45歳男性。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染症のため、以下の薬剤が処方された。

問220 (物理・化学・生物)
処方されたテイコプラニンは、細菌細胞壁ペプチドグリカンの合成阻害によりMRSAに対して抗菌作用を示す。ペプチドグリカンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- グラム陽性菌に特有の構造体であり、グラム陰性菌には存在しない。
- N−アセチルムラミン酸のホモポリマー及びペプチドから構成され、網目構造を形成する。
- 細胞膜の内側に層状構造で存在する。
- 細菌の形態維持及び浸透圧からの菌体保護の役割をもつ。
- 涙や鼻汁に含まれるリゾチームにより分解される。
解答・解説
解答
4、5
解説
1 誤
細菌細胞壁ペプチドグリカンは、グラム陽性菌とグラム陰性菌のどちらにも存在する構造である。なお、グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン層、グラム陰性菌は薄いペプチドグリカン層を有する。
2 誤
細菌細胞壁ペプチドグリカンは、N−アセチルムラミン酸とN−アセチルグルコサミンから形成されるコポリマー及びペプチドから構成され、網目構造を有する。
3 誤
細菌細胞壁ペプチドグリカンは、細胞膜の外側に層状構造で存在している。
4 正
細菌細胞壁ペプチドグリカンは、細菌の形態維持及び浸透圧からの菌体保護作用を有する。
5 正
リゾチームは涙や鼻汁に含まれている加水分解酵素であり、細菌細胞壁を構成するペプチドグリカン内のβ(1→4)結合を加水分解する。
問221 (実務)
テイコプラニンの使用上の注意に関する記述のうち、適切でないのはどれか。1つ選べ。
- 腎障害を引きおこす可能性のある薬剤との併用を避けることが望ましい。
- MRSA感染症以外への適応は認められていない。
- 投与開始後24時間までの累積尿中排泄率は約30%であるため、腎機能に応じた投与量の調節は必要ない。
- 投与期間中は、血中濃度をモニタリングすることが望ましい。
- 30分以上かけて緩徐に点滴静注することが推奨されている。
解答・解説
解答
3
解説
1 適切
本剤は副作用として腎障害を起こすことがあるため、他の腎障害を引き起こす可能性のある薬物と併用すると、腎障害が増強される恐れがある。
2 適切
本剤の効能・効果は、本剤に感受性のMRSA感染症のみである。
3 不適切
本剤は腎消失型薬物であり、定常状態到達後、腎機能に応じて投与量を調節する必要がある。
4 適切
本剤はTDM対象薬剤であり、腎障害や聴覚障害を起こさないように血中濃度をモニタリングすることが望ましい。
5 適切
本剤を急速静注すると副作用として、ショック及びレッドマン症候群(顔、頸、躯幹の紅斑性充血、そう痒感等)を起こすことがあるため、本剤の使用にあたっては30分以上かけて点滴静注することが推奨されている。
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