薬剤師国家試験出題項目

沈殿滴定

1 容量分析用標準液

 硝酸銀(AgNO3)液、チオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)液
硝酸銀は、ハロゲン化物イオン、チオシアン酸イオン(SCN)などと1:1で反応し、沈殿を生じる。また、チオシアン酸アンモニウムは、銀イオンと反応し沈殿を生じる。

<標準試薬について>
硝酸銀を標定する際には、標準試薬として「塩化ナトリウム」が用いられる。

2 滴定終点の検出

①:モール法
指示薬にクロム酸塩を用い、塩化物イオン(Cl)などを定量する方法である。
塩化物イオン(Cl)溶液にクロム酸カリウム(K2CrO4)を加えて、AgNO3で滴定すると、AgCl(白色沈殿)が生成するが、当量点をこえると、Ag2CrO4(赤色沈殿)が生じるため、その点を滴定終点とする。

<注:モール法については、第十二改正日本薬局方から採用されていないが、衛生試験法における塩化物イオンの検出法として用いられている。>

②:ファヤンス法
指示薬に吸着指示薬(フルオレセインナトリウム、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルなど)を用いることから、吸着指示薬法ともいわれる。ファヤンス法では、ハロゲン化物イオンやチオシアン酸イオンなどをAgNO3で滴定する。

・吸着指示薬の色調変化について
塩化物イオンをAgNO3で滴定すると、AgClが沈殿する。フルオレセインは溶液中で陰イオンとして存在し、黄緑色を呈しているが、銀イオン(Ag)が過剰に存在する状態では、銀イオン(Ag)を吸着し、紅色に呈色するため、この点を終点とする。また、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステルは、ヨウ化物イオンの滴定に適しており、沈殿の生成により黄色から緑色に変化する

③:フォルハルト法
銀イオン(Ag)をチオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)液で滴定する方法であり、指示薬として硫酸アンモニウム鉄(Ⅲ)[Fe(NH4)(SO4)2]を用いる。

3 医薬品の定量

<例:生理食塩液(分子量:58.44)の定量(ファヤンス法)>
本品20 mLを正確に量り、水30 mLを加え、強く振り混ぜながら0.1 mol/L硝酸銀液で滴定する(指示薬:フルオレセインナトリウム試液3滴)。

0.1 mol/L硝酸銀液1 mL=5.844 mg NaCl

・対応量を求める
①:塩化ナトリウムと硝酸銀の反応について確認する。
塩化ナトリウムは水中で解離し、塩化物イオン(Cl)が生成する。生成したClと銀イオン(Ag)が反応し、沈殿が生じる。

②:対応数について確認する。
塩化物イオン(Cl)と銀イオン(Ag)は1:1で反応することから、対応数(目的成分1molに対して、反応する標準液のmol数)は1となる。

③:標準液1mLに対応する目的成分の物質量を求める。
0.1 mol/L硝酸銀液1 mLに対する塩化ナトリウムの物質量=(0.1mol/L×1mL÷1)=0.1mmoL

④:対応量を求める。
対応量=0.1mmoL×58.44 g/mol=5.844(mg)

<例:イオタラム酸の定量(ファヤンス法)>

本品を乾燥し、その約0.4gを精密に量り、けん化フラスコに入れ、水酸化ナトリウム試液40mLに溶かし、亜鉛粉末1gを加え、還流冷却器を付けて30分間煮沸し、冷後、ろ過する。フラスコ及びろ紙を水50mLで洗い、洗液は先のろ液に合わせる。この液に酢酸(100) 5mLを加え、0.1mol/L硝酸銀液で滴定する(指示薬:テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル試液1mL)。ただし、滴定の終点は沈殿の黄色が緑色に変わるときとする。

0.1 mol/L硝酸銀液1mL=20.46mg C11H9I3N2O4

・対応量を求める
①:イオタラム酸と硝酸銀の反応について確認する。
イオタラム酸を水酸化ナトリウム試液に溶かし、亜鉛末を加え、煮沸すると、ヨウ素イオンが遊離する。遊離したヨウ素イオン(I)と銀イオン(Ag)が反応し、沈殿が生じる。

②:対応数について確認する。
イオタラム酸1molから3molのヨウ素イオン(I)が遊離し、ヨウ素イオン(I)と銀イオン(Ag)は1:1で反応することから、対応数(目的成分1molに対して、反応する標準液のmol数)は3となる。

③:標準液1mLに対応する目的成分の物質量を求める。
0.1 mol/L硝酸銀液1 mLに対するイオタラム酸の物質量=(0.1mol/L×1mL÷3)=0.333mmoL

④:対応量を求める。
対応量=0.333mmoL×613.91 g/mol=20.46(mg)

<ブロモバレリル尿素の定量(フォルハルト法)>

 

本品を乾燥し、その約0.4gを精密に量り、300 mLの三角フラスコに入れ、水酸化ナトリウム試液40mLを加え、還流冷却器を付け、20分間穏やかに煮沸する。冷後、水30mLを用いて還流冷却器の下部及び三角フラスコの口部を洗い、洗液を三角フラスコの液と合わせ、硝酸5 mL及び正確に0.1 mol/L硝酸銀液30 mLを加え、過量の硝酸銀を0.1 mol/Lチオシアン酸アンモニウム液で滴定する。(指示薬:硫酸アンモニウム鉄(Ⅲ)試液2 mL)。同様の方法で空試験を行う。

0.1mol/L硝酸銀液1 mL=22.31mg C6H11BrN2O2

・対応量を求める。

①:ブロモバレリル尿素と硝酸銀の反応を確認する。
ブロモバレリル尿素を水酸化ナトリウム試液に入れ、煮沸すると臭素イオン(Br)が遊離する。遊離した臭素イオン(Br)は銀イオン(Ag)と結合し、沈殿する。

②:対応数について確認する。
ブロモバレリル尿素1molから1molの臭素イオン(Br)が遊離し、臭素イオン(Br)と銀イオン(Ag)は1:1で反応することから、対応数(目的成分1molに対して、反応する標準液のmol数)は1となる。

③:標準液1mLに対応する目的成分の物質量を求める。
0.1 mol/L硝酸銀液1 mLに対するイオタラム酸の物質量=(0.1mol/L×1mL÷1)=0.1mmoL

④:対応量を求める。
対応量=0.1mmoL×223.07 g/mol=22.31(mg)

 

 

◇関連問題◇
第92回問32
第101回問98

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