61歳女性。肺アスペルギローマの既往。急性リンパ性白血病と診断され、シタラビン大量療法が施行された。療法開始から15日目に固形成分を含まない水様性便となったため、副作用の対応として処方1〜4の薬剤で治療開始された。しかし、症状が悪化したことから、5日後に糞便検体を採取して検査した結果、toxinA及びtoxinBが陽性であった。Clostridioides difficile感染症の院内での拡大を防止するため、院内のチームで対策を検討することになった。
問232(実務)
この患者に処方された処方1〜4の薬剤のうち、Clostridioides difficile感染症を誘発し、下痢を悪化させた可能性のある薬剤はどれか。1つ選べ。
- メロペネム点滴静注用
- イトラコナゾール錠
- ロペラミド塩酸塩カプセル
- メトクロプラミド錠
- 酪酸菌(宮入菌)製剤錠
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解答
1
解説
抗菌薬の投与により腸内細菌叢のバランスが崩れると、Clostridioides difficile(C. difficile)が異常に増殖し、毒素を産生して偽膜性大腸炎を発症することがある。
1 正
メロペネム点滴静注用は、カルバペネム系抗菌薬であり、広範な抗菌スペクトルを有するため、腸内常在菌にも強く作用し、結果的にC. difficile感染症を誘発することがある。
2 誤
イトラコナゾールは、アゾール系抗真菌薬であり、C. difficile感染症を誘発させる可能性は低い。
3 誤
ロペラミド塩酸塩カプセルは、止瀉薬であり、C. difficile感染症を誘発させる可能性は低い。なお、本剤の使用により毒素の腸内停滞が助長され、C. difficile感染症を悪化させるおそれがあるため、同感染症が疑われる場合には禁忌とされる。
4 誤
メトクロプラミド錠は、制吐薬であり、C. difficile感染症を誘発させる可能性は低い。
5 誤
酪酸菌製剤は、腸内細菌叢のバランスを整える整腸剤であり、抗菌薬による腸内細菌叢の乱れを補う目的で使用され、C. difficile感染症の発症予防や再発抑制に寄与する可能性がある。
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問233(衛生)
この患者から広がる可能性がある院内感染症とその防止のため、薬剤師が備えておくべき知識として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- この感染症の主な感染経路は間接伝播である。
- この原因菌は芽胞を形成するので、この患者が使用した食器の消毒には煮沸消毒(100°C、30分)が有効である。
- 消毒用エタノールによる手指の消毒が有効である。
- クレゾール石けんと流水による手洗いが有効である。
- 便座等の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効である。
[su_spoiler title=”解答・解説”]
解答
4、5
解説
Costridioides difficile(C. difficile)感染症は、抗菌薬の投与などにより腸内細菌叢のバランスが崩れることで発症する。芽胞を形成し、環境中で長期間生存できるため、院内感染源となりやすい。感染拡大を防ぐには、正しい知識と対策が不可欠である。
1 誤
C. difficile 感染症は、主に症状を有する患者との直接接触、あるいはその患者が触れた環境表面や物品(ベッド柵、トイレなど)を介した汚染物からの直接的な接触感染によって広がる。
2 誤
C. difficile は、芽胞を形成するため、一般的な煮沸消毒(100°C、30分)では無効である。十分な芽胞殺滅には、乾熱滅菌(180°C 、30分または160°C 、1時間)が必要とされる。なお、通常の食器は洗剤と流水による洗浄で対応可能であり、特別な処理は不要なことが多い。
3 誤
芽胞に対しては、アルコール系消毒剤(エタノール)では効果がない。C. difficile 感染症対策として、物理的除去(手洗い)が基本となる。
4 正
芽胞に対しては物理的に洗い流す手段が最も有効である。液体石けんと流水を用いた手洗いは、芽胞を物理的に除去できることから、院内感染予防に重要である。
5 正
C. difficile 感染患者が使用したトイレや便座の消毒には、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化力を持つ消毒薬が効果的である。特に共有トイレでは使用後の消毒が強く推奨される。
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