬれ(固体表面を液滴が薄膜状に広がるぬれ)
θ≦90°の場合:浸漬ぬれ(毛管上の固体面に沿って液体が移動するぬれ)
0°<θ≦180°の場合:付着ぬれ(液滴が固体表面に付着するぬれ)

2)毛管上昇法
 粉体を充填した毛管を液体に接触させると、毛細管現象により液体が粉体層の細孔に浸透してくる。その上昇の度合いを測定することにより、固体表面のぬれやすさを推察することができる。

ぬれやすさは、接触角から評価することができる。接触角が小さい粉体ほどぬれやすく、液体が固体表面を広がりやすい。

3.6 吸湿性

粉体に水蒸気が吸着することを吸湿という。吸湿により粉体の流動性が低下したり、薬物の化学的安定性が低下することがある。水溶性物質の吸湿は一定温度の条件下で相対湿度がある値に達すると急激に吸湿量が増大する。この吸湿量が急激に増加する相対湿度を臨界相対湿度(CRH)という。

臨界相対湿度(CRH)は、薬物固有の値であり、CRHが小さいほど吸湿しやすい粉体である。上図において、粉体Aは、相対湿度が70%で急激に吸湿量が増えていることから、粉体Aの臨界相対湿度は70%であるといえる。

1)水溶性粉体混合時の吸湿性の変化
 2種類以上の水溶性物質を混合すると、混合物のCRHは個々の粉体のCRHよりも減少し、吸湿しやすくなる。この場合、エルダーの仮説(混合物のCRHは個々の成分のCRHの積に等しい)が成立する。

CRHAB=CRHA×CRHB

臨界相対湿度70%の粉体Aと臨界相対湿度50%の粉体Bを質量比2:3で混合した混合物ABの臨界相対湿度は、下記のように求めることができる。

CRHAB=CRHA×CRHB=0.7×0.5=0.35

 

◇関連問題◇
第97回問176、第98回問276〜277、第99回問176、第100回問51、第100回問176、第101回問174、第103回問49、第103回問175、第104回問172、第105回問177、第105回問278〜279

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