薬剤師国家試験出題項目

抗ウイルス薬

抗ウイルス薬

1 ウイルス

 ウイルスは、他の生物の細胞を利用し複製する最も小さい病原体で、タンパク質の殻と核酸(DNA又はRNA)からなり、生命の最小単位である細胞を持たないため、小器官はなく、自己増殖することができない。
ウイルスは、DNA又はRNAのどちらか一方を有していることからDNAウイルス、RNAウイルスに分類される。

2 抗HIV薬

 HIVは、レトロウイルス科に属するRNAウイルスであり、内部に逆転写酵素とRNAを含んでおり、エンベロープに包まれ、その周りには糖タンパク質(gp120)が突出している。HIVに感染すると、CD4陽性T細胞が減少し、免疫力が低下することで後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症する。

HIV感染症には、逆転写酵素阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬、HIVインテグラーゼ阻害薬、CCケモカイン受容体5(CCR5)阻害薬が用いられる。

1)CCケモカイン受容体5(CCR5)阻害薬

① マラビロク
・HIVが宿主細胞の侵入に必要なケモカイン受容体(CCR5)との結合を阻害する。
・CCR5指向性HIVが宿主細胞に侵入するのを抑制する。
◇適応症◇
 CCR5指向性HIV–1感染症

2)逆転写酵素阻害薬

●ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬
① ジドブジン ② ジダノシン ③ ラミブジン
④ アバカビル ⑤ エムトリシタビン

・HIV感染細胞内で三リン酸化体となり、逆転写酵素を阻害し、RNAからDNAの合成を阻害することによりウイルス増殖を抑制する。
◇適応症◇
ジドブジン、ジダノシン、ラミブジン、アバカビル
HIV感染症
エムトリシタビン
HIV–1感染症

●非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬
① ネビラピン ② エファビレンツ ③ リルピビリン

・HIV–1の逆転写酵素の活性部位の近くにある疎水性ポケットに結合し、酵素活性を阻害する。
・HIV–2の逆転写酵素を阻害しない。
◇適応症◇
 HIV–1感染症

3)HIVプロテアーゼ阻害薬

① サキナビル ② リトナビル ③ インジナビル ④ ネルフィナビル
⑤ アタザナビル ⑥ ロピナビル/リトナビル

・HIVプロテアーゼの活性部位に結合し、ウイルスタンパク質の産生を抑制する。
・リトナビルは、プロテアーゼ阻害薬としての作用を有しているが、副作用を起こしやすいなどの理由により、抗HIV効果を期待して用いられていない。現在では、CYP3A4阻害作用により他のプロテアーゼ阻害薬の血中濃度を維持する目的で使用されている。
・サキナビル、インジナビルは現在使用されていない。
◇適応症◇
リトナビル、ネルフィナビル、ロピナビル/リトナビル
HIV感染症
アタザナビル
HIV–1感染症

4)HIVインテグラーゼ阻害薬

① ラルテグラビル ② ドルテグラビル ③ エルビテグラビル

・HIVインテグラーゼ(ウイルスゲノム由来のDNAを宿主DNAに組み込む酵素)を阻害し、HIVの増殖を抑制する。
◇適応症◇
ラルテグラビル、ドルテグラビル
HIV感染症
エルビテグラビル
HIV–1感染症

3 抗インフルエンザウイルス薬

 インフルエンザウイルスは、核タンパク質やマトリックスタンパク質の違いによりA、B、Cの3つの型に分類される。インフルエンザウイルスのうち、A、B型がインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱、全身倦怠感、頭痛など)を誘発する。

①:インフルエンザウイルスのエンベロープに突出しているHA(ヘマグルチニン)が宿主細胞膜に存在するシアル酸に結合する。その後、インフルエンザウイルスがエンドサイトーシスにより宿主細胞に取り込まれる。
②:膜融合、脱核により細胞内にRNAが放出される。
③:mRNAの合成される。
④:ウイルスRNAが複製される。
⑤:mRNAよりウイルスタンパク質が合成される。
⑥:ウイルスRNAとウイルスタンパク質より新たなインフルエンザウイルスが発生する。
⑦:NA(ノイラミニダーゼ)により、HAと宿主細胞膜に存在するシアル酸の結合が切断され、増殖したインフルエンザウイルスが宿主細胞から遊離する。

)ノイラミニダーゼ阻害薬

① オセルタミビル ② ザナミビル ③ ラニナミビル ④ ペラミビル 

・ノイラミニダーゼを阻害し、宿主細胞からのウイルスの放出を抑制することでウイルスの増殖を抑制する。
・発症後48時間以内に投与する必要がある。
◇適応症◇
オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル
A型、B型インフルエンザウイルス感染症
A型、B型インフルエンザウイルス感染症の予防
ペラミビル
A型、B型インフルエンザウイルス感染症

2)RNAポリメラーゼ阻害薬

① ファビピラビル

・RNAポリメラーゼを阻害し、RNAの複製を抑制することによりウイルスの増殖を抑制する。
・催奇形性があるため、妊婦に投与することができない。
◇適応症◇
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症
(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な場合に限る)

3)Cap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

① バロキサビル マルボキシル

・インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害し、ウイルスmRNAの合成を抑制することによりウイルス増殖を抑制する。
◇適応症◇
A型、B型インフルエンザウイルス感染症

上記の1)〜3)以外にパーキンソン病治療薬である「アマンタジン」もM2チャネル阻害作用を有することから、A型インフルエンザ感染症の治療に用いられる。

4 抗ヘルペスウイルス薬

 ヘルペスウイルスは、エンベロープを有する2本鎖DNAウイルスであり、治療後も体内に潜伏し、再活性化による回帰発症を誘発する。

 ① アシクロビル ② バラシクロビル ③ ファムシクロビル

・ウイルス感染細胞内でリン酸化(チミジンキナーゼにより一リン酸化→細胞性キナーゼにより三リン酸化体となる)されdGTP(デオキシグアノシン三リン酸)と競合することによりDNAポリメラーゼを阻害する。
・バラシクロビルは、アシクロビルの吸収性を高めたプロドラッグである。
◇適応症◇
アシクロビル、バラシクロビル
単純疱疹、造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症の抑制
帯状疱疹、性器ヘルペスの再発抑制、水痘
ファムシクロビル
単純疱疹、帯状疱疹

 ④ ガンシクロビル
・サイトメガロウイルス(ヒトペルペスウイルス5)感染細胞内でプロテインキナーゼによりリン酸化を受け、三リン酸化体となり、DNAポリメラーゼを阻害する。
◇適応症◇
サイトメガロウイルス感染症

⑤ ビラダビン
・ウイルス感染細胞内でリン酸化(チミジンキナーゼを必要とせず、三リン酸化体となる)されdATP(デオキシアデノシン三リン酸)と競合することによりDNAポリメラーゼを阻害する。
・アシクロビル耐性ウイルスに対して抗ウイルス作用を示す。

 ⑥ アメナメビル

・ウイルスDNAの複製に必要なヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することで抗ウイルス作用を呈する。
◇適応症◇
帯状疱疹

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◇関連問題◇
第97回問165、第98回問264〜265、第99回問39、第100回問164、第101回問40、第102回問164、第103回問162、第105回問162

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