薬剤師国家試験出題項目

画像診断技術

画像診断技術とは、放射線、核磁気共鳴、超音波、可視光線などを用いて、体外から生体内部の形態や機能を測定し、それらを視覚的に読み取れる画像にする技術のことであり、物理的手法を利用しているため、物理的診断法ともいわれる。
画像診断技術(物理的診断法)の代表的なものとして、X線診断法、磁気共鳴画像診断法、超音波診断法、核医学診断法、内視鏡検査法などがある。

1 X線診断法

 X線診断法には、単純X線撮影法とX線コンピューター断層撮影法(X線CT)があり、これらは生体内の組織、臓器のX線に対する透過率(吸収率)の差を利用して画像化している。生体内の組織、臓器のX線吸収率については、骨≫血液、心臓、肝臓、腎臓>脂肪≫肺の順となっており、X線診断装置では、X線照射時に透過してきたX線を画像化している。X線診断法では、生体に対してX線を照射することから、X線被曝に対して注意する必要がある。

)単純X線撮影法

 単純X線撮影法では、X線管で発生させたX線を体外から被験者に照射し、身体を透過したX線をX線感光フィルムを用いて画像化する方法である。
単純X線撮影法で得られる画像については、X線の透過率の低い骨などは白く写り、X線透過率の高い肺などは黒く写る。

より鮮明な画像が必要な場合については、造影剤を用いるX線造影撮影法(造影検査)が行われることがある。X線造影撮影法では、陽性造影剤と陰性造影剤が用いられることがある。陽性造影剤とは、X線の吸収率が高い造影剤(硫酸バリウムやヨード化合物など)であり、X線の吸収率を高くすることで画像を鮮明にする目的で投与される。また、陰性造影剤とは、X線の吸収率が低い造影剤(空気、炭酸ガスなど)であり、投与すると周辺組織よりもX線吸収が低下してコントラストが強調させる。

2)X線コンピューター断層撮影法(X線CT、CTスキャン)

 X線コンピューター断層撮影法(X線CT、CTスキャン)は、人体の周囲にX線を発するX線管と高感度のX線検出器の対を360°回転させながら多方向から体内を透過したX線量を測定し、得られたデータをコンピューター処理することにより、X線の吸収値(CT値)の違いから画像化する方法である。

X線コンピューター断層撮影法(X線CT、CTスキャン)では、単純X線撮影法と異なり、三次元画像を得ることができるため、病変部位の深さなどの情報を得ることができる。また、より鮮明な画像を必要とする場合には、造影剤を投与することがある。

・CT値について
 CT値は、水を「0」、空気を「-1000」、骨を「1000」としたX線の吸収(透過)の度合いを表す値であり、その値の大小関係は骨>筋肉>血液>脂肪>肺である。

2 磁気共鳴画像(MRI)診断法

 磁気共鳴画像(MRI)診断法は、核磁気共鳴(NMR)現象を利用した画像診断法である。MRIは、水素原子核(プロトン)が磁気内で特定の周波数を有する電磁波に受け共鳴現象を起こしたあと、電磁波を遮断し、基底状態に戻るまでの時間を画像化する方法である。磁気共鳴画像(MRI)診断法では、水の分布やその存在環境に関する情報を得ることができる。

) MRIの原理

 通常、プロトンのスピン軸は、さまざまな方向を向いているが、強力で方向が一定な静磁場中では、磁場方向と平行に配置するようになる。

磁場中のプロトンは首振り運動のような回転運動(歳差運動)をしており、そこに特定の波長を有する電磁波(ラーモア周波数を有する電磁波)を照射すると、プロトン原子核はそのエネルギーを吸収して励起状態となり、歳差運動の向きが変化する(この現象を磁気共鳴という。)。

磁場と平行であった磁気モーメントが傾くことで、横磁化が発生し、縦磁化が減少する。この状態でラジオ波の照射を中断すると、吸収したエネルギーを電磁波として放出しながら、ラジオ波を吸収する前の状態に戻る(この現象を緩和現象という。)。MRIでは、この緩和に要する時間をもとに画像化している。緩和については、縦磁化の緩和(縦磁化がもとの状態に戻る)および横磁化の緩和(横磁化の減少)があり、それぞれに要する時間を縦緩和時間(T1)、横緩和時間(T2)という。縦緩和時間(T1)については、信号の回復能力の指標とされており、横緩和時間(T2)については、信号持続能力の指標とされている。
歳差運動をしているプロトンは、磁場の強度が変化することにより共鳴周波数が変化する。このことを利用して、MRIでは、静磁場に加えて弱い磁場を段階的に加える(勾配磁場、傾斜磁場を加える)ことにより、信号を発している位置を決定することができる。

2) MRI診断法の特徴

・放射線被曝がない(非侵襲性)
・あらゆる方向の画像が得られる
・プロトンが存在しない場所については無信号であるため、空気などによる偽像を生じない
・撮影時間がX線CTに比べ長い

3) MRI造影剤

 MRIでは、コントラストのついた画像を得るために造影剤が用いられることがある。MRIで用いられる造影剤には、陽性造影剤と陰性造影剤があり、それらは、常磁性を有しており、造影剤の周囲に存在するプロトンの縦緩和時間(T1)、横緩和時間(T2)を短縮させる。

3 超音波診断法

 超音波とは、ヒトが聴くことができない高い周波数の音波のことである。超音波診断法では、超音波の性質を用いて、生体内の内部構造や血流の分布を画像化していく画像診断法である。超音波診断法では、周波数2〜20MHzの超音波が用いられることが多く、腹部では5〜7.5 MHz、深部臓器では2〜5 MHz程度の超音波が用いられる。
超音波は、媒質を介して伝播していき、音響インピーダンス(音の伝わりやすさ)の差が大きいところで反射される。組織の音響インピーダンスは、骨≫筋肉>血液、腎臓、肝臓>水>脂肪>空気となっていることから、超音波を体内に向かって照射すると、音響インピーダンスの変化するところで超音波は反射される。この反射された超音波を捉え、反射波の受信に要する時間から対象物質までの距離、反射波の振動の大きさから対象物の密度を分析することができる。

)超音波診断法の特徴

・放射線を用いていないため、被曝しない
・リアルタイムで画像化することが可能である
・ドップラー効果を用いて、血流速度や方向を調べることが可能である
・肺や消化管などガスを含む部位、骨に囲まれた部位の診断には適していない

<参考:ドップラー効果>
 波(音波や電磁波など)の発生源と観測者との相対的な速度の違いにより、波の周波数が異なって観測される現象
例:血管に対して、超音波を照射すると、音源に近づいてくる血液が反射する超音波の周波数が高く、音源から遠ざかる血液が反射する超音波の周波数が低くなる。

2)超音波造影剤

 超音波は音響インピーダンスの異なる境界で反射する性質を有していることから、音響インピーダンスが周囲組織と大きく異なる物質が超音波診断用造影剤として用いられる。

超音波診断用造影剤として用いられているものにガラクトース・パルミチン酸混合物(999:1)がある。ガラクトース・パルミチン酸混合物(999:1)は、水に溶解するとマイクロバブル(微小気泡)を発生する。マイクロバブルは、音響インピーダンスが極めて小さく、超音波シグナルの増強効果が極めて高い。

4 内視鏡検査法

 ファイバースコープ(グラスファイバーでできたチューブ)の先端に超小型カメラを埋め込んだチューブ(電子内視鏡)を体内に入れ、体外から観察することができない消化管などの状態を直接確認する方法を内視鏡検査法という。
内視鏡検査法で用いられるファイバースコープは、低屈折ガラスと高屈折ガラスの2重構造をしており、観察対象となる臓器を直接観察することができる。

5 核医学(画像)診断法

 放射性同位元素を含む化合物(放射性医薬品)を体内に投与して、体内から発せられる放射線を体外から検出することにより画像化する方法を核医学画像診断法という。核医学画像診断法は、X線CTやMRI、超音波診断法と異なり、投与された放射性医薬品と生体を構成する物質との相互作用を反映したものを画像化する。核医学診断法により得られた画像は、シンチグラムといわれ、シンチグラムを得るための画像手法をシンチグラフィーという。

1)単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)

SPECT装置には、2〜4個のシンチカメラが被験者を囲むように配置されており、これを一定の角度ごとで回転させる。それにより、多方向からの二次元データを収集し、これらをコンピューター処理することで体軸横断面を画像化することができる。
SPECTでは、主にγ線を放出する放射性核種(99mTc、123I、67Gaなど)を含む放射性医薬品が用いられる。

2)陽電子放射型断層撮影(PET)

β線を放出する核種を生体内に投与すると、β線が近傍の自由電子と結合して消滅し、その際に正反対の方向に消滅放射線が放出される。この消滅放射線を被験者の周囲を取囲むように配置した多数の小型γ線検出器により検出する。
検出されたγ線をもとにデータを収集し、その情報をコンピューター処理することにより体軸横断面を画像化することができる。
PETでは、主にβ線を放出する放射性核種(11C、13N、15N、18F)を含む放射性医薬品が用いられる。
PETはSPECTと異なり、2本の消滅放射線を同時に計測するため、PETの放射線検出感度はSPECTよりも高くなっている。

3)放射性医薬品

核医学画像診断法で用いられる放射性医薬品の代表例を以下に示す。

①:99mTc標識化合物
99mTcはγ線を放出し、その半減期(約6時間)は短く、99Mo−99mTcジェネレーターにより容易に入手できることから、核医学画像診断では最も広く用いられている。

②:123I化合物

123Iはγ線を放出し、その半減期(約13.2時間)は短く、低分子有機化合物からペプチド、タンパク質などの高分子化合物まで比較的容易に導入できることなどから、123I化合物は放射性医薬品として広く用いられている。

③:67Ga、201Tl化合物

クエン酸ガリウム(67Ga)は、静脈内投与後、血液中のトランスフェリンに結合し、腫瘍細胞や炎症細胞に存在するトランスフェリン受容体を介して腫瘍細胞や炎症細胞に集積する。また、201Tlイオンは、心臓に多く存在するNa−K−ATPaseの基質となることから、Na−K−ATPaseにより心臓に集積する。

④:18F、15O標識化合物

18F、15O標識化合物は、β線を放出するため、PET用放射性医薬品に用いられている。

18F−FDG(18F−フルオロデオキシグルコース)について

18F−FDG(18F−フルオロデオキシグルコース)は、グルコースのC2位のヒドロキシ基をフッ素で置換した誘導体である。18F−FDGはグルコースと同様にグルコース輸送担体(GULT)により細胞内に取り込まれ、ヘキソキナーゼによりリン酸化され、18F−FDG 6−リン酸となる。18F−FDG 6−リン酸は、グルコース6−リン酸と異なり、解糖系に関与しないため、生体内でエネルギー源として用いられることはなく、また、水溶性が高いため、グルコース−6−ホスファターゼにより脱リン酸化されるまで、細胞内に滞留する。
腫瘍細胞は、多くのグルコースを取り込み増殖することに加え、グルコース−6−ホスファターゼの活性が低い状態にあるため、18F−FDG 6−リン酸の集積性が高くなる。このことから、18F−FDGは一般腫瘍の診断に用いられている。

関連問題
第86回問35、第87回問35、第88回問229、第92回問35、第93回問35、第93回問231、第94回問35、第95回問236、第97回問236〜237、第98回問204〜205、第99回問204〜205、第99回問238〜239、第102回問236〜237

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