抗菌薬
1 抗菌薬
抗菌薬とは、細菌を増殖抑制もしくは殺滅する薬物のことであり、作用機序により細胞壁合成阻害薬、タンパク質合成阻害薬、核酸合成阻害薬、葉酸合成阻害薬、細胞膜機能阻害薬に分類される。また、抗菌薬には、結核菌に作用する抗結核薬がある。
1)殺菌作用と静菌作用
抗菌薬は殺菌作用を示すものと静菌作用を示すものがある。
厳密に、殺菌作用、静菌作用により抗菌薬を使い分けることはないが、免疫機能低下時、重篤な感染症などでは、殺菌作用を示すものを使用する必要がある。
2)抗菌薬の選択
細菌感染症に対して抗菌薬を用いる場合、初期治療として、経験的治療/エンピリック治療を行い、細菌の培養、感受性試験の結果をもとに最適治療(標的治療)を行う。
●初期治療
・原因菌判定前に抗菌薬の投与が必要な場合(重症例・緊急例)、原因菌を幅広くカバーする抗菌薬(抗菌スペクトルの広い抗菌薬)を投与する。
・重症例、緊急例でない場合は、培養・感受性結果が確定してから抗菌薬を投与する。
●最適治療
・原因菌に有効なスペクトルの狭い抗菌薬を用いる。
デ・エスカレーション
最初に広域スペクトラムを有する抗菌薬を投与し、培養結果と臨床的効果をみて、不要な抗菌薬を中止したり、より狭いスペクトラムの抗菌薬に変更する治療法のことである。
3)時間依存性・濃度依存性抗菌薬
抗菌薬は時間依存性のものと濃度依存性のものに分類される。
●時間依存性抗菌薬
・時間依存性抗菌薬には、効果持続時間が短いものと効果持続時間の長いもの(PAEを示すもの)がある。
・効果持続時間が短いものは、血漿薬物濃度が最小発育阻止濃度(MIC)よりも高い値となる時間が長いほど、抗菌作用が強く現れるため、%T /MIC(MIC以上の濃度を維持している時間の割合)が大きい方が効果が大きい。
例:β–ラクタム系抗生物質 など
PAE
MIC以下の濃度でも持続的に細菌の増殖が抑えられる現象
・効果持続時間の長いもの(PAEを示すもの)は、総投与量に効果が依存するため、AUC /MICが大きいほど効果が大きく現れる。
例:グルコペプチド系抗菌薬
●濃度依存性抗菌薬
・血漿薬物濃度が高いほど効果的であり、Cmax /MIC、AUC /MICが大きいほど効果的である。
・PAEが強いため、投与間隔を長くすることができる。
例:ニューキノロン系薬、アミノグリコシド系薬
2 細胞壁合成阻害薬
細胞壁合成阻害薬は、細菌の細胞壁の主成分であるペプチドグリカン層の合成を阻害し、細菌の細胞壁の合成を阻害する。細菌は、細胞壁の合成が阻害されると、浸透圧により溶菌する。
1)細胞壁合成阻害薬の作用機序
(1)ペプチドグリカンの合成
細菌の細胞壁に含まれるペプチドグリカン層は以下に示す過程で合成される。
(2)作用機序
●βラクタム系抗菌薬
βラクタム環は、ムレインモノマーのD−アラニル−D−アラニンに構造が類似していることから、PBPに結合し、ペプチド鎖の架橋を阻害する。
●グリコペプチド系抗菌薬
ムレインモノマーのペプチド鎖末端に直接結合し、ムレインモノマーがペプチドグリカン層に組み込まれることを阻害する。
●ホスホマイシン系抗菌薬
N−アセチルムラミン酸の合成を阻害する。
2)β−ラクタム系抗菌薬
βラクタム環は、ムレインモノマーのD−アラニル−D−アラニンに構造が類似していることから、PBPに結合し、ペプチド鎖の架橋を阻害する。
β−ラクタム系抗菌薬とは、基本骨格としてβ−ラクタム環を有する抗菌薬のことである。β−ラクタム系抗菌薬は殺菌作用を示すものが多く、抗菌力は時間依存的である。
β−ラクタム系抗菌薬は、構造によりペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系に分類される。
(1)ペニシリン系抗菌薬
ペニシリン系抗菌薬は、天然ペニシリンと合成ペニシリン(耐性黄色ブドウ球菌用ペニシリン、緑膿菌に無効な広域ペニシリン、緑膿菌に有効な広域ペニシリン)に分類される。
●天然ペニシリン
① ベンジルペニシリンカリウム
・抗菌スペクトルが狭い:グラム陽性菌、一部のグラム陰性菌(グラム陰性球菌)、スピロヘータに抗菌作用を示す。
・グラム陰性桿菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジアには無効
・ペニシリナーゼで失活しやすい。
・胃酸により分解されやすい。
◇副作用◇
過敏症(発疹、アナフィラキシーなど)、血液障害、腎障害 など
●耐性黄色ブドウ球菌用ペニシリン
① クロキサシリン ② メチシリン
・ベンジルペニシリンと同様の抗菌スペクトルを有する。
・ペニシリナーゼで分解されにくく、安定性が高い。
・クロキサシリンは、広域ペニシリンのアンピシリンに配合されて用いられている。
・現在、メチシリンは用いられていない。
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌には無効である。
●緑膿菌に無効な広域ペニシリン
① アンピシリン ② バカンピシリン(アンピシリンのプロドラッグ)
③ アモキシシリン
・ベンジルペニシリンにアミノ基を導入することで、グラム陰性菌の外膜に侵入することができるようになったため、グラム陰性菌に対しても効果を示す。
・広い抗菌スペクトルを示すが、緑膿菌には無効である。
・アンピシリン、アモキシシリンは、ペニシリナーゼにより分解されやすい。
・ペニシリナーゼにより分解されやすいため、β−ラクタマーゼ阻害薬(スルバクタム、クラブラン酸)との配合剤が使用されている。
●緑膿菌に有効な広域ペニシリン
① ピペラシリン
・グラム陰性菌の外膜により侵入しやすくなっているため、緑膿菌にも抗菌作用を示す。
(2)セフェム系抗菌薬
セフェム系抗菌薬は、基本骨格として7−アミノセファロスポラン酸を有している。構造の違いからセファロスポリン系抗菌薬、セファマイシン系抗菌薬、オキサセフェム系抗菌薬に分類される。
●セファロスポリン系
セファロスポリン系抗菌薬は、第一世代〜第四世代に分類される。
◆第一世代セファロスポリン系
① セファゾリン ② セファロチン
③ セファレキシン ④ セファクロル
・グラム陽性菌、グラム陰性球菌、一部のグラム陰性桿菌(大腸菌、肺炎球菌)に抗菌作用を示す。
・第一〜第三世代の中で、グラム陽性球菌に対する抗菌活性が強い。
・セファロスポリナーゼにより分解されやすい(セファロスポリナーゼ感受性)
◇副作用◇
過敏症、ショック、腎障害 など
◆第二世代セファロスポリン系
① セフォチアム ② セフロキシム アキセチル
・第一世代に比べ、抗菌スペクトルが広いが、グラム陽性菌に対する抗菌作用は弱い。
・セファロスポリナーゼ抵抗性を示す。
◇副作用◇
過敏症、ショック、腎障害 など
◆注射用第三世代セファロスポリン系
① セフォタキシムナトリウム ② セフォペラゾンナトリウム水和物
③ セフメノキシム塩酸塩 ④ セフトリアキソンナトリウム水和物
⑤ セフタジジム水和物
・第二世代に比べ、グラム陰性菌に対する抗菌作用が強いが、グラム陽性菌に対する抗菌作用は弱い。
・セファロスポリナーゼ抵抗性を示す。
・髄膜移行性が高いため、髄膜炎に用いられる。
・緑膿菌に抗菌作用を示すものもある(セフタジジム)。
◇副作用◇
過敏症、ショック、腎障害 など
◆経口第三世代セファロスポリン系
① セフジニル ② セフジトレン ピボキシル
③ セフカペン ピボキシル
④ セフテラム ピボキシル
⑤ セフポドキシム プロキセチル
⑥ セフィキシム
・第二世代に比べ、グラム陰性菌に対する抗菌作用が強いが、グラム陽性菌に対する抗菌作用は弱い。
・セファロスポリナーゼ抵抗性を示す。
・バイオアベイラビリティを高めるために構造中にピボキシル基を導入しているものがある。
・ピボキシル基を有するものは、低カルニチン血症を誘発する可能性がある。
◇副作用◇
過敏症、ショック、腎障害、低カルニチン血症(ピボキシル基を有するもの) など
◆第四世代セファロスポリン系
① セフェピム ② セフピロム ③ セフォゾプラン
・抗菌スペクトルが広く、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対して強い抗菌作用を示す。
・セファロスポリナーゼ抵抗性を示す。
◇副作用◇
過敏症、ショック、腎障害 など
●セファマイシン系抗菌薬
① セフメタゾール
・セファマイシン系抗菌薬は、7−アミノセファロスポランにメトキシ基(−OCH3)が結合したものであり、セファロスポリン系薬に比べ、β−ラクタマーゼに対して安定である。
・構造中に嫌酒薬(ジスルフィラム)と同様の構造を有しているため、服用中は飲酒を避ける必要がある。
●オキサセフェム系抗菌薬
① フロモキセフ ② ラタモキセフ
・オキサセフェム系抗菌薬は、7−アミノセファロスポランにメトキシ基(−OCH3)が結合しており、さらに環状構造の硫黄原子が酸素原子に変換したものである。
・ラタモキセフは、構造中に嫌酒薬(ジスルフィラム)と同様の構造を有しているため、服用中は飲酒を避ける必要がある
(3)カルバペネム系抗菌薬
① イミペネム ② パニペネム ③ メロペネム
・幅広い抗菌活性(グラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌に効果を示す)を示し、β−ラクタマーゼ抵抗性を示し、緑膿菌にも有効である。
・イミペネムは、デヒドロペプチダーゼⅠ(DHP−1)により不活化され、その分解物が腎障害を示すため、DHP–1を特異的に阻害するシラスタチンと併用する(イミペネム・シラスタチン配合剤として製品化されている)。
・パニペネムは、腎臓への移行を抑制するため、ベタミプロンと併用する(パニペネム・ベタミプロン配合剤として製品化されている)。
・メロペネムはDHP–1により不活化されないため、単独で用いられる。
・β–ラクタム環に隣接する環状構造を有していない。
・グラム陽性菌に対して抗菌活性を示さず、緑膿菌を含むグラム陰性菌に対して強い抗菌活性を示す。
(5)ペネム系抗菌薬
① ファロペネムナトリウム
・グラム陽性菌、グラム陰性菌に対して強い抗菌活性を示す。
・DHP–1で代謝を受けるが、腎毒性は低い
3)β–ラクタム系抗菌薬以外の抗菌薬
(1)グリコペプチド系抗菌薬
① バンコマイシン ② テイコプラニン
・グリコペプチド系薬は、ムレインモノマーのペプチド鎖末端に直接結合(ペプチド鎖のD–アラニル–D–アラニン部分に水素結合)し、ムレインモノマーがペプチドグリカン層に組み込まれるのを阻害する。
・グラム陽性菌に強い抗菌力を有し、MRSAにも有効性を示す。
・時間依存性抗菌薬であるが、PAEがあり、治療効果はAUC/MICに依存する。
◇副作用◇
腎障害、第Ⅷ脳神経障害(難聴、耳鳴りなど)、ヒスタミン遊離によるレッドネック症候群
MRSA(黄色ブドウ球菌)
多剤耐性黄色ブドウ球菌であり、PBP2と同様の活性をもつPBP2'を産生するため、β−ラクタム系抗生物質が存在してもペプチドグリカンを合成する。
(2)ホスホマイシン系抗生物質
① ホスホマイシン
・細胞膜の能動輸送系により細菌内に取り込まれ、ホスホエノールピルビン酸トランスフェラーゼの活性を阻害し、N–アセチルムラミン酸の合成を阻害することにより、細菌の細胞壁の合成を阻害する。
・構造が単純であり、アレルギーを起こしにくいことから、β–ラクタム系薬にアレルギーを示す患者に用いられることが多い。
・緑膿菌や大腸菌に抗菌活性を示す。
3 タンパク質合成阻害薬
タンパク質合成阻害薬は、タンパク質合成過程のうち、翻訳を阻害する。細菌の増殖にはタンパク質合成が必須であり、タンパク質合成阻害薬を使用することで細菌の増殖を抑制することができる。
1)アミノグリコシド系抗生物質
① ストレプトマイシン ② カナマイシン
③ ゲンタマイシン ④ トブラマイシン
⑤ アミカシン ⑥ アルベカシン
・細菌の小サブユニット(30Sサブユニット)に結合し、タンパク質の合成を阻害する。
・細菌の細胞膜に対する障害作用も示す。
・薬により抗菌スペクトルが異なる。
・ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシンは緑膿菌に対して抗菌作用を示す。
・カナマイシン、ストレプトマイシンは結核菌に対して抗菌作用を示す。
・アルベカシンは、MRSAに対して抗菌作用を示す。
・タンパク質合成阻害薬の中で例外的に殺菌的作用を示す。
◇副作用◇
ショック、過敏症、腎障害、内耳(第Ⅷ脳)神経障害、肝障害、筋弛緩、呼吸抑制 など
2)クロラムフェニコール系抗生物質
① クロラムフェニコール
・細菌の大サブユニット(50Sサブユニット)に結合し、ペプチジルトランスフェラーゼを阻害することでペプチド転位反応を抑制する。
◇副作用◇
再生不良性貧血、灰白症候群 など
3)マクロライド系抗生物質
●14員環系
① エリスロマイシン ② クラリスロマイシン ③ ロキシスロマイシン
●15員環系
① アジスロマイシン
●16員環系
① ジョサマイシン ② スピラマイシン
・細菌の大サブユニット(50Sサブユニット)に結合し、ペプチジル–tRNAの転位反応を抑制することでタンパク質合成を阻害する。
・細菌の大サブユニットのrRNAの構造が変化することで抗菌薬の親和性が低下し、耐性を生じることがある。
・グラム陽性菌、一部のグラム陰性菌、クラミジア、マイコプラズマ、百日咳菌に抗菌活性を示す。
・バイオアベイラビリティが高く、組織移行性が良好である。
・エリスロマイシン、クラリスロマイシンは、免疫調節作用を有するため、気管支拡張症などで少量長期間投与することがある。
・エリスロマイシン、クラリスロマイシンの代謝物は、CYP3A4を複合体と形成するため、CYP3A4阻害作用を示す。また、P糖タンパク質を阻害作用を有するため、P糖タンパク質により排泄される薬物と併用すると、併用薬の血中濃度が上昇することがある。
◇副作用◇
ショック、過敏症、腎障害、肝障害、QT延長(14、15員環系)、心室頻拍(14員環系) など
4)テトラサイクリン系抗生物質
① テトラサイクリン ② ミノサイクリン ③ ドキシサイクリン
・細菌の小サブユニット(30Sサブユニット)に結合し、アミノアシルtRNA(aa–tRNA)がmRNA–30Sリボソーム複合体に結合することを阻害することでタンパク質の合成を阻害する。
・タンパク質合成阻害作用により細菌の増殖を抑制するため、静菌的作用を示す。
・細菌の小サブユニットのrRNAの構造が変化し、抗菌薬の親和性が低下することで耐性を生じることがある。
・幅広い抗菌スペクトルを有する。
・歯や骨などのCaに不可逆的に沈着するため、骨の発育異常や歯牙着色を引き起こすことがある。
◇副作用◇
ショック、過敏症、偽膜性大腸炎、肝障害、腎障害、歯牙着色、エナメル質形成不全、消化器症状、光線過敏症 など
5)リンコマイシン系抗生物質
① リンコマイシン ② クリンダマイシン
・細菌のリボソームの大サブユニット(50Sサブユニット)に結合し、ペプチジル–tRNAの転位反応を抑制することによりタンパク質の合成を阻害する。
・グラム陽性菌、グラム陰性球菌に対して抗菌活性を示す。
◇副作用◇
偽膜性大腸炎
6)その他のタンパク質合成酵素阻害薬
① ムピロシンカルシウム
・細菌のタンパク合成の初期段階において、イソロイシル–tRNA合成酵素–イソロイシン–AMP複合体の生成を阻害し、タンパク質の合成を阻害することで抗菌活性を示す。
・鼻腔内MRSAの除菌に用いられる。
② リネゾリド
・リボソームRNAに結合し、mRNA、小サブユニット、fMet–tRNA、大サブユニットが結合することを阻害し、タンパク質の合成を阻害することで抗菌活性を示す。
・バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に抗菌活性を示す。
4 細胞膜機能阻害薬
細胞膜機能阻害薬とは、細胞膜に結合し、膜の機能を抑制することにより殺菌的に作用する抗菌薬のことである。
1)リポペプチド系抗菌薬
① ダプトマイシン
・カルシウムと結合した状態で、細菌の細胞膜に侵入し、重合体を形成することでカリウムの細胞外への流出を促進する。
・グラム陽性球菌に有効であり、MRSAにも抗菌作用を示すため、抗MRSA薬として用いられている。
◇副作用◇
横紋筋融解症、腎障害、消化器症状、皮疹、肝機能障害 など
2)ポリペプチド系抗菌薬
① ポリミキシンB ② コリスチン(ポリミキシンE)
・陽性に荷電していることから陰性に荷電している外膜のリポ多糖や細胞膜のリン脂質に結合して細胞膜に侵入して細胞膜機能障害を誘発する。
・細胞膜機能障害により、細菌の細胞内成分が漏出して細菌が溶解する。
・大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクター属、緑膿菌に抗菌活性を示す。
◇副作用◇
神経障害、腎障害 など
5 葉酸合成阻害薬
葉酸合成阻害薬とは、葉酸の合成経路を阻害することにより、細菌のDNA合成やアミノ酸合成を阻害する薬のことである。葉酸合成阻害薬には、サルファ剤とトリメトプリムがある。
1)スルホンアミド系薬(サルファ剤)
① スルファジメトキシン ② スルファジアジン
③ サラゾスルファピリジン ④ スルファメトキサゾール
・パラアミノ安息香酸(PABA)と類似した構造を有しており、PABAと競合することによりジヒドロプテロイン合成酵素を阻害する。
・作用は静菌的である。
・葉酸合成を阻害し、核酸合成を阻害することで細菌、真菌、原虫に対して抗菌活性を示す。
◇副作用◇
発疹、高ビリルビン血症、核黄疸、再生不良性貧血、溶血性貧血 など
2)トリメトプリム
・ジヒドロ葉酸と類似構造を有しており、テトラヒドロ葉酸(THF)を産生するジヒドロ葉酸還元酵素を競合的に阻害し、テトラヒドロ葉酸の合成を阻害する。
・臨床では、スルファメトキサゾールとの配合剤であるST合剤が用いられている。
・ST合剤は、ニューモシスチス肺炎の治療に用いられる。
6 核酸合成阻害薬
核酸合成阻害薬とは、核酸(DNA・RNA)の合成に関わる酵素を阻害する抗菌薬のことである。核酸合成阻害薬には、キノロン系抗菌薬があり、オールドキノロン系薬とニューキノロン系薬(フルオロキノロン:キノロン系薬に6位の側鎖にフッ素(F)を付加したもの)に分類される。また、ニューキノロン系薬の中には、肺炎球菌に有効なレスピラトリーキノロン系薬がある。
1)ニューキノロン系抗菌薬
① ノルフロキサシン ② オフロキサシン ③ シプロフロキサシン ④ オゼノキサシン
⑤ レボフロキサシン ⑥ モキシフロキサシン ⑦ ガレノキサシン ⑧ トスフロキサシン
・主にグラム陰性菌ではDNAジャイレースを阻害し、グラム陽性菌ではトポイソメラーゼⅣを阻害することで抗菌作用を示す。
・増殖中の細菌に対して殺菌的に作用する。
・濃度依存型抗菌薬であるため、投与回数を少なくし、1回の投与量を多くすることで抗菌作用が増強する。
・抗菌スペクトルが広く、マイコプラズマ、クラミジア、緑膿菌にも抗菌活性を示す。
・オゼノキサシン、ガレノキサシンは、6位にフッ素がない脱フッ素キノロン系薬である。
・モキシフロキサシン、ガレノキサシン、トスフロキサシンは、レスピラトリーキノロン系薬に該当する。
◇副作用◇
腎障害、肝障害、光線過敏症、痙攣、横紋筋融解症、精神神経症状、腱障害、血液障害、偽膜性大腸炎、視覚異常、味覚異常 など
◇相互作用◇
・2価以上の金属イオンと併用すると、吸収が低下する。
・酸性非ステロイド性抗炎症薬と併用すると、中枢性のけいれんが現れることがある。
7 抗結核薬
結核菌には、一般的な抗菌薬は効果を示さないため、抗結核薬が用いられる。結核の治療では、耐性菌の出現を防止するため、原則、2剤以上の多剤併用療法が行われる。現在では、アドヒアランスを向上させるために、直接監視下短期化学療法(DOTS)が行われている。
① イソニアジド
・結核菌細胞壁構成成分であるミコール酸の生合成を阻害することで結核菌に対して殺菌的な作用を示す。
・他の抗結核薬と交差耐性が認められない。
・結核菌がすぐに耐性化する。
◇副作用◇
末梢神経障害(ビタミンB6欠乏による)、肝障害 など
② ピラジナミド
・イソニアジドと併用すると、イソニアジドの抗菌活性を増強させる。
・酸性環境(マクロファージ内)で抗菌活性を示す。
◇副作用◇
肝障害、高尿酸血症、関節痛 など
③ リファンピシン ④ リファブチン
・DNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、RNA合成を阻害することで結核菌に対して殺菌的な作用を示す。
・肝代謝酵素(CYP3A4)誘導作用を有する。
◇副作用◇
肝障害、腎障害、アレルギー症状、血小板減少 など
⑤ エタンブトール
・リポ核酸の合成を阻害することで結核菌に対して静菌的な作用を示す。
・他の抗結核薬と交差耐性が認められない。
◇副作用◇
視神経障害、消化器症状 など
⑥ パラアミノサリチル酸カルシウム
・パラアミノ安息香酸(PABA)に拮抗し、葉酸の合成を阻害することで結核菌に対して静菌的な作用を示す。
◇副作用◇
胃腸障害
◇関連問題◇
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