50歳男性。定期健康診断にて脂質異常症を指摘され、スタチン系薬剤による治療を開始することになった。
問208 (実務)
スタチン系薬剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 通常、作用が強力なスタチン系薬剤から開始し、より作用の弱いスタチン系薬剤に段階的に変更する。
- コレステロールの胆汁排泄を促進するため、胆石症に注意が必要である。
- プラバスタチンナトリウム及びロスバスタチンは、シトクロムP450による代謝を受けないことから、薬物相互作用が少ないとされている。
- ピタバスタチンはプロドラッグであり、肝臓で加水分解を受けて活性体となる。
- 重篤な肝障害を有する患者への投与には注意が必要である。
解答・解説
解答
解なし
解説
1 誤
スタチン系薬剤には、スタンダードスタチンとストロングスタチンが存在し、患者の状態にあったものを使用する。そのため、ストロングスタチンから使用する場合もあればスタンダードスタチンから使用する場合もある。
2 誤
スタチン系薬剤には、コレステロールの胆汁排泄する作用を有していない。なお、スタチン系薬剤は、肝臓に能動的に取り込まれ、コレステロール生合成過程の律速段階を触媒するHMG−CoA還元酵素を阻害することにより、コレステロールの生合成を阻害する。
3 誤
プラバスタチン及びロスバスタチンは、シトクロムP450による代謝を受けにくいことから、薬物相互作用が少ないとされている。
*「シトクロムP450の代謝を受けない」となっているが、ロスバスタチンはシトクロムP450の代謝を受けないわけではない。よって、選択肢3は「誤」となった。
4 誤
ピタバスタチンはプロドラッグではない。よって、ピタバスタチンは、肝臓で加水分解を受けることなく作用を示す。なお、スタチン系薬剤の中でプロドラッグに該当するのは、シンバスタチンである。
5 正
スタチン系薬剤は、重大な副作用として肝機能障害を起こすことがあるため、重篤な肝障害を有する患者へのスタチン系薬剤を投与すると、肝障害を悪化させるおそれがある。よって、重篤な肝障害を有する患者へのスタチン系薬剤の投与には注意が必要である。
問209 (物理・化学・生物)
プラバスタチンナトリウムは、生体内で3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)からメバロン酸が生成する反応を触媒する酵素Aに作用する。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

- 酵素AがHMG-CoAを還元すると、メバロン酸が生成する。
- HMG-CoA及びメバロン酸の矢印で示した不斉炭素原子は、いずれもS配置で ある。
- プラバスタチンナトリウムは、四角で囲んだ部分がHMG-CoAとの構造類似性が高いため、酵素Aを競合阻害する。
- プラバスタチンナトリウムの環状部位は、親水性を示す。
解答・解説
解答
1、3
解説
1 正
酵素Aは、HMG−CoA還元酵素(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA還元酵素)であり、酵素AがHMG-CoAを還元すると、メバロン酸が生成する。
2 誤
HMG−CoAの不斉炭素は、S配置であり、メバロン酸の不斉炭素は、R配置である。

3 正
プラバスタチンナトリウムの四角で囲んだ部分がHMG-CoAとの構造類似性が高いため、酵素AがプラバスタチンナトリウムをHMG−CoAと誤って認識する。それにより、プラバスタチンナトリウムは、酵素Aの活性部位を競合的に阻害する。
4 誤
プラバスタチンナトリウムの環状部位は、炭素数が多く、疎水性を示す。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 第97回 問208〜209 […]