49歳男性。C型慢性肝炎の既往あり。昨年より肝硬変に起因する腹水が出現し、ループ利尿薬とアルブミン製剤が投与されていた。昨日、肝性脳症と診断され入院となり、分岐鎖アミノ酸製剤の点滴静注、ラクツロース及びカナマイシン一硫酸塩の経口投与を開始した。
問292 (病態・薬物治療)
本患者において、以下の所見が認められた。肝性脳症に最も関連が深いのはどれか。2つ選べ。
- 食道静脈瘤
- 浮腫
- 黄疸
- 高アンモニア血症
- 羽ばたき振戦
解答・解説
解答
4、5
解説
1 誤
肝硬変になると肝臓内の血管が狭窄し、肝臓に十分量の血液が移行することができなくなり、門脈及び食道静脈に血液が滞留する。それにより門脈圧の亢進や食道静脈瘤が発生する。
2 誤
肝硬変になると肝臓でのアルブミン合成能が低下し、血漿膠質浸透圧が低下することにより血液中の水分が細胞へ移行し、浮腫や腹水が発生する。
3 誤
肝硬変になると肝臓からのビリルビンの排泄が低下し、黄疸が発生する。
4 正
肝性脳症とは、肝機能の低下に伴う高アンモニア血症、フィッシャー比の低下により起こる脳症のことであり、その症状として意識障害、異常行動、羽ばたき振戦が認められることがある。
5 正
解説4参照
問293 (実務)
本症例に用いる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- アルブミン製剤は血漿膠質浸透圧を低下させる。
- ループ利尿薬は血中Na+を上昇させる。
- 分岐鎖アミノ酸製剤はフィッシャー比を低下させる。
- ラクツロースは消化管内のpHを低下させる。
- カナマイシン一硫酸塩は消化管内のアンモニアの発生を抑制する。
解答・解説
解答
4、5
解説
1 誤
アルブミン製剤は血液中のアルブミン濃度を上昇させるため、血漿膠質浸透圧を増加させる。
2 誤
ループ利尿薬は腎尿細管におけるヘンレ系蹄上行脚のNa+−K+−2Cl-共輸送系を抑制し、Na+の再吸収を抑制することにより血中Na+を低下させる。
3 誤
分岐鎖アミノ酸はフィッシャー比(分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸の比)を上昇させる。
4 正
ラクツロースは腸管内で腸内細菌により乳酸に代謝されるため、消化管内のpHを低下させ、腸内細菌によるアンモニアの生成を抑制する。
5 正
カナマイシン一硫酸塩はアミノグリコシド系抗生物質であり、消化管からほとんど吸収されないため、腸内細菌を死滅させ、腸内細菌によるアンモニアの生成を抑制する。
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[…] 第102回 問292〜293 […]