薬剤師国家試験出題項目

知覚神経系に作用する薬

体性神経系には、知覚(感覚)神経と運動神経がある。知覚神経の細胞体は神経節にあり、その軸索は2方向に分かれ、一方は末梢の知覚受容体、もう一方は脊髄に向かっている。末梢における刺激は、受容器(温熱受容器、かゆみ受容器、侵害受容器など)を介して受け入れられ、インパルスとなり脊髄に伝わり、上行して大脳知覚領に達する。

感覚には、圧覚、痛覚、触覚、温度感覚があり、その中でも痛覚は侵害受容器を介して受け入れられた刺激であり、危険信号として重要な役割を果たしている。

1 興奮の伝導

 刺激のない状態では、神経細胞の内側はマイナス(-)、外側はプラス(+)に分極しており、この内外で作られるイオンの分布の差により神経細胞の内外で電位差を生じる。この状態において発生する電位差を静止膜電位(-50〜-90mV)という。
神経細胞が刺激されると、細胞外から細胞内にNaが流入することにより、分極状態が消失し、脱分極状態となると共に活動電位が発生する。

興奮部は、非興奮部と帯電状態が異なるため、局所電流が発生する。この局所電流は刺激電流として作用し、非興奮部を脱分極させる。その結果、この興奮は隣接部に広がっていく。

2 局所麻酔の適用法

局所麻酔薬は、作用させたい範囲に応じて適用法が異なる。局所麻酔薬の適用法には、表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)がある。

3 局所麻酔薬の作用機序

局所麻酔薬の作用部位は、細胞質側にあるため、局所麻酔薬が作用するためには、神経周辺の組織に薬物が浸透することが必要となる。適用部位のpHが弱アルカリ性の場合、局所麻酔薬の一部は、非イオン型となり、細胞膜を通過して神経細胞質内に移行する。細胞質内に移行した非イオン型の局所麻酔薬は神経細胞質内で陽イオン型となり、細胞膜の電位依存性Naチャネルに結合して遮断する。

4 局所麻酔薬の特徴

1)非特異的作用

局所麻酔薬は、知覚神経のNaチャネルに作用すると共に他の末梢神経や中枢神経、心筋などのNaチャネルにも作用する。このことから局所麻酔薬を用いると、痛みの伝達阻害だけでなく、感覚麻痺や運動麻痺などをきたすことがある。

2)作用順

局所麻酔薬は神経軸索が細いほど作用しやすい。感覚麻痺は痛覚(C線維)→温覚(Aδ線維)→触覚・圧覚(Aβ線維)の順に起こる。このことから、温覚が消失していれば痛覚が消失していると考えられるため手術が実施される。

3)pHによる影響

ほどんどの局所麻酔薬は、第二級、第三級アミンであることから、pHが低い酸性部位ではイオン形で存在するため、作用が減弱する。このことから、ほとんどの局所麻酔薬は、感染・炎症部位、胃などの酸性部位では作用を示さない。

4)血管収縮薬の併用

ほどんどの局所麻酔薬は、血管拡張作用を有する。血管が拡張すると、局所麻酔薬が作用部位から速やかに吸収され、局所濃度が低下し、十分な作用を示すことができないことがある。また、全身に吸収されることにより中毒症状を発現することがある。
このことから、血管収縮作用を有しない局所麻酔薬には、フェニレフリンなどの血管収縮薬が併用される。血管収縮薬を併用することにより、麻酔作用の増強、作用持続時間の延長、全身性の副作用の軽減を期待することができる。

5 代表的な局所麻酔薬

 局所麻酔薬には、コカの葉から得られるアルカロイドであるコカインと合成品がある。合成局所麻酔薬は、アミドまたはエステル部分、芳香族残基(脂溶性部分)、アミノ基(水溶性部分)を有する。

ほとんどの局所麻酔薬は、第二級または第三級アミンであり、弱塩基性を示す。

1)アルカロイド(天然品)

① コカイン

<作用>
・末梢神経軸索のNaチャネルを遮断することにより、局所麻酔作用を示す。
・神経終末においてモノアミントランスポーターを阻害することにより、交感神経興奮様作用、中枢興奮作用を示す。

<適用>
表面麻酔

<主な副作用>
 ショック、振戦、痙攣、眠気、不安、興奮など

<補足>
・精神依存を生じることがある。
・組織浸透性は良いが、毒性や依存性を示すため表面麻酔以外の方法では用いない。
・シナプス間隙のノルアドレナリンを上昇させ、血管を収縮させるため、作用が持続する。

2)エステル型局所麻酔薬

① プロカイン ② テトラカイン ③ アミノ安息香酸エチル ④ オキシブプロカイン

<作用>
・末梢神経軸索のNaチャネルを遮断することにより、局所麻酔作用を示す。

<適用>
①:浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔
②:表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔
③:表面麻酔
④:表面麻酔(眼科領域)

<主な副作用>
 ショック、振戦、痙攣、過敏症 など

<補足>
・血中エステラーゼにより分解されるため、作用時間が短く、代謝物によるアレルギー反応をきたしやすい。
・テトラカインは作用、毒性とも強い(プロカインの約10倍)。
・血管収縮作用を有していない。
・①:皮膚・粘膜透過力が弱く、表面麻酔以外の方法で用いられる。

3)アミド型局所麻酔薬

① リドカイン ② ジブカイン ③ メピバカイン ④ ブピバカイン ⑤ オキセサゼイン

<作用>
・末梢神経軸索のNaチャネルを遮断することにより、局所麻酔作用を示す。

<適用>
①:表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔
②:表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔
③:浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔
④:伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔
⑤:表面麻酔(胃炎・消化性潰瘍による疼痛・嘔吐など)

<主な副作用>
 ショック、振戦、痙攣、異常感覚 など

<補足>
・血中エステラーゼにより分解されないため、作用時間が長いものが多い。
・①、②:血管収縮作用を有していない
・③、④:弱い血管収縮作用を有しているため、血管収縮薬を併用しなくても十分な効果が得られる。
・⑤:強酸性条件下でも作用を示すことから、胃粘膜局所麻酔薬として用いられる。
・⑤:局所麻酔作用のほか、ガストリン遊離抑制作用、胃酸分泌抑制作用、胃腸管蠕動運動抑制作用を有する。

◇関連問題◇
第97回問154、第98回問29、第100回問28、第101回問154、第102回問154

◇テキスト◇
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