覚えること
- 睡眠薬は、「GABAの抑制を強める」「睡眠リズムを整える」「覚醒を抑える」の3方向で整理すると分かりやすい。
- バルビツール酸系・ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系は、GABAA受容体を介して神経の興奮を抑える。
- ラメルテオンはメラトニンMT1・MT2受容体を刺激する。
- スボレキサント・レンボレキサントはオレキシン受容体を遮断し、覚醒を抑える。
- 睡眠薬では、作用機序だけでなく作用時間、副作用、依存、相互作用も国家試験で重要である。
睡眠を理解する
睡眠は、大きくレム睡眠(REM睡眠)とノンレム睡眠(non-REM睡眠)に分けられる。
レム睡眠
レム睡眠では急速眼球運動が認められ、脳は比較的活動している一方、身体の筋肉は弛緩している。また、夢をみることが多い睡眠段階である。
ノンレム睡眠
ノンレム睡眠では急速眼球運動はみられず、脳の活動が低下している一方、筋緊張はある程度保たれている。
しもっち神経の興奮を抑える → GABA系
体内時計・睡眠リズムに働く → メラトニン系
覚醒そのものを抑える → オレキシン系
この3本柱で整理すると、薬が増えても混乱しにくいよ。
GABAA受容体に作用する睡眠薬
GABAは中枢神経系の代表的な抑制性神経伝達物質である。GABAがGABAA受容体に結合するとCl−チャネルが開口し、Cl−が細胞内へ流入する。その結果、神経細胞が過分極して興奮しにくくなる。
GABAA受容体の作用を増強→Cl−チャネル開口を促進
→Cl−の細胞内流入↑→神経細胞が過分極
→神経の興奮↓→催眠作用
GABAA受容体に作用する睡眠薬には、バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系がある。
バルビツール酸系催眠薬
バルビツール酸系薬は、GABAA受容体のバルビツール酸結合部位に作用し、GABA神経系による抑制を強めることで鎮静・催眠作用を示す。
代表薬として、バルビタール、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール
などがある。また、フェノバルビタールは主に抗てんかん薬として、チオペンタールやチアミラールは静脈麻酔薬として用いられる。
特徴
- 鎮静・催眠作用を示す。
- 抗痙攣作用や麻酔作用を示す薬もある。
- REM睡眠を抑制しやすい。
- 過量投与では呼吸抑制を起こすことがある。
- 長期使用では耐性・依存に注意する。
バルビツール酸系は、現在の睡眠薬の中心ではない。
「呼吸抑制・依存を起こしやすい」「REM睡眠を抑制しやすい」
という特徴をベンゾジアゼピン系と比較できるようにしよう。
ベンゾジアゼピン系催眠薬
ベンゾジアゼピン系薬は、GABAA受容体に存在するベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAによるCl−チャネル開口を促進する。その結果、神経細胞が過分極して中枢神経の興奮が抑えられ、催眠作用を示す。
代表薬には、トリアゾラム、ブロチゾラム、ニトラゼパム、フルニトラゼパム、クアゼパムなどがある。
作用時間による分類
ベンゾジアゼピン系催眠薬は、作用時間によって超短時間型・短時間型・中時間型・長時間型に分類される。まずは、それぞれの代表薬を1つずつ押さえておこう。
- 超短時間型:トリアゾラム
- 短時間型:ブロチゾラム
- 中時間型:フルニトラゼパム
- 長時間型:クアゼパム
作用時間が短い薬は入眠障害に用いやすい一方、反跳性不眠や前向性健忘などに注意する。作用時間が長い薬では、睡眠を維持しやすい一方、翌朝まで眠気が残る持ち越し効果に注意する。



さらに、作用時間が短い → 反跳性不眠・前向性健忘、作用時間が長い → 持ち越し効果までつなげておくと、症例問題でも判断しやすくなるよ。
副作用・注意点
- 前向性健忘
- 筋弛緩
- 眠気・ふらつき
- 反跳性不眠
- 耐性・依存
- 翌朝まで眠気が残る持ち越し効果
フルマゼニル
フルマゼニルはベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であり、ベンゾジアゼピン系薬による鎮静作用などに拮抗する。



短時間型 → 反跳性不眠・前向性健忘
長時間型 → 翌朝まで残る持ち越し効果
作用時間から副作用を考えられるようになると、丸暗記がかなり減るよ。
ω受容体
GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位は、ω(オメガ)受容体とも呼ばれる。
- ω1:鎮静、催眠、健忘などに関与する。
- ω2:抗不安、筋弛緩、抗痙攣などに関与する。
この違いは、非ベンゾジアゼピン系のゾルピデムを理解するときに重要となる。
非ベンゾジアゼピン系催眠薬
非ベンゾジアゼピン系薬は、ベンゾジアゼピン系薬とは構造が異なるが、GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用する。
代表薬には、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンがある。
ゾルピデム
ゾルピデムはω1受容体に選択性が高いため、催眠作用を示す一方、ω2受容体を介する筋弛緩作用などが比較的現れにくいことが特徴である。



ゾルピデム → ω1選択性 → 催眠作用
ここまでつなげておこう。
「非ベンゾジアゼピン系なのに、作用する場所はベンゾジアゼピン結合部位」というところもひっかけやすいよ。
メラトニン受容体作動薬
ラメルテオン
ラメルテオンは、睡眠・覚醒リズムに関与するメラトニンMT1及びMT2受容体を刺激し、睡眠を誘発する。
GABA神経系を直接増強する薬ではないため、ベンゾジアゼピン系とは作用機序が異なる。
また、ラメルテオンは主にCYP1A2で代謝されるため、CYP1A2を強く阻害するフルボキサミンとは併用禁忌である。
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシンは覚醒を促進する神経ペプチドである。
オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンによる覚醒作用を抑えることで、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させる。
代表薬として、スボレキサント、レンボレキサントなどがある。
オレキシン=起きる方向→オレキシン受容体を遮断
→覚醒作用↓→睡眠へ移行
スボレキサント
スボレキサントはオレキシン受容体へのオレキシンA・Bの結合を阻害し、覚醒を抑制することで催眠作用を示す。
主にCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を強く阻害する薬物との相互作用に注意する。
レンボレキサント
レンボレキサントもオレキシン受容体拮抗薬であり、オレキシンによる覚醒作用を抑制することで睡眠を促す。



GABA系 → 神経を抑制して眠らせる
オレキシン系 → 覚醒を抑えて眠りに移行させる
作用機序の違いを意識しよう。
その他の催眠・鎮静薬
ブロモバレリル尿素
ブロモバレリル尿素は、比較的速やかに催眠・鎮静作用を示す。
連用すると薬物依存を生じることがあり、急激な減量・中止では痙攣、せん妄、振戦、不安などの離脱症状に注意する。
国家試験での狙い目
睡眠薬では、薬物名を見て作用機序を答えるだけでなく、「どの受容体に作用するか」「作用時間はどうか」「どの副作用が起こりやすいか」まで判断できるようにする。
- バルビツール酸系 → GABAA受容体のバルビツール酸結合部位
- ベンゾジアゼピン系 → GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位
- ゾルピデム → 非ベンゾジアゼピン系 → ω1選択性
- フルマゼニル → ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬
- ラメルテオン → MT1・MT2受容体刺激
- ラメルテオン → CYP1A2 → フルボキサミンとの相互作用
- スボレキサント・レンボレキサント → オレキシン受容体拮抗
- スボレキサント → CYP3A4を押さえる。
- 短時間型では反跳性不眠・前向性健忘、長時間型では持ち越し効果に注目する。



GABAを強める
メラトニンで睡眠リズムに働く
オレキシンを止めて覚醒を抑える
まずこの3つに分類できれば、国家試験の選択肢はかなり整理しやすくなるよ。
1問1答で確認しよう
Q1.GABAA受容体が活性化されると、細胞内への流入が増加するイオンは?
→ Cl−
Q2.ベンゾジアゼピン系睡眠薬が結合する部位は?
→ GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位
Q3.ゾルピデムが選択的に作用する受容体は?
→ ω1受容体
Q4.ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬は?
→ フルマゼニル
Q5.ラメルテオンが刺激する受容体は?
→ メラトニンMT1・MT2受容体
Q6.ラメルテオンと併用禁忌となる代表的な薬物は?
→ フルボキサミン
Q7.スボレキサント、レンボレキサントの作用機序は?
→ オレキシン受容体を遮断し、覚醒を抑制する
Q8.スボレキサントの主な代謝酵素は?
→ CYP3A4
Q9.短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬で注意する副作用・現象は?
→ 反跳性不眠、前向性健忘など
Q10.長時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬で注意する現象は?
→ 持ち越し効果(翌朝の眠気)



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