薬剤師国家試験出題項目

眼に作用する薬

眼に作用する薬

1 散瞳薬・縮瞳薬

1)散瞳・縮瞳

 瞳孔は、交感神経に支配されている瞳孔散大筋と副交感神経に支配されている瞳孔括約筋により調節されている。
瞳孔散大筋にはアドレナリンα1受容体が存在し、交感神経系が優位になると、瞳孔散大筋が収縮し、散瞳が認められる。それに対して、瞳孔括約筋にはムスカリンM3受容体が存在し、副交感神経が優位になると瞳孔括約筋が収縮し、縮瞳が認められる。
 散瞳時には瞳孔散大筋が収縮し、分厚くなるため隅角が狭くなり、縮瞳時は瞳孔散大筋が弛緩し、薄くなるため隅角が広くなる。

2)散瞳薬

① フェニレフリン

・瞳孔散大筋のα1受容体を刺激し、瞳孔散大筋を収縮させる。
◇適応症◇
 診断又は治療を目的とする散瞳

② ホマトロピン ③ トロピカミド ④ シクロペントラート


・瞳孔括約筋のM3受容体を遮断し、瞳孔括約筋を弛緩させる。
・毛様体筋のM3受容体を遮断し、毛様体筋を弛緩させることにより水晶体を薄くする。
(遠視性調節麻痺を誘発する)
◇適応症◇
・診断又は治療を目的とする散瞳と調節麻痺

3)縮瞳薬

① ピロカルピン
・瞳孔括約筋のM3受容体を刺激し、瞳孔括約筋を収縮させる。
・毛様体筋のM3受容体を刺激し、毛様体筋を収縮させることにより水晶体を厚くする。
(近視性調節麻痺を誘発する)
◇適応症◇
・緑内障
・診断又は治療を目的とする縮瞳と調節麻痺

2 緑内障治療薬

1)緑内障

 緑内障とは、房水の産生と流出のバランスが崩れ、眼圧が上昇し、視神経(視神経乳頭)が障害されることにより視野障害が認められる疾患のことである。眼圧が高い状態が持続すると、視神経障害による視野障害が悪化するため、視野障害の進行を抑制するために眼圧をコントロールする必要がある。

(1)緑内障の分類

参考:眼の構造

虹彩+脈絡膜+毛様体=ぶどう膜

(2)房水の産生
 毛様体上皮細胞には、α2受容体、β2受容体、炭酸脱水酵素があり、それらが房水産生に関与している。

(3)房水の流出
 房水の10%はぶどう膜強膜流出路から流出し、残り80〜90%は線維柱帯流出路から流出される。房水流出には、α1受容体、PG受容体、M3受容体、β2受容体、Rhoキナーゼが関与している。

2)緑内障治療薬

(1)プロスタグランジン製剤
●プロストン系(代謝型プロスタグランジン誘導体)
① イソプロピルウノプロストン
●プロスト系(プロスタグランジンF2α誘導体)
① ラタノプロスト ② トラボプロスト
③ タフルプロスト ④ ビマトプロスト

・FP受容体(PGF2α受容体)を刺激し、ぶどう膜強膜からの房水流出を促進する。
・房水産生や瞳孔径に影響を与えない。
・β受容体遮断薬とともに第一選択薬として用いられている。
◇適応症◇
 緑内障、高眼圧症
◇副作用◇
 虹彩色素沈着(イソプロピルウノプロストン以外)、睫毛多毛、結膜充血 など

(2)β受容体遮断薬
●非選択的β受容体遮断薬
① チモロール ② カルテオロール 


●αβ受容体遮断薬
③ ニプラジロール
・β2受容体を遮断し、cAMPの産生を抑制することにより房水産生を減少させる。
・ニプラジロールは、α1受容体を遮断することでぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進する。
◇適応症◇
 緑内障、高眼圧症
◇副作用◇
 喘息発作、心不全、心ブロック、徐脈、低血圧症 など

(3)炭酸脱水酵素阻害薬
① アセタゾラミド ② ドルゾラミド ③ ブリンゾラミド 


・毛様体上皮細胞の炭酸脱水酵素を阻害することにより房水産生を抑制する。
・ドルゾラミド、ブリンゾラミドは、選択的に炭酸脱水酵素Ⅱ型を阻害する。
◇適応症◇
 緑内障

(4)α2受容体刺激薬
① ブリモニジン ② アプラクロニジン
・α2受容体を刺激し、房水産生抑制作用を示す。

 (5)α1受容体遮断薬
① ブナゾシン
・α1受容体を遮断し、ぶどう膜強膜流出路からの房水の排出を促進する。

(6)α,β受容体刺激薬
① ジビベフリン
・アドレナリンのプロドラッグであり、α2受容体を刺激し、房水産生を抑制する。
・β2受容体を刺激し、血管を拡張させることにより房水流出を促進する。
◇副作用◇
 散瞳、結膜炎、眼類天疱瘡

(7)副交感神経刺激薬
① ピロカルピン ② ジスチグミン
・毛様体筋を収縮させ、線維柱帯間隙を広げる。
・縮瞳により隅角を広げる。

(8)Rhoキナーゼ阻害薬
① リパスジル

・RhoキナーゼのアイソフォームであるヒトROCK−1,ROCK–2を選択的に阻害して、線維柱帯細胞の細胞骨格や細胞外マトリクスの構造を変化させ房水流出抵抗を低下させる。
◇適応症◇
緑内障、高眼圧症
◇副作用◇
充血(Rhoキナーゼ阻害による血管拡張が原因)

3 白内障治療薬

1)白内障

 白内障とは、水晶体に混濁が起こる疾患の総称であり、混濁部位により皮質白内障、嚢下白内障、核白内障に分類される。水晶体が混濁には、クリスタリン(水晶体の大部分を占める可溶性タンパク)が不溶化が関与しており、その原因として、キノイド説と酸化説の2つの説がある。

キノイド説
クリスタリンがアミノ酸の代謝異常で生じるキノイド物質と結合すると不溶性となり、水晶体が混濁する。
クリスタリンとキノイド物質の結合は不可逆的であるため、加齢に伴い、不溶性のクリスタリンが蓄積することにより白内障を誘発する。

酸化説
水晶体に存在するグルタチオンにより、クリスタリンのチオール基(–SH基)の酸化が防止されている。
加齢に伴い、グルタチオンが減少し、SH基が酸化されジスルフィド結合を形成することでクリスタリンが不溶性となり、白内障を誘発する。

2)白内障治療薬

① ピレノキシン
・キノイド物質がクリスタリンと結合することを競合的に阻害し、クリスタリンの変性を防止することにより白内障の進行を抑制する。

 ② グルタチオン

・グルタチオンを補充し、クリスタリンのSH基の酸化を抑制することにより白内障の信仰を抑制する。

4 加齢黄斑変性症治療薬

1)加齢黄斑変性症
(AMD:age-related macular degeneration)

 加齢黄斑変性症とは、加齢に伴い網膜の黄斑が変性する疾患であり、黄斑の萎縮のみを呈する萎縮型と新生血管を伴う滲出型に分類される。

萎縮型加齢黄斑変性症
網膜の細胞が加齢により変性し、徐々に萎縮して進行する。
視野障害は滲出型に比べ軽度。

滲出型加齢黄斑変性症
黄斑部の網膜下に脈絡膜新生血管が発生し、脈絡膜新生血管から滲出液が漏出することや出血することで網膜が障害され、視機能に異常を生じる。
脈絡膜新生血管の発現に関わる血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を阻害することで進行を抑制することができる。

2)加齢黄斑変性症治療薬

 ① ペガプタニブナトリウム
・抗VEGFアプタマー製剤
・VEGF–Aに結合し、VEGF–AのVEGF受容体への結合を阻害し、脈絡膜の血管新生を抑制する。
 ② ラニビズマブ
・ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体Fab断片
・VEGF–Aに結合し、VEGF–AのVEGF受容体への結合を阻害し、脈絡膜の血管新生を抑制する。
 ③ アフリベルセプト
・VEGF受容体の一部をIgGのFc部に融合した遺伝子組み換え受容体融合タンパク
・幅広くVEGFファミリーと結合し、VEGFの作用を抑制することで脈絡膜の血管新生を抑制する。

 5 その他の点眼薬

① 精製ヒアルロン酸ナトリウム


・フィブロネクチンと結合し、上皮細胞の接着、伸展を促進する。
・分子内に多数の水分子を保持することにより優れた保水性を示す。
◇適応症◇
 シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、ドライアイ等の内因性疾患に伴う角膜上皮障害
術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装着時の外因性疾患に伴う角結膜上皮障害

② レバミピド
・角膜上皮細胞のムチン遺伝子発現を亢進し、ムチン産生を促進する。
・角膜上皮細胞の増殖を促進する。
◇適応症◇
 ドライアイ

③ ジクアホソル
・結膜上皮及び杯細胞膜上に存在するP2Y2受容体に作用し、細胞内のカルシウム濃度を上昇させ、水分およびムチンの分泌を促進する。

◇適応症◇
 ドライアイ

◇関連問題◇
第97回問152、第97回問153、第98回問246〜247、第99回問153、第104回問152

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