薬剤師国家試験出題項目

治療薬物モニタリング(TDM)

治療薬物モニタリング(TDM)

TDM(therapeutic drug monitoring)とは、個々の患者に適した投与設計を行い、適正な薬物療法を行うためのモニタリングのことである。TDMの代表的な手法として、患者の血中濃度を測定し、最適な薬用量、投与法を設定する方法がある。

1 TDMを必要とする臨床的な背景と意義

薬物の血中濃度を調べることにより多くのことを判断することができる。
①:薬物の服用状況(コンプラアンス、ノンコンプライアンス)
②:中毒、副作用の発現
③:投与量が適切か不適切か
④:薬物間相互作用の有無

また、TDMを行うことにより下記に示す臨床上、医療上の有用性が得られる。
①:服薬状況の把握が可能となる
②:中毒・副作用の早期発見、防止を可能とする
③:患者個々の投与量を設定することができる
④:他剤併用の可否、薬物間相互作用の有無を判断できる
⑤:患者個々の薬物の体内動態を解析することができる

2 TDMが有効な薬物

血中薬物濃度を測定し、患者個々の投与量を設定することは有用であるといえるが、「血中濃度測定操作が簡単でないこと」、「費用がかかること」などから、全ての治療薬を対象に血中濃度を測定することは不可能である。臨床上、TDMが有効なのは次のような性質をもつ薬物である。

①:血中濃度と薬理効果、副作用発現に相関性がある薬物
②:治療上有効かつ安全とされる血中濃度域が明確な薬物
③:治療濃度域が狭く、副作用発現域との差が小さい薬物(治療係数が小さい薬物)
④:常用量の範囲で非線形性が認められる薬物
⑤:薬物の体内動態に個人差及び年齢差が認められる薬物
⑥:併用薬などにより相互作用を起こす可能性のある薬物
⑦:病態時に体内動態に変動が認められる薬物

3 TDMを必要とする薬物

1)抗てんかん薬

2)抗精神病薬

3)強心薬

4)喘息治療薬

5)免疫抑制薬

6)アミノグリコシド系抗生物質

7)グリコペプチド系抗生物質

8)抗真菌薬

9)抗悪性腫瘍薬

※文献により有効血中濃度、中毒発現濃度は多少数値が異なることがある。

4 TDMを行う際の採血ポイント、測定法について

1)採血のタイミング

採血のタイミング、採血回数については、TDMを行う上で重要な項目となる。採血回数を増やすことは患者にとって負担が大きくなるため、臨床の場では通常1回の採血により投与計画を行わなければならない。よって、薬剤投与後、「定常状態に到達している時点」「吸収、分布が終了している時点」「最低血中濃度(トラフ値)を示す時点」で採血することが望ましいとされている。
薬物によっては、中毒症状を予防するために血中濃度を測定する時間が決められているものがある。抗悪性腫瘍薬であるメトトレキサートの場合、投与開始24、48および72時間後に採血し、血中濃度を測定する。また、アミノグリコシド系抗生物質については、治療効果と第8脳神経障害発現の指標として投与後のピーク値を測定すると共に腎障害発現の指標としてトラフ値を測定することとされている。

2)血液採血についての注意

①:注射及び点滴により薬物を投与した場合には、投与した側と反対側から採血する。
②:血液検体は、全血、血漿(全血から血球を取り除いたもの)、血清(血漿から凝固因子を取り除いたもの)があり、通常、血中濃度の測定には血漿あるいは血清が用いられる。ただ、シクロスポリンとタクロリムスについては放置時間、温度により血球に分布する薬物の割合が変化するため、全血を用いて、血中濃度測定を行う。
③:冷凍保存をした血液を解凍するときには、試料を室温に戻し、解凍後は十分に攪拌する。
④:通常、保存期間は約1週間程度である。
⑤:血清分離剤入りの採血管を用いると、薬物が分離剤に吸着し、薬物量が低く見積もられることがある。(特にフェニトイン)
⑥:凝固剤が測定に影響を及ぼすことがある。ヘパリンはアミノグリコシド系抗生物質の測定結果に影響を及ぼす。

3)測定方法

血液中の薬物は、分離分析法や免疫学的測定法により測定される。
①:分離分析法
目的とする薬物を分離して定量する方法である。
②:免疫化学的測定法
目的とする薬物を分離することなく、特異性の高い反応を利用して目的の薬物を定量する方法である。

関連問題
第98回問48、第98回問268〜269、第99回問47、第99回問272〜273、第100回問272〜273、第101回問173、第101回問270〜271、第102回問46、第102回問170、第103回問274〜275、第104回問48、第105回問174、第105回問274〜275

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