1 溶解度 (飽和濃度)
一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量を溶解度(飽和濃度)といい、水に可溶な塩(NaOH、KClなど)については、溶媒100gに対して溶ける溶質の質量(g)で表すが、水に難溶性の塩(AgCl、BaSO4など)では、溶液1L中に溶けている溶質の物質量(mol)で表す。
2 溶解度積
難溶解性のAgClを水に加えると、極微量のAgClが水に溶けて飽和状態となる。このとき、下記のような溶解平衡が成立し、平衡定数Kが得られる。
AgClはほとんど解離せず、[AgCl(s)]は一定であるとみなせるため、[Ag+][Cl-]=K[AgCl(s)]=定数となり、この値を溶解度積Kspとする。
溶解度積Kspとは、飽和溶液中における陽イオンと陰イオンの濃度の積のことである。
溶解度積Kspは、飽和溶液中における陽イオンと陰イオンの濃度の積を表していることから、溶液中に存在する両イオンの濃度の積が溶解度積の値よりも大きくなると沈殿を生じる。
溶解度積Kspと沈殿生成との関係は次のように表すことができる。
両イオン濃度の積>Ksp:沈殿が生成する。
両イオン濃度の積=Ksp:沈殿生じない(飽和溶液)。
両イオン濃度の積<Ksp:沈殿生じない。
3 溶解度積と溶解度との関係
難溶性塩の溶解度をSmol/Lとした場合の溶解度積については、以下のように考えることができる。
<AgClの場合(1価−1価の難溶性塩)>
AgClの飽和水溶液では、Ag+とCl-の濃度は共に溶解度Sに等しい。
よって、溶解度積Kspは以下のように計算することができる。
Ksp=[Ag+][Cl-]=S2
<BaSO4の場合(2価−2価の難溶性塩)>
BaSO4の飽和水溶液では、Ba2+とSO42-の濃度は共に溶解度Sに等しい。
よって、溶解度積Kspは以下のように計算することができる。
Ksp=[Ba2+][SO42-]=S2
<Ag2CrO4の場合(1価−2価の難溶性塩)>
Ag2CrO4の飽和水溶液では、Ag+の濃度は溶解度Sの2倍、CrO42-の濃度は溶解度Sに等しい。
よって、溶解度積Kspは以下のように計算することができる。
Ksp=[Ag+]2[CrO42-]=4S3
4 沈殿の生成
1)共通イオン効果
AgClの飽和溶液にHClを加えると、新たにAgClの沈殿が生じる。この現象については、HClを加えたことにより、溶液中のCl-の濃度が増加し、下記の反応における平衡が左に移動したために認められる。
このように難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、難溶性塩の溶解度が著しく減少することを共通イオン効果とよぶ。
2)異種イオン効果
AgClの沈殿を含む飽和溶液に、硫酸を加えると、沈殿の溶解度が増大する。このように難溶性塩の沈殿を含む溶液に沈殿とは無関係なイオンを加えると、難溶性塩の溶解度が著しく増大することを異種イオン効果とよぶ。
◇関連問題◇
第95回 問19、第97回 問3、第103回 問3