80歳女性。軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、ドネペジル塩酸塩(5 mg/日)で内服治療を続けてきた。認知症が進行し、10 mg/日に増量しても効果が認められなかった。そのため医師より中等度から高度アルツハイマー型認知症の適応をもつ併用可能な薬剤の相談を受けた。
問256 (実務)
推奨すべき薬剤の成分はどれか。1つ選べ。
- ガランタミン臭化水素酸塩
- リバスチグミン
- メチルフェニデート塩酸塩
- メマンチン塩酸塩
- アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物
解答・解説
解答
4
解説
アルツハイマー型認知症治療には、中枢性コリンエステラーゼ阻害薬(中枢性ChEI:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)やNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬(メマンチン)などが用いられている。アルツハイマー型認知症治療薬の選択について以下に示す。
・軽度
中枢性ChEIのうち、いずれかを1剤選択して投与する。
効果が認められないか、不十分な場合、他の中枢性ChEIへの変更を考慮する。
・中等度
中枢性ChEIもしくはメマンチンのいずれかを投与する。
効果が認められないか、不十分な場合、他の中枢性ChEIに変更又は、中枢性ChEIとメマンチンの併用を考慮する。
・重度
ドネペジル又はメマンチンを用いる。
ドネペジルの用量を増量(5 mg/日→10 mg/日)するか、ドネペジルとメマンチンを併用する。
注意:治療薬を選択する際、中枢性ChEIを併用することはない。
本症例では、医師より中等度から高度アルツハイマー型認知症の適応をもつドネペジルと併用可能な薬剤について相談を受けていることから、「メマンチン塩酸塩(選択肢4)」を推奨すべきである。
問257 (薬理)
前問で推奨された成分の作用機序として、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 脳エネルギー代謝の賦活
- アセチルコリンエステラーゼの可逆的阻害
- ニコチン性アセチルコリン受容体の刺激
- グルタミン酸NMDA受容体の非競合的遮断
- ブチリルコリンエステラーゼの可逆的阻害
解答・解説
解答
4
解説
メマンチン塩酸塩は、NMDA受容体を非競合的に遮断し、グルタミン酸神経系の機能異常を抑制する。
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[…] 第99回 問256〜257 […]