74歳女性。身長160cm、体重50kg。飲酒及び喫煙歴はない。てんかんの既往があり、以下の薬剤を10年以上服用し、外来受診時には脳波検査を行ってきた。1年以上、発作は起こっていない。今回、市が主催する骨密度検診で、骨密度の低下が指摘されたので、かかりつけの医療機関を受診し血液検査と骨密度測定を実施した。その結果をもとに、医師と薬剤師がカンファレンスを行った。
(検査値)
血清クレアチニン値1.6mg/dL、AST 32IU/L、ALT 29IU/L
ALP 410IU/L、補正Ca値 7.0mg/dL
intact–PTH 92pg/mL(標準値:10〜65pg/mL)
フェニトイン血中濃度10ng/mL
腰椎骨密度測定値若年成人平均値(YAM)の65%
問234(衛生)
この患者の病態に関連するビタミンやミネラルについての記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- intact–PTHが高値を示していることから、血中カルシウム濃度を正常に維持するために副甲状腺の機能が亢進していることがわかる。
- 血清カルシウム値の低下は、活性型ビタミンDによるカルシウム吸収促進能が低下したことによるものである。
- 副甲状腺の機能が亢進したことにより、腎臓でのカルシウム排泄が促進され、血清カルシウム値が低下している。
- ビタミンKを含む食品を摂取することで、腸管からのカルシウム吸収を促進することができる。
- ホウレンソウなどに含まれるフィチン酸と一緒にカルシウムを摂取することで、効率よくカルシウムを吸収することができる。
解答・解説
解答
1、2
解説
本患者は血清クレアチニン値(基準値:0.5〜1.3mg/dL)が高く、腎機能が低下しており、腎臓でビタミンDの活性化が低下し、腸管からのカルシウムの吸収の低下に伴って血中カルシウム濃度(基準値:8.5〜10.5mg/dL)が低下していると推察される。このことから、血中カルシウム濃度を正常に維持するために副甲状腺の機能が亢進しintact-PTHが高値を示していると考えられる。
1 正
前記参照
2 正
前記参照
3 誤
副甲状腺の機能が亢進したことにより、腎臓でのカルシウム吸収が促進している。
4 誤
腸管からのカルシウム吸収を促進するのは、ビタミンDである。
5 誤
ホウレンソウなどに含まれるフィチン酸と一緒にカルシウムを摂取すると、フィチン酸とカルシウムが不溶性塩を形成し、カルシウムの吸収が阻害される。
問235(実務)
薬剤師が医師に処方提案する薬剤として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- エルカトニン注
- アルファカルシドールカプセル
- イバンドロン酸ナトリウム水和物注
- アレンドロン酸ナトリウム水和物錠
- デノスマブ皮下注
解答・解説
解答
2
解説
1 誤
エルカトニン注は骨粗しょう症における疼痛に用いられる。本患者は痛みを訴えていないため、エルカトニン注を提案することは不適切である。
2 正
アルファカルシドールカプセルは、ビタミンD製剤であり、慢性腎不全におけるビタミンD代謝異常による低カルシウム血症、骨粗しょう症に用いられる。本患者は腎機能低下による低カルシウム血症、骨粗しょう症が認められるため、アルファカルシドールカプセルを提案することは適切である。
3 誤
イバンドロン酸ナトリウム水和物注、アレンドロン酸ナトリウム水和物錠は、ビスホスホネート製剤であり、骨粗しょう症に用いられるが、低カルシウム血症に投与禁忌である。本患者は低カルシウム血症が現れているため、ビスホスホネート製剤を提案することは不適切である。
4 誤
解説3参照
5 誤
デノスマブ皮下注は、抗RANKL抗体製剤であり、骨粗しょう症の治療に用いられるが、低カルシウム血症に投与禁忌である。本患者は低カルシウム血症が現れているため、デノスマブ皮下注を提案することは不適切である。
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