覚えること
- 痛覚などの感覚情報は、末梢の受容器で受け取られ、知覚神経を通って中枢へ伝えられる。
- 神経の興奮伝導には電位依存性Na+チャネルが重要である。
- 局所麻酔薬は電位依存性Na+チャネルを遮断して、活動電位の発生・伝導を抑える。
- 局所麻酔薬は非イオン型で細胞膜を通過し、細胞内で陽イオン型となってNa+チャネルを遮断する。
- 炎症部位など酸性環境では作用が弱くなる。
- 神経線維は細いほど局所麻酔薬の影響を受けやすく、痛覚 → 温覚 → 触覚・圧覚の順に麻痺しやすい。
- 局所麻酔薬は大きくエステル型とアミド型に分けて整理する。
知覚神経とは?
体性神経系には、知覚(感覚)神経と運動神経がある。
皮膚や組織に加わった刺激は、温度受容器、侵害受容器、かゆみ受容器などの受容器で受け取られ、電気的な信号に変換される。
その信号は知覚神経を通って脊髄へ伝わり、さらに上行して大脳知覚領へ到達することで、痛み、温度、触覚、圧覚などとして認識される。
しもっち局所麻酔薬は痛みそのものを消しているのではなく、痛みの情報を途中で伝わらなくしている薬なんだよ。
神経の興奮はどう伝わる?
刺激を受けていない神経細胞では、細胞膜の内側が外側に対して負となっている。
この状態を静止膜電位という。
神経細胞が刺激されると、電位依存性Na+チャネルが開口し、Na+が細胞内へ流入する。
その結果、細胞膜が脱分極し、活動電位が発生する。
発生した興奮によって隣接部にも局所電流が生じ、
次々と脱分極が起こることで、
神経の興奮が軸索に沿って伝導していく。
刺激→Na+チャネル開口→Na+流入
→脱分極・活動電位発生→隣接部へ興奮が伝わる
局所麻酔薬
局所麻酔薬の作用機序
局所麻酔薬は、電位依存性Na+チャネルを遮断することで、知覚神経における活動電位の発生・伝導を抑制する。
ただし、薬物が神経の外側からそのままNa+チャネルを遮断するわけではない。
①非イオン型で細胞膜を通過する
多くの局所麻酔薬は弱塩基性の第二級または第三級アミンであり、イオン型と非イオン型の平衡状態で存在する。
このうち非イオン型は脂溶性が高いため、神経細胞膜を通過して細胞内へ移行できる。
② 細胞内で陽イオン型になる
細胞内へ移行した局所麻酔薬は、再び陽イオン型となる。
③ Na+チャネルを内側から遮断する
陽イオン型の局所麻酔薬が、神経細胞膜の内側から電位依存性Na+チャネルに結合する。
その結果、Na+の細胞内流入が抑制され、活動電位を発生・伝導できなくなるため、痛覚の伝達が遮断される。
非イオン型→細胞膜を通過→細胞内で陽イオン型
→Na+チャネルを内側から遮断→Na+流入↓
→活動電位の伝導を抑制→局所麻酔作用



膜を通るのは「非イオン型」、Na+チャネルを遮断するのは「陽イオン型」です。
「非イオン型がNa+チャネルを遮断する」と入れ替えた選択肢に注意しよう。
炎症部位では局所麻酔薬が効きにくい
多くの局所麻酔薬は弱塩基性薬物である。
炎症部位では組織のpHが低下して酸性側に傾く。
酸性環境では局所麻酔薬のイオン型の割合が増加し、細胞膜を通過できる非イオン型が減少する。
そのため、神経細胞内へ到達できる薬物量が減り、局所麻酔作用が弱くなる。
炎症→組織pH↓(酸性)→イオン型↑
→非イオン型↓→細胞膜を通過しにくい→局所麻酔作用↓



局所麻酔薬は弱塩基性だから、酸性 → イオン型↑ → 膜を通れないまでつなげれば答えられるよ。
どの感覚から麻痺する?
局所麻酔薬は一般に、太い神経線維より細い神経線維に作用しやすい。
そのため感覚麻痺は、おおむね痛覚 → 温覚 → 触覚・圧覚の順に起こる。
- 痛覚:C線維
- 温覚:Aδ線維
- 触覚・圧覚:Aβ線維
痛覚が比較的早く遮断されるため、触られている感覚が残っていても痛みは感じないという状態が起こり得る。



細い線維ほど先にブロックされるので、まず痛覚が消えて、その後に温覚、触覚・圧覚が消えていくと考えよう。
血管収縮薬を併用する理由
多くの局所麻酔薬は、局所血管を拡張させる方向に作用する。
血管が拡張すると局所麻酔薬が血流によって速やかに運び去られ、作用部位の薬物濃度が低下する。
そこで血管収縮薬を併用すると、局所血流が低下して薬物が作用部位にとどまりやすくなり、局所麻酔作用を持続させることができる。
さらに、全身への吸収を抑えることで、全身性副作用の軽減にもつながる。
血管収縮→局所血流↓→局所麻酔薬が流されにくい
→局所濃度を維持→作用時間↑ + 全身吸収↓
局所麻酔薬の基本構造
多くの局所麻酔薬は、脂溶性の芳香族部分、中間鎖、親水性のアミノ基からなる基本構造をもつ。局所麻酔薬は、この中間鎖の構造によって、エステル型とアミド型に分類される。
- エステル型:中間鎖にエステル結合(-COO-)をもつ
- アミド型:中間鎖にアミド結合(-CONH-)をもつ
この構造の違いは、代謝のされ方にも関係する。
エステル型は血中エステラーゼによって分解されやすく、アミド型はエステラーゼによる分解を受けにくい。
代表的な局所麻酔薬
コカイン
コカインは天然アルカロイドであり、末梢神経軸索のNa+チャネルを遮断して局所麻酔作用を示す。
さらに、神経終末におけるモノアミントランスポーターを阻害し、ノルアドレナリンなどの再取り込みを抑制する。
その結果、交感神経興奮作用、中枢興奮作用を示す。
また、局所のノルアドレナリン濃度が上昇することで血管収縮作用を示すため、他の多くの局所麻酔薬とは異なり、局所にとどまりやすい。
依存性や毒性の問題があるため、主に表面麻酔に用いられる。



Na+チャネル遮断だけでなく、NA再取り込み阻害 → 血管収縮までセットで覚えよう。
エステル型局所麻酔薬
代表薬には、プロカイン、テトラカイン、オキシブプロカインなどがある。
いずれも電位依存性Na+チャネルを遮断し、局所麻酔作用を示す。
エステル型は血中エステラーゼによって分解されやすいため、比較的作用時間が短い薬が多い。
また、代謝物によりアレルギー反応を起こしやすいことも特徴である。
⚫️プロカイン
プロカインはエステル型局所麻酔薬である。
皮膚・粘膜への浸透性が低いため、
表面麻酔には不向きである。
浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔などに用いられる。
⚫️テトラカイン
テトラカインもエステル型局所麻酔薬であり、表面麻酔にも使用できる。
⚫️オキシブプロカイン
オキシブプロカインは主に眼科領域の表面麻酔に用いられる。
アミド型局所麻酔薬
代表薬には、リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、オキセサゼインなどがある。
アミド型は血中エステラーゼでは分解されにくく、エステル型と比較して作用時間が長い薬が多い。
⚫️リドカイン
リドカインは代表的なアミド型局所麻酔薬であり、電位依存性Na+チャネルを遮断して局所麻酔作用を示す。
表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、硬膜外麻酔など、幅広い局所麻酔に用いられる。
また、心筋のNa+チャネルにも作用するため、Ⅰb群抗不整脈薬としても用いられる。



でも作用点は共通してNa+チャネル。
神経に作用すれば局所麻酔、心筋に作用すれば抗不整脈、とつなげると覚えやすいよ。
⚫️メピバカイン
メピバカインはアミド型局所麻酔薬であり、細胞内側から電位依存性Na+チャネルを遮断する。
また、太い神経線維よりも細い神経線維の興奮伝導を抑制しやすい。
⚫️ブピバカイン
ブピバカインはアミド型局所麻酔薬であり、伝達麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔などに用いられる。
⚫️オキセサゼイン
オキセサゼインは、他の多くの局所麻酔薬と異なり、強酸性条件下でも局所麻酔作用を示すことが特徴である。
そのため、胃炎、胃・十二指腸潰瘍などに伴う疼痛に用いられる。
さらに、ガストリン遊離抑制、胃酸分泌抑制、胃腸管運動抑制などの作用も有する。



でもオキセサゼインは強酸性条件でも作用する。だから「胃」という強酸性環境で使える、とつなげて覚えよう。
エステル型とアミド型を区別しよう
国家試験では、構造・代謝・アレルギーまでつなげて問われる。
- エステル型:プロカイン、テトラカイン、オキシブプロカインなど
- アミド型:リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、オキセサゼインなど
エステル型は血中エステラーゼによって分解されやすい。
一方、アミド型は血中エステラーゼによる分解を受けにくいため、一般に作用時間が長い薬が多い。



リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン → アミド型
プロカイン、テトラカイン → エステル型
まずは 「濁点あり=アミド、なし=エステル」 を目安にすると見分けやすいよ。
国家試験での狙い目
- 局所麻酔薬 → 電位依存性Na+チャネル遮断を最優先で押さえる。
- 非イオン型で膜通過 → 細胞内で陽イオン型 → 内側からNa+チャネル遮断の流れを説明できるようにする。
- 酸性環境 → イオン型↑ → 膜透過↓ → 局所麻酔作用↓を理解する。
- 細い神経線維ほど作用を受けやすい。
- 痛覚 → 温覚 → 触覚・圧覚の順に麻痺しやすい。
- 血管収縮薬併用 → 局所麻酔作用持続+全身吸収低下を押さえる。
- コカイン → Na+遮断+モノアミン再取り込み阻害+血管収縮を押さえる。
- プロカイン=エステル型、リドカイン=アミド型を区別する。
- エステル型 → 血中エステラーゼで分解されやすい+アレルギーを起こしやすい。
- オキセサゼイン → 強酸性条件でも作用 → 胃炎・消化性潰瘍を押さえる。



① 非イオン型で膜を通る
② 細胞内で陽イオン型になる
③ Na+チャネルを内側から遮断する
この流れが分かれば、炎症で効きにくい理由やpHの問題までまとめて解けるよ。
1問1答で確認しよう
Q1.局所麻酔薬の主な作用点は?
→ 電位依存性Na+チャネル。
Q2.局所麻酔薬が細胞膜を通過するときの形は?
→ 非イオン型。
Q3.Na+チャネルを遮断するときの形は?
→ 陽イオン型。
Q4.炎症部位で局所麻酔薬が効きにくい理由は?
→ 酸性環境でイオン型が増え、細胞膜を通過しにくくなるため。
Q5.局所麻酔では、痛覚・温覚・触覚のどれが最も早く麻痺しやすい?
→ 痛覚。
Q6.血管収縮薬を局所麻酔薬に併用する主な理由は?
→ 局所濃度を維持して作用を持続させ、全身吸収を抑えるため。
Q7.エステル型局所麻酔薬の代表薬は?
→ プロカイン、テトラカインなど。
Q8.アミド型局所麻酔薬の代表薬は?
→ リドカイン、メピバカイン、ブピバカインなど。
Q9.モノアミン再取り込み阻害作用を有する局所麻酔薬は?
→ コカイン。
Q10.強酸性条件下でも局所麻酔作用を示す薬物は?
→ オキセサゼイン。




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