抗うつ薬のまとめ

抗うつ薬のまとめ

1 うつ病、大うつ病性障害

<疫学・好発年齢>
・生涯での有病率:約7%
・女性>男性(女性が男性の約2倍罹患しやすい)
・20歳前後で発症することが多い
<病態生理>
・明確にはなっていないが、モノアミン仮説と視床下部–下垂体–副腎皮質系の障害とする2つの仮説がある。
<症状・所見>
・抑うつ気分、興味関心の低下、睡眠障害、易疲労性、気分減退、食欲不振、過食、思考力・集中力の低下、自殺念慮、精神運動性の抑制、焦燥 など
<検査・診断>
・DSM–5、ICD–11が用いられる。
DSM–5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版):精神疾患を分類分けしたもの
ICD–11(国際疾病分類 第11回改定版):全疾患を分類したもの
*画像診断や神経伝達物質の量から診断することが困難であり、精神症状と経過により診断される。
<治療・管理>
・軽症うつ病
患者の背景、病態の理解に努め、支持的精神療法と心理教育を行う
場合によっては、新規抗うつ薬の投与、認知行動療法を行う
・中等度・重症うつ病
新規抗うつ薬の投与、三環系抗うつ薬の投与、修正型電気けいれん療法(mECT)

修正型電気けいれん療法
両側のこめかみに電極を付け、電気を通すことにより脳内に発作性放電を発生させ、精神症状を軽減させる治療法。自殺念慮、昏迷、精神運動興奮などの重症例、難治性で用いられる。

1)モノアミン仮説

抗うつ薬がシナプス間隙のセロトニン濃度、ノルアドレナリンの濃度を上昇させることにより効果を示すことからモノアミンの不足がうつ病の原因であるとする仮説
モノアミン仮説の矛盾点として、抗うつ薬服用後するに脳内モノアミン濃度が上昇するにも関わらず、うつ症状がすぐに改善しないことがあげられる。

2)視床下部–下垂体–副腎皮質系障害仮説

視床下部–下垂体–副腎皮質のフィードバックに障害が起こり、血中コルチゾールが上昇し、脳由来神経栄養因子が減少することにより海馬の障害、神経新生の抑制が起こっているという仮説

2 抗うつ薬の薬理作用

抗うつ薬は様々な受容体に作用するものがあり、抗うつ薬の作用(主作用、副作用)を理解するためには、各受容体の働きを把握しておく必要がある。

3 三環系抗うつ薬

① アミトリプチリン塩酸塩(商品名:トリプタノール)
② イミプラミン塩酸塩(商品名:トフラニール)
③ クロミプラミン塩酸塩(商品名:アナフラニール)
④ ノルトリプチリン塩酸塩(商品名:ノリトレン)
⑤ アモキサピン(商品名:アモキサン)

効果が高く、重度のうつ病に用いられる。アミントランスポーターを阻害することによりセロトニン、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害すると共に、ヒスタミンH1受容体遮断作用、ムスカリン受容体遮断作用、アドレナリンα1受容体遮断作用を示すため、副作用が現れやすい。キニジン様作用(心機能抑制作用)を示すものがあることから、過量投与には注意する必要がある。
抗コリン作用により蓄尿機能を高めることができるため、遺尿症や夜尿症にアミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミンが用いられることもある。また、疼痛を緩和する目的でアミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、ノルトリプチリンが用いられることもある。
クロミプラミンは、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に比べ、セロトニン再取り込み阻害作用が強いため、強迫症状や不安、焦燥にも効果を期待できるとされている。

<三環系抗うつ薬による副作用の対処法>
口渇:うがい、SSRI、SNRIへ変更
便秘:水分摂取、緩下剤(酸化マグネシウムなど)の追加投与
尿閉:コリン作動薬の追加投与、SSRI、NaSSAへ変更
 起立性低血圧:SSRI、SNRI、NaSSAへ変更、α1受容体刺激薬(ミドドリン)の追加投与
 傾眠・鎮静:SSRI、SNRIへ変更
体重増加:SSRI、SNRIへ変更

4 四環系抗うつ薬

① ミアンセリン塩酸塩(商品名:テトラミド)
② マプロチリン塩酸塩(商品名:ルジオミール)
③ セチプチリンマレイン酸塩(商品名:テシプール)

ミアンセリンおよびセチプチリンは、アドレナリンα2受容体を遮断することによりノルアドレナリンの遊離を促進することにより抗うつ作用を示す。それに対して、マプロチリンは主にノルアドレナリンの再取り込みを阻害することにより抗うつ作用を示すとされている(セロトニン再取り込み阻害作用はほとんどない)。
三環系抗うつ薬に比べ、抗コリン作用が弱く、口渇、便秘が現れにくいとされている。
ミアンセリンは、心血管系の副作用が少なく、鎮静作用を示すことから睡眠薬として使用されることがある。

5 セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

① パロキセチン塩酸塩水和物(商品名:パキシル)
② 塩酸セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
③ エスシタロプラムシュウ酸塩(商品名:レクサプロ)
④ フルボキサミンマレイン酸塩(商品名:デプロメール、ルボックス)

過量投与による致死性が低いことから、うつ病、うつ状態の第一選択薬として用いられている。効果は三環系抗うつ薬に劣ることから重症例には適していない。
抗コリン作用による、口渇、便秘を起こしにくいが、5–HT3受容体刺激作用により胃腸症状(下痢など)、5–HT2受容体刺激作用により性機能障害、不眠、焦燥が現れやすい。
抗不安作用を有するものが多く、強迫症、パニック障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害に用いられることがある。
SNRIと同様に鎮静効果がないことから非鎮静系薬に分類される。
パロキセチンは比較的効果が高いが、中断症候群が現れやすい。
エスシタロプラムは、初期投与量から効果を示すため、使用しやすいが、QT延長症候群を起こすこ心疾患患者には投与を控える必要がある。
フルボキサミンは、CYP1A2阻害作用が強力であることから、併用薬に注意する必要がある(併用禁忌薬:ラメルテオン、チザニジン)。

<SSRIによる副作用の対処法>
悪心・嘔吐:モサプリドの追加投与
性機能障害:NaSSAへ変更
下痢:トリメブチンの追加投与、NaSSAへ変更
アクチベーション症候群:中止、減量、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の追加投与

アクチベーション症候群
中枢神経刺激症状(不安、焦燥、不眠、易刺激性、敵意、衝動性など)のことであり、SSRIやSNRI投与初期、増量時に認められることがある。

6 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

① デュロキセチン塩酸塩(商品名:サインバルタ)
② ベンラファキシン塩酸塩(商品名:イフェクサー)
③ ミルナシプラン塩酸塩(商品名:トレドミン)

セロトニンの再取り込みを阻害することに加え、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することにより、抗不安効果+意欲向上効果が認められる。また、デュロキセチンは、セロトニン、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することにより脊髄の下降性疼痛抑制系を賦活化することにより慢性腰痛症、糖尿病性神経障害に効果があるとされている。
SSRIと同様に鎮静効果がないことから非鎮静系薬に分類される。
抗コリン作用による、口渇、便秘を起こしにくいが、5–HT3受容体刺激作用により胃腸症状(下痢など)、5–HT2受容体刺激作用により性機能障害、不眠、焦燥が現れやすい。
ベンラファキシンは、セロトニン再取り込み阻害作用がノルアドレナリン再取り込みより強く、ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を発現させるためには、高用量用いる必要がある。

<SNRIによる副作用の対処法>
尿閉:α1受容体遮断薬、コリン作動薬の追加投与
頭痛:ベンゾジアゼピン系抗不安薬の追加投与、SSRIへ変更
頻脈、血圧上昇:SSRIへ変更
アクチベーション症候群:中止、減量、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の追加投与

7 ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

① ミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)
α2受容体を遮断することにより、ノルアドレナリンの遊離を促進するとともにセロトニン神経細胞を活性化することによりセロトニン遊離を促進する。また、5–HT2受容体、5–HT3受容体遮断作用を示す。
5–HT2受容体遮断作用を有するため、眠気を誘発しやすい。
5–HT3受容体遮断作用を有するため、消化器系の副作用を起こしにくく、抗コリン作用による副作用(口渇、便秘など)も起こしにくいとされてる。
H1受容体遮断による体重増加が認められることがある。

<NaSSAによる副作用の対処法>
眠気:減量、SSRI、SNRIへ変更
体重増加:SSRI、SNRIへ変更