薬剤師国家試験出題項目

生理機能検査

1)心機能検査

 心臓は1分間に60〜70回拍動しており、全身に血液を送り出している。通常、右心房に存在する洞房結節で発生した興奮が心房に伝わり、左右の心房が収縮する。その後、房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維の順に興奮が伝えられ、心室が収縮することで血液が送り出される。この刺激伝導系の興奮は心電図として可視化することができる。

(1)心電図
 心電図には、標準12誘導心電図、ホルター心電図、運動負荷心電図がある。通常、安静状態では標準12誘導心電図、長時間の評価が必要な場合はホルター心電図、運動負荷を伴う労作性異常を評価する際には、運動負荷心電図がとられる。

●心電図の基本波形と異常をきたす病態
① P波
洞房結節から房室結節までの興奮を表す。通常、幅は0.1秒、高さは0.25mV以下である。
心房細動や心房粗動でP波が消失し、F波が出現する。
② PQ間隔
心房の興奮が心室に伝わるまでを反映している。通常、幅は0.12〜0.2秒程度である。
0.20秒以上でⅠ度房室ブロックとなる。
③ QRS
左右の脚およびプルキンエ線維の興奮を表す。心室性期外収縮や脚ブロックで広がる。
④ ST
心室興奮の持続を表す。心筋の虚血により低下することがある。
⑤ QT間隔
心室興奮時間を表す。
QT時間はRR間隔により影響を受けるため、QT時間をRR時間の平方根で除した補正QT(cQT)により評価する。cQT>0.45秒をQT延長とする。QT延長は、心筋梗塞、左室肥大、QT延長症候群で認められる。
⑥ T波
心室再分極時間を表す。虚血性心疾患、高K血症で増高、低K血症などで平低化が認められる。

(2)心拍出量
 一般に1分間に心臓から送り出される血液量を心拍出量(CO)といい、1回の拍出量(SV)と心拍数の積で表される。心拍出量の基準値は、約4〜8L/分であるが、多くの因子により変動するため、心臓の正確な機能評価には用いられない。心拍出量の正確な評価はカテーテル検査により行われるが、心臓超音波(心エコー)検査など、非侵襲的な方法によって評価されることがある。
心収縮力の指標として、左室駆出率(EF)が用いられる。EFは、心拍ごとに心臓が放出する血液量(駆出量)を拡張期の左心室容積で割ることにより算出される。基準値は55〜80%とされ、各種要因に伴う心収縮力の低下などにより低下する。

 (3)画像検査
 心臓の形態学的および機能的異常の評価には、X線検査やエコー検査、カテーテル検査、コンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)が用いられることがある。心臓の大きさの評価には心胸郭比(胸郭横径に対する心横径の比率の百分率:CTR)が用いられ、その基準値は50%以下である。また、超音波検査では、心臓壁の厚さ、形状を評価するとともに、血流を評価することができる。各種画像診断で異常がある場合には、より正確な情報を得るために心カテーテル検査を行う。

2)腎機能検査

 腎機能は、糸球体濾過量(GFR)より推察することが可能であるため、腎臓での濾過能を評価するために、イヌリンやクレアチニンの排泄能の評価が行われる。イヌリンは生体内で代謝を受けず、糸球体濾過により消失することから、その腎クリアランスはGFRに相当する。しかし、臨床的には生体内にあるクレアチニンの血中濃度を調べ、下記の式より、推算GFR(eGFR)を用いて腎機能を評価する。

また、クレアチニンクリアランス(Ccr)が腎機能を推察する際に用いられる。クレアチニンクリアランスは、下記の式から求めることが可能である。

クレアチニンクリアランスの基準値は、男性:90〜120mL/min、女性:80〜110mL/minである。

3)肝機能検査(ICG検査)

 肝機能を評価する検査にICG検査がある。ICG検査では、緑色の色素であるインドシアニングリーン(ICG)を体内に注入し、一定時間毎の残留度を測定することで、肝臓の代謝能、血流量を評価することが可能である。ICGは、肝臓に輸送され、抱合を受けずに胆汁中に排泄されることから、ICGの血中消失速度は、有効肝血流量や肝細胞の輸送能を反映する。

血中滞留率を測定する場合 肝臓の最大色素排泄能を評価する場合
ICGを静注し、15分後の血液中IGC残留率を(R15)を測定する。R15の基準値は10以下であり、R15が高値を示した場合、ICG血中消失率(K値:基準値0.16〜0.20)を評価する。

<R15高値でK値が0.16以下の場合>

肝硬変、肝炎、肝がん

ICG負荷量を変化させて2回投与し、ICG最大除去率(Rmax)を算出する。

Rmaxは肝切除を行う場合の残存肝細胞機能を予測する指標として用いられる。

 4)呼吸機能検査

 呼吸機能検査の評価は、はじめに呼吸音の聴診を行い、気体の流れや異常のある部位を推定する。聴診により異常が認められた場合には、X線撮影やCT、MRIなど画像診断法や肺機能検査(スパイロメトリー)が行われる。

(1)聴診
 胸部聴診の際に聞こえる音は「呼吸音」と「副雑音」の2つに分類される。呼吸音には、気管呼吸音、気管支呼吸音、肺胞呼吸音があり、正常な呼吸音が聴こえている場合は問題ないが、呼吸音が弱くなる、聴こえなくなる、呼吸音が遅れるなど異常が認められた場合には注意が必要である。

呼吸音の異常 疑われる疾患
呼吸音が弱くなる、聴こえなくなる 気胸、胸水、無気肺
呼吸音が遅れる 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息

また、異常な音を副雑音という。副雑音にはラ音があり、ラ音は断続性ラ音(水泡音、捻髪音)、連続性ラ音(笛音、いびき音)に分類される。

呼吸音の異常 疑われる疾患
水泡音、捻髪音 気道病変、間質領域の病変
笛音、いびき音 気道病変

 (2)肺機能検査
 呼吸機能検査として、スパイロメトリーが行われる。スパイロメトリーでは、下記の時間–気量曲線(呼吸曲線:スパイログラム)が得られる。

1回換気量(VT):通常の呼吸で出入りする気体の量
肺活量(VC):ゆっくり呼吸した際の最大呼気位と最大吸気位の間の肺容量変化
努力肺活量(FVC):最大吸気位からできる限り速く吐き出した時に得られる最大呼気位までの間の肺気量変化
1秒量(FEV1):努力肺活量を測定した時の最初の1秒間に排出される量
1秒率(FEV1%):努力肺活量に対する1秒量
%肺活量(%VC):予測式から算出された予備肺活量に対する肺活量の割合
最大吸気量(IC):最大に吸気したときの吸気量
予備吸気量(IRV):最大吸気量と1回換気量の差

換気障害は%VCとFEV1%によって分類され、間質性肺炎や胸水の貯留などの拘束性換気障害では、%VCは80%以下となり、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息などの閉塞性換気障害では、FEV1%が70%未満に低下する。なお、%VC、FEV1%が共に低下している場合は、混合性換気障害に分類される。

(3)動脈血ガス
 肺の換気効率を表す指標として、動脈血酸素分圧(PO2、PaO2)や動脈血二酸化炭素分圧(PCO2、PaCO2)がある。換気効率が低下し、動脈血二酸化炭素分圧(PCO2、PaCO2)が上昇すると、血液が酸性に傾く、呼吸性アシドーシスに至ることがある。また、動脈血の酸素の割合を示すものに、動脈血酸素飽和度(SO2、SaO2)がある。動脈血酸素飽和度(SO2、SaO2)は、測定する際に動脈血を採血する必要があるため、一般に、非侵襲的なパルスオキシメーターで経皮的に酸素飽和度を測定できる経皮酸素飽和度(SpO2)を動脈血酸素飽和度(SO2、SaO2)に代用する。

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