薬剤師国家試験出題項目

第Ⅰ相反応、第Ⅱ相反応

1 第I相反応

1)酸化反応

(1)シトクロムP450(CYP)による酸化反応
 シトクロムP450は様々な酸化反応を触媒する酵素であり、芳香環のヒドロキシ化、O−脱アルキル化、N−脱アルキル化、二重結合のエポキシ化などに関与する。

①:芳香環のヒドロキシ化
ワルファリンは、ラセミ体であり、その中でも特にS体が活性を示す。S−ワルファリンは、CYP2C9により代謝され、7位がヒドロキシ化される。

②:O−脱アルキル化
 コデインはCYP2D6によるO−脱アルキル化反応により活性代謝物であるモルヒネとなる。

③:N−脱アルキル化
 アミトリプチリンはCYP2C19によるN−脱アルキル化反応により活性代謝物であるノルトリプチリンとなる。

④:エポキシ化
 カルバマゼピンは、CYP3A4によりエポキシ化を受け、カルバマゼピン10,11−エポキシドとなり、その後、エポキシドヒドロラーゼにより、加水分解を受け、カルバマゼピン10,11−ジオールとなる。

(2)アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼによる酸化反応

アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は薬物の酸化およびエタノールの酸化に関与している。

日本人には、ALDHの活性の低い群PMが約45%も存在している。ALDHのPMでは、エタノールが代謝される過程でアセトアルデヒドが体内に蓄積し、顔面紅潮や頭痛を生じることがある。また、アルデヒドの酸化には、CYP2E1が関与しており、CYP2E1はエタノールの摂取により誘導されることから、エタノールを継続的に摂取すると、アセトアルデヒドが蓄積されにくくなる。

2)還元反応

(1)アゾ還元酵素
 サラゾスルファピリジンは、小腸からほとんど吸収されず、大部分が大腸に移行し、大腸に存在する腸内細菌が有するアゾ還元酵素の作用により、5−アミノサリチル酸とスルファピリジンに分解される。この還元反応により生成した5−アミノサリチル酸が腸管内にある炎症に効果を示す。

3)加水分解反応

(1)カルボキシルエステラーゼ(CES)
 カルボキシルエステラーゼは、アスピリンをはじめ多くの薬物の加水分解に関わっている。また、カルボキシルエステラーゼは、イリノテカン、テモカプリルなどのプロドラッグの代謝活性化に関与している。

2 第Ⅱ相反応

1)グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)

 モルヒネにはヒドロキシ基が3位と6位の2箇所に存在し、そのヒドロキシ基はグルクロン酸抱合のターゲットとなる。そのため、モルヒネがグルクロン酸抱合を受けると、モルヒネ6−グルクロニドとモルヒネ3−グルクロニドが生成する。なお、モルヒネ3−グルクロニドはほとんど鎮痛活性を有していないのに対し、モルヒネ6−グルクロニドは強い鎮痛作用を有する。

<参考:腸肝循環について>
ヒドロキシ基、カルボキシ基をターゲットとして、グルクロン酸抱合が起こると、エーテル結合の抱合代謝物、エステル結合の抱合代謝物が形成される。エステル結合の抱合代謝物は、腸内細菌のβ−グルクロニダーゼにより加水分解され、もとの薬物に戻り、腸管から再吸収されて腸肝循環を起こすことがある。

2)スルホトランスフェラーゼ(ST)

 スルホトランスフェラーゼとグルクロノシルトランスフェラーゼは、ターゲットとする官能基が共通するため、抱合反応が競合することがある。
アセトアミノフェン、サリチル酸は、グルクロン酸抱合、硫酸抱合を受け、生体内から排泄される。

3)N−アセチルトランスフェラーゼ(NAT)

 イソニアジドは、N−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)によりアセチル抱合を受け、尿中排泄される。

NAT2には遺伝子多形が存在しており、アセチル抱合能の高い人をrapid acetylator(RA)、アセチル抱合能の低い人をslow acetylator(SA)とよんでいる。日本人ではSAの割合が10%程度であるが、白人ではSAの割合が50〜60%と高い割合で存在している。

4)グルタチオン S−トランスフェラーゼ

 グルタチオンS−トランスフェラーゼは主に毒性を示すものの代謝に関与している。
アセトアミノフェンを大量投与すると、グルクロン酸抱合、硫酸抱合が飽和するため、CYP2E1による代謝が促進され、N−アセチル−p−ベンゾキノンイミンが生成する。

N−アセチル−p−ベンゾキノンイミンは、肝毒性を有しており、これによりアセトアミノフェン大量投与時に肝毒性が現れる。N−アセチルベンソキノンイミンは、グルタチオンS−トランスフェラーゼによりグルタチオン抱合体となりその後、アセチル抱合によりメルカプツール酸となり排泄される。

◇関連問題◇
第97回問169、第98回問236、第102回問209、第103回問194、第104回問166、第104回問188

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