薬剤師国家試験出題項目

呼吸器系に作用する薬

呼吸器系に作用する薬

1 呼吸興奮薬

 呼吸器興奮薬は、ショック、麻酔、中枢神経抑制などにより過度の呼吸抑制が生じたときに、呼吸を回復する目的で用いられる。呼吸興奮薬は作用部位により中枢性呼吸興奮薬と末梢性呼吸興奮薬に分類される。中枢性呼吸興奮薬は、直接呼吸中枢を興奮させ、末梢性呼吸興奮薬は、化学受容器を介して呼吸中枢を興奮させる。

●中枢性呼吸興奮薬
① ジモルホラミン

・呼吸中枢を直接刺激し、呼吸興奮を起こす。
・延髄の血管運動中枢を刺激し、血圧を上昇させる。
・呼吸促進作用は強いが、麻酔からの覚醒促進作用は弱い。
・新生児仮死、ショック、催眠薬中毒、溺水、肺炎、熱性疾患、麻酔剤使用時の呼吸障害および循環機能低下に用いられる。
・副作用として、けいれんや嘔吐を起こすことがある。

●末梢性呼吸興奮薬
① ドキサプラム

・頸動脈小体及び大動脈小体の化学受容器を刺激し、反射的に呼吸興奮を起こす。
・呼吸促進作用と覚醒促進作用を有する。
・麻酔時、中枢神経系抑制薬による中毒時における呼吸抑制並びに覚醒遅延に用いられる。

2 鎮咳・去痰薬

1)鎮咳薬

 鎮咳薬とは、持続的な咳や咳発作を抑えるために用いられる薬のことである。咳反射は、異物を除去するための防衛反応であるため必要以上に抑制すべきものではないが、持続的な咳嗽により睡眠障害や食物摂取障害などを伴うときには鎮咳薬を用いることがある。

(1)中枢性鎮咳薬
●中枢性麻薬性鎮咳薬
① コデイン ② ジヒドロコデイン

・延髄の咳中枢を抑制することで鎮咳作用を示す。
・コデインの鎮咳作用、鎮痛作用は、モルヒネの約6分の1。
・ジヒドロコデインの鎮咳作用、鎮痛作用は、モルヒネの約3分の1。
・副作用として、依存性、呼吸抑制、眠気、悪心・嘔吐、便秘を起こすことがある。
・気道分泌を抑制するため、気管支喘息発作中の患者には用いられない。
・呼吸抑制などの危険があるとして、12歳未満の小児には用いられない。

●非麻薬性鎮咳薬
① ノスカピン ② デキストロメトルファン ③ チペピジン
④ クロペラスチン ⑤ ジメモルファン ⑥ ペントキシベリン

・延髄の咳中枢を抑制することで鎮咳作用を示す。
・非麻薬性であることから依存性や耐性を示さない。
・麻薬性と比較して鎮咳作用が弱いものが多い。
・上気道炎、急性・慢性気管支炎、肺結核に用いられる。
・副作用として、眠気、頭痛、悪心・嘔吐、食欲不振、便秘(麻薬性よりは少ない)を起こすことがある。

2)去痰薬

 去痰薬(喀痰調節薬)は、気道粘液の分泌を促進したり、痰の物理的性質を変化したりすることで痰を排出しやすくする薬である。去痰薬は主に湿性の咳に用いられる。去痰薬には、粘液溶解薬、粘液修復薬・粘膜正常化薬、粘液潤滑薬がある。

(1)粘液溶解薬
① ブロムヘキシン

・気管分泌細胞からリソソーム酵素の遊離を促進し、ムチンを低分子化することで気道粘液を溶解する。
・肺表面活性物質(肺サーファクタント)の分泌促進作用、線毛運動亢進作用を有している。
・急性・慢性気管支炎、肺結核の去痰などに用いられる。

② アセチルシステイン ③ L−エチルシステイン

・粘液のムコタンパク質のジスルフィド結合(−S−S−)を開裂し、痰を低分子化して粘度を下げ、排出しやすくする。
・構造中に−SH基(チオール基)を有する。
・慢性気管支炎、肺結核の去痰などに用いられる。

 (2)粘液修復薬・粘膜正常化薬
① L−カルボシステイン

・シアル酸/フコース比を正常化することで、気道分泌物の粘性を正常な状態に近づける。
・気管支粘膜上皮の線毛細胞の修復促進作用を有する。
・慢性気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症、肺結核の去痰に用いられる。

② フドステイン

・ムチンを分泌する杯細胞の過形成を抑制し、異常粘液生成抑制作用を示す。
・シアル酸/フコース比を正常化することで、気道分泌物の粘性を正常な状態に近づける。
・気道炎症抑制作用を示す。

(3)粘液潤滑薬
① アンブロキソール

・ブロムヘキシンの活性代謝物であり、肺表面活性物質の分泌を促進することで去痰効果を示す。
・急性・慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息の去痰などに用いられる。

② グアイフェネシン

・咽頭粘膜、上部消化管粘液を刺激することで反射的に気道分泌を促進する。
・鎮咳作用も有する。

3 気管支喘息治療薬

1)気管支喘息

 気管支喘息は、気道の慢性炎症、可逆的な気道閉塞、気道過敏性を特徴とする慢性呼吸器疾患である。気管支喘息では、アレルゲンなどの刺激により可逆性の気道閉塞が生じ、その結果、咳、ぜん鳴、息切れなどを繰り返す。慢性炎症が持続すると、気道構造の変化(リモデリング)が生じ、気道閉塞の可逆性が失われる。

2)治療の概要

気管支喘息の治療では、抗炎症薬により気道炎症を抑制するとともに気管支拡張薬により気道閉塞を改善させ、呼吸機能を維持することが目標となる。

●未治療時の症状と治療ステップ

3)気管支喘息治療薬

(1)β2受容体刺激薬
●短時間作用性(SABA)
① サルブタモール ② テルブタリン ③ フェノテロール ④ プロカテロール
プロカテロール:外用ではSABA、内服ではLABAとして用いられる。

●長時間作用性(LABA)
① クレンブテロール ② ホルモテロール ③ サルメテロール ④ ツロブテロール

・選択的にβ2受容体に作用し、アデニル酸シクラーゼを活性化することでcAMP増加させ、気管支平滑筋を弛緩させる(気管支を拡張させる)。
・SABAは、速やかに効果を示すことから発作治療薬(リリーバー)として用いられる。
・LABAは、作用時間が長いことから長期管理薬(コントローラー)として用いられる。LABAをコントローラーとして用いる場合には、ICSの併用は必須である。
・β2受容体選択性が高いため、心臓への負担が少ない。
・副作用として、手指振戦、心悸亢進、頻脈、低カリウム血症を起こすことがある。

(2)吸入ステロイド(ICS)
① ベクロメタゾンプロピオン酸エステル ② フルチカゾンプロピオン酸エステル
③ ブデソニド ④ シクレソニド ⑤ モメタゾンフランカルボン酸エステル

・炎症細胞の肺・気道内への浸潤を抑制するとともにTh2細胞からのサイトカインの産生を抑制することにより抗炎症作用を示す。
・気管支喘息の中心的治療薬である。
・気管支拡張作用を有していないため、発作治療薬ではなく、長期管理薬として用いられる。
・吸入薬による局所的投与は、経口剤に比べ全身性の副作用が現れにくい。
・咽頭刺激による嗄声や免疫抑制作用による口腔・咽頭カンジダ症が発生しやすいため、使用後にうがいをする必要がある。

(3)キサンチン誘導体
① テオフィリン ② アミノフィリン ③ プロキシフィリン

・ホスホジエステラーゼを非特異的に阻害するとともにアデノシンA1受容体に拮抗し、アデニル酸シクラーゼの活性化の抑制を解除することで、気管支平滑筋のcAMPを増加させ、気管支平滑筋を弛緩させる。
・副作用として、悪心・嘔吐、頭痛、中枢性の興奮、けいれん、意識障害、肝機能障害を起こすことがある。
・CYP1A2により代謝されるため、CYP1A2誘導剤、CYP1A2阻害剤と併用すると血中濃度が変動(CYP1A2誘導剤と併用:本剤の濃度↓、CYP1A2阻害剤と併用:本剤の濃度↑)することがある。
・テオフィリンは、治療域と中毒域が近接しているため、治療薬物モニタリング(TDM)対象薬剤となっている。

(4)吸入用抗コリン薬
●短時間作用性(SAMA)
① イプラトロピウム
●長時間作用性(LAMA)
② チオトロピウム 

・気管支平滑筋のM3受容体を遮断し、ホスホリパーゼCの活性を抑制することによりイノシトール三リン酸(IP3)及びジアシルグリセロール(DG)を低下させて気管支平滑筋の収縮を抑制する。
・第四級アンモニウム化合物であり、呼吸器粘膜から吸収されにくいため、呼吸器に局所的に作用し、全身性の副作用を起こしにくい。
・気管支腺分泌抑制作用は弱い。
・抗コリン作用を有するため、副作用として口渇、便秘、眼圧上昇、排尿困難、嘔気を起こすことがある。
・閉塞隅角緑内障、前立腺肥大症の患者に投与することができない。

(5)抗体製剤
●抗IgE抗体
① オマリズマブ
・ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤であり、IgEと特異的に結合し、マスト細胞や好塩基球とIgEの結合を阻害する。また、IgE−抗IgE抗体免疫複合体は、抗原捕捉するため、マスト細胞に固着したIgEと抗原との結合を阻害することでケミカルメディエーターの遊離を抑制する。
・既存治療によるコントロールが不可能な難治性の喘息に用いられる。

(6)抗アレルギー
 気管支喘息の治療には、下記に示す抗アレルギー薬が用いられることがある。

4 慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬

1)慢性閉塞性肺疾患(COPD)

 COPDは、有害物質(主にタバコの煙)への長期にわたる吸入暴露により生じた肺の炎症性疾患であり、完全には可逆的ではない気流閉塞を示す。COPDでは、慢性の咳嗽、喀痰、労作時呼吸困難が主症状として認められる。

2)治療の概要

 COPDの治療では、非薬物療法として禁煙の推奨、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種による感染予防、身体活動性向上の指導、呼吸リハビリテーション、呼吸管理が行われる。また、薬物療法として、気管支拡張薬(抗コリン薬、β2受容体刺激薬)が用いられる他、ACO(asthma and COPD overlap)では、気管支拡張薬に加え、吸入ステロイドが用いられる。

●安定期のCOPDの重症度に応じた管理

COPDの安定期には下表の薬物が用いられることがある。

◇関連問題◇
第97回問35、第97回問250〜251、第98回問160、第99回問246〜247、第100回問158、第100回問161、第101回問159、第101回問254〜255、第103回問157、第104回問69

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