薬剤師国家試験出題項目

流動と変形(レオロジー)

Section1 流動と変形(レオロジー)

レオロジーとは、物質の変形、流動を扱う分野であり、薬学領域においては、固体的の性質である弾性と液体的な性質である粘性の両方の性質を兼ね備えている半固形製剤(軟膏剤、坐剤、クリーム剤)の物性を評価する際に用いられている。

1 弾性率

固体の硬さを表す量として弾性率がある。弾性率は、フックの法則により評価することができる。

<フックの法則>
応力Sとひずみγの間には比例関係が成立し、Gはバネ定数といわれ、弾性率に該当する。

弾性率Gが大きい物質は、大きい力を加えても変形が小さいので硬い物質であり、逆にGが小さい物質は、少しの力で大きく変形するため、柔らかい物質である。

2 粘度、流動曲線(レオグラム)

平面な2枚の板で液体をはさみ、上の板に力を加えて動かすと、内部の液体は固定された下の板からの距離に比例した速度で動く、下の板からrの位置の液体の速度がvのとき、dv/drをせん断速度またはずり速度という。また、板の間に発生する単位面積あたりの内部摩擦力をせん断応力またはずり応力(F/A)という。

ずり応力とずり速度の関係は上記の式で表すことができ、その比例定数は粘性率、粘度(η)といわれる。また、粘性率、粘度の単位は「パスカル・秒(Pa・s)」で表される。

2.1 ニュートン流体

理想的な液体では、下記の式が成立し、せん断応力Sがせん断速度Dに比例する。
S=ηD   (η:粘度、粘性率)
上記の式に従う流体をニュートン流体といい、その流動をニュートン流動(粘性流動)という。せん断速度とせん断応力の関係を示すグラフをレオグラムという。ニュートン流動を示す代表的なものとして、水、グリセリン、エタノールなどがある。

2.2 非ニュートン流体

ニュートンの粘性法則に従わない液体を非ニュートン流体といい、その流動形式を非ニュートン流動という。非ニュートン流体はレオグラムの形より、塑性流動(ビンガム流動)、準(擬)塑性流動、準(擬)粘性流動、ダイラタント流動に分類される。

1)塑性流動(ビンガム流動)

塑性流動(ビンガム流動)では、せん断応力が限界に達するまでは流動せず、それ以上のせん断応力を加えることで流動が認められる。なお、流動が認められる応力を降伏値という。

塑性流動(ビンガム流動)を示す代表的なものとして、軟膏剤、チンク油などがある。軟膏剤、チンク油は、小さい応力では、構造変化を起こさないが、ある一定の応力を加えると、液体と同様に流動することから塑性流動(ビンガム流動)を示す。

2)準(擬)粘性流動

準(擬)粘性流動では、せん断応力の増加とともに流動率の増加(粘度の低下)が認められる。

準(擬)粘性流動を示す代表的なものとして、トラガント、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロール、カルメロースなどの鎖状の高分子を1%程度含む水溶液がある。鎖状の高分子は応力を加える前、それぞれが重なりあって流動しにくい状態にあるが、応力が加わると液体の流れの方向に従って整列するため、粘度が低下し、流動しやすくなる。

3)準(擬)塑性流動

準(擬)塑性流動では、降伏値までは流動せず、降伏値以上の応力を加えると、準(擬)粘性流動と同様に応力の増加に伴って流動率の増加(粘度の低下)が認められる。

準(擬)塑性流動を示す代表的なものとして、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロースなどの鎖状の高分子を2〜3%程度含む水溶液がある。準(擬)粘性流動を示す物質の濃度を高くすると、小さな応力では流動しなくなるため、降伏値を示すようになる。

4)ダイラタント流動

ダイラタント流動では、応力の増加に伴って流動率の低下(粘度の増加)が認められる。

ダイラタント流動を示す代表的なものとして、50%以上デンプン濃厚液がある。ダンラタント流動を示す物質は、静止状態では、粒子の間に溶媒が均等にあるため容易に流動できるが、応力を加えると粒子の間にある溶媒が失われ、粒子間に摩擦が生じ、強い流動抵抗力を生じるようになる。

3 チキソトロピー

準粘性流動を示す物質のせん断速度を変化させながら、プロットを作成すると、速度を上昇させながら描いたプロットと速度を低下させながら描いたプロットが重ならず、ヒステリシスループを描くことがある。これは、応力を加えることにより構造が破壊されるが、応力を取り除いても構造がすぐに回復しないことを表している。応力の減少により徐々に減少した粘性が回復していく現象をチキソトロピーという。チキソトロピーを示す流体は、網目構造をしており、静止状態では、ゲル状(固形状)であるが、応力を加えるとゾル状(液状)に変化する。

チキソトロピーの原理は、懸濁剤に用いられている。チキソトロピーを示す製剤は、静止状態ではゲル状であり、懸濁粒子が沈降しにくいが、使用する際に振とうすると、使用に適したゾル状となる。

4 粘弾モデル

半固形製剤(軟膏、クリーム剤など)は、固体としての性質である弾性と液体としての性質である粘性を有している。このような性質を粘弾性といい、粘弾性を有する物質の変形現象は、弾性的性質を示すスプリングと粘性的性質を示すダッシュポットを組み合わせて表すことができる。

4.1 マクスウェルモデル

マクスウェル粘弾性モデルはスプリングとダッシュポットが直列に連結したものである。

4.2 フォークトモデル

フォークト粘弾性モデルはスプリングとダッシュポットが並列に連結したものである。

5 レオロジーの測定

5.1 粘度の測定

粘度とは、液体の粘性を示す値のことである。粘度には、絶対粘度、動粘度がある。

①:絶対粘度
せん断応力とせん断速度が比例するときの比例定数のことであり、粘度または粘性係数といわれ、その単位はPa・s、mPa・sである。

②:動粘度
絶対粘度を試料溶液の密度で割った値のことであり、その単位はm2/s、mm2/sである。

1)毛細管粘度計

ニュートン流体の動粘度は、毛細管粘度計(ウベローゼ型粘度計)を用いて測定することができる。毛細管粘度計では、測定値として動粘度を得ることができるため、毛細管粘度計を用いて動粘度を求める場合、流体の密度の値を必要としない。

2)回転粘度計

回転粘度計には、共軸二重円筒型回転粘度計、円錐−平板型回転粘度計などがあり、それらは、ニュートン流体や非ニュートン流体の粘度測定に用いられている。

5.2 その他の特性評価

軟膏剤の粘稠性などのレオロジー的性質の測定には、カードテンションメーター、ペネトロメーターやスプレッドメーターが用いられる。カードテンションメーター、ペネトロメーターでは、軟膏の硬さを測定でき、スプレッドメーターでは、軟膏の広げやすさや伸びを測定することができる。

 

◇関連問題◇
 第99回問49、第100回問52、第102回問51、第104回問51、第105回問50

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